レイとアマタ
「生きてたんだね、姉さん」
「アマタの方こそ」
老王の一件がすぐその後、アマタとレイはそんな意味深な会話を繰り広げた。
何やら複雑な事情持ちのようで、横入りするのはそれこそ野暮といったことは流石に察することができた。
「ホルダーの下につくことにしたんだね、いい判断だと思う」
「ええ、ありがとう。あなたこそホルダーになれておめでとうと言っておくわ」
「うん。まあ結局最後に笑うのはぼくだと思うけどね、じゃあ」
そう言ってアマタという少年が立ち去って行くと、何人もの従者が長蛇の列を成し着いていった。
俺はアマタという少年が立ち去ったのを見て、レイに事情を聞き出した。
「なあレイ。お前、その王族だったんだな」
「うん、まあね。でも継承順位的にほとんど相手にされないレベルだけどね」
「そっか。お前の言っていった王になれとか、世界を救うっていうのはあながち夢物語じゃなかったわけだな」
「まあ、そういうことになるね。とりあえずギルド役場に行ってミッションクリアを伝えに行こうか」
「だな」
とりあえずダンジョンをクリアしたということで、俺たちはギルド役場で報酬を受領手続きを行いにいった。
「またあなた方ですか」
「はい、いやなんかすみません」
いつもの受付嬢が応対をしてくれたが、知っての通りギルドは俺たちに受け渡せる報酬を今現在用意できていない状態だ。
それに先程アマタ達が、またダンジョンを攻略したという報告が入った後だ。
ギルドの金庫番はてんてこ舞いに違いない。
俺たちはとりあえず受付嬢に、報酬受け取りの約束だけを済ませて外へ出ることにした。
「なあちょっと気になったんだけれど、アマタ達はダンジョンをクリアしたみたいだけれど、守護者は倒したのかな?」
「ああ、それ私も気になっていました」
今まで俺の陰にコッソリと隠れて、その場をやり過ごしていたルリがちょこんと現れた。
「うわ、お前いたのか」
「もう酷いです。私達仲間でしょ?」
「もう本当に君達初心者冒険者丸出しだね。普通守護者っていうのはダンジョンの最奥部で待ち構えていて、そこから動いたりはしない。
ライアンは隣国を侵攻のために、ダンジョン守護を王子に任せていたんだと思うけれど、基本的にダンジョンを攻略するっていうことは
守護者を倒すってことで間違っていないよ」
俺たちはレイの丁寧な解説を受け、へえっと相槌をうつ。
つまり守護者とダンジョンを別々に攻略した俺たちが特殊で普通は、ダンジョン攻略がイコール守護者討伐なのかと納得した。
ちなみにだがこんなことも気になった。
「なあ俺たちはたった三人でダンジョンに乗り込んだけど、あいつらは何人でダンジョンに乗り込んだんだ?」
「さあ? ただアマタは私が知る限り一度に三百人ぐらいのAランク冒険者パーティを操った経験がある程の用兵術に長けた冒険者よ。
きっと今回もゾロゾロとお引きの冒険者を連れて物量作戦でダンジョンを攻略したんだと思う」
「そうか、やっぱり俺達みたいに少人数で殴り込みに行く方が珍しいんだな」
「まあ、そうだね」
「あの……」
ルリが縮こまって申し訳なさそうに小さく声をあげた。
「ん? どうした」
「私って役に立ってますかね? お二方に比べると全然な気がして」
ルリの唐突な質問に俺は頭を悩ませた。
役に立っているよと言うのは簡単だ。だが具体的にどう役に立っているのか? これからどういう役割を彼女に与えればいいのかを
考えるとなると大変だ。
俺が口ごもっていると、レイがはっきりとこう述べた。
「うーん正直言って現時点では、あんまり役に立ってないんじゃないかな?」
おい! と俺はレイを静止しようとしたが、もう既に口に出してしまったことは戻らない。そこにはしょぼくれたルリの姿があった。
「やっぱり……そうですよね」
「いや、本当にすまない。俺が上手くルリを扱えていないからこんな不甲斐ない思いをさせてしまってるだけだ。
きっと今ここにあるお金を叩いて防具やら武器を買い揃えればきっと前線に立って戦えるよ」
俺が必死にフォローをいれるも、それをことごとくレイは否定しだした。
「Bランク冒険者とSランク冒険者じゃあ正直役割以前の問題になるかな。それに防具や武器を買い揃えてどうにかなるような実力の開きじゃない」
「おい! なんでそう頭ごなしに否定するんだ」
俺は流石にレイの態度に苛立ちを覚え、声を荒げる。
「まあまあ。私さっき言ったよね? 現時点では戦力外だって。裏を返せば戦力になる方法があるってことよ」
「え?」
ルリと俺二人はレイの話に釘付けとなった。
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