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王への試練

「え? お二人さんお知り合い?」

「まあ知り合いも何も姉さんとは兄弟だからねえ」

「へえ兄弟。え? てことは君は……」

「ああ、ぼく? 男だけれど?」

 俺はその事実を告げられ、こんなことがあるものなのかと驚愕した。

 その少女ともいうべき顔立ちの少年は、声までまるで女の子のような儚げで可愛い声をしているのに男だというのだ。

 いやはや神様のいたずらというか、そういったものが世の中あるものだと痛感した。

「どうしたの? ぼくの顔をそんなジロジロと見て。君もホルダーなんだろ? ある意味仲間みたいなもんじゃないか」

 ホルダー? 謎の単語に困惑するも、レイが「鍵を持っている者のことだよ」と小さな声で耳打ちしてくれた。

「ああ、そうだな。よろしく」

 そういって俺は、右手を差し出して握手の姿勢をとる。それに応え、アマタと呼ばれる少年も握手し返した。

 握手をした時の感触は、まだ年端もいかないということもあってか少女のそれと大差ないように感じた。

 本当にこの子は男なのだろうか? そんな疑問が浮かび上がってくる。


 そんなこんな俺達が下らない話をしていると、ギルド役場からこれまたけったいな重装備を携えた冒険者達が出てきた。

「アマタ様! そんな下々の者と気軽にお喋りになられては……」

 冒険者達は、そのアマタと呼ばれる少年の仲間というよりかは従者といった関係のようであった。

 その従者たちの進言を聞いても、彼はこう返した。

「ああ、まあ。世間体ってものがあるからね。でも彼もホルダーつまり僕と同格ってわけさ。これをお父様はどう見るだろうね?」

 彼らは何やらこみ言った話をしだし、その会話の流れについていけず俺はチンプンカンプンであった。

 すると、ギルド役場からこれまた大物然とした格好の人物が出てきた。

 その人物を見ると、俺以外のその場にいた者たちは皆ひれ伏した。

 そしてこの時ばかりは流石のレイも俺を咎めた。

「ちょっとナユタ、はやくひれ伏しなさい。でないとナユタの首が飛ぶよ」

 レイが諌めた直後であった。その大物然とした人物は柔和な表情を浮かべ言った。

「よいよい、儂は態度はともかく能力をある者を愛する。つまり彼も、そして儂の孫のアマタも同じく儂の倅みたいなものじゃ」

 それを聞いて、その場にいた者は度肝を抜かれた様子でひれ伏すのみであった。

 俺はまだ状況を呑み込めず、レイにあの人物が何者なのかを尋ねた。するとレイは呆れた様子でこう返した。

「君は本当に世間知らずだね、あの御仁はこの国の王であり、私のお祖父様なのよ」

「え? ええええ!」

 俺はそれを聞いた瞬間、驚きのあまり腰を抜かしその場にひれ伏した。


「ハハハ、まあそう怯える必要はありゃせんよ。さっきも言った通り儂は能力のある者を愛する。ナユタ、そしてアマタ。どれ頭でも撫でてやろう

こっちへ来い」

 俺は正直この場から一刻もはやく逃げたかったが、そうはさせてくれない雰囲気である。

 ビクビクと怯えながら、老王の元へ馳せ参じた。

 俺はアマタの隣へと立ち、何を言われるのかドキドキとした心境で待った。

「よし二人とも揃ったな。それじゃあ儂の言いたいことを告げよう、主ら二人で王位を賭けて鍵集めをして欲しい」

「わかりました、お祖父様」

 そう即答するアマタという少年。だが俺は何も納得できず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 見かねたアマタが小声で「なにか言ったら?」と小突いてくる。

 それでようやく気を取り戻した俺は、老王に気になったことをぶつけた。

「あのー王様。そんな簡単に王を決めちゃっても大丈夫なんでしょうか? それに僕と王様は血縁関係とかないですし……」

「なんじゃそんなことか」

 そういって老王は俺の質問を一笑にふした。

「そんなことは大した問題じゃあありゃせんよ。儂が右を向けと言えば皆右を向くし、逆も然りじゃ。血縁関係がないといったが、レイと結婚すればいいじゃろ?」

「え、ええー!」

「なんじゃ不満か? これは王への試練じゃ。事実お前を王だと認める者がおるから、少数とはいえ取り巻きがもう既におるではないか。

それがちょっと大きくなって、それこそ世界を変えられるまでの力を手にするそれだけのことじゃ。それともレイのことが気に入らぬと申すのか?」

「いえ、そんなことは……」

 俺はレイの顔を見て、やはり可愛いなと思い顔を赤らめた。

 俺がそんなオロオロと狼狽えていると、老王はポンと手を叩き言い放った。

「そうじゃなあ。賭けをせんか? 一ヶ月以内により多くの鍵を集めた者が王となる。どうじゃ? 面白いであろう?」

「それはよい考えかと思われます、お祖父様」

「ハハハ、そうじゃろ? そして敗者は勝者に一生服従する、という条件も付け加えよう。異存があるとは言わせぬ。よいな?」

 アマタは自信げに「わかりました」と肯定するが、俺はただ木偶の坊の如く立ちすくむことしかできなかった。

 そうしている間に老王とその取り巻きの者共は、立ち去っていき後には俺とレイとルリ、アマタの四人が残された。

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