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追放勇者の末路

 俺がバベルと問答を繰り返していた時であった。

 ダンジョンつまり城全体が物凄い地響きを起こしだした。

「なんだ! 何が起こってる」

「ちょっとまずっちゃったかも」

 レイが口早にそう告げる。

 ──まずった? どういうことだ。

「レイ、こりゃあどういうことなんだ? これも相手の攻撃なのか?」

「いんや、むしろ逆かな? ダンジョンの守護者を倒しちゃったから、ダンジョン自体が崩壊しかかってる。そんな感じかな」

「なんだって!」

 俺は一瞬パニックになり、バベルから目をそらしたそれが命取りであった。

 バベルから目をそらした次の瞬間、また大きな地響きと共にダンジョンの崩壊が始まった。

 その崩壊のせいで、バベルのいた場所の足場が半分すっぽりとなくなってしまっていた。

 バベルは間一髪バランスをとって、足場の上に乗っかってはいるが、四肢が切断されているため身動きがとれない。

 四肢が切断された上に、バランスの悪い足場に身を置かないといけない恐怖、それはいかほどのものかわかったものではない。

「た、助けてくれナユタ」

 そこには、Aランク冒険者で勇者の面影はなくただ死の恐怖に怯える赤子のような存在しかいなかった。

「わかった、助ける。助けるからそこを動くなよ」

「た、助けてくれるんだな! ありがとう。ありがとう」

 そう言った直後またダンジョンに地響きが走る。

 今回は今まで起きた二度の地響きよりもずっと大きい。

 それこそ俺達の誰もが身動きをとれぬ程大きな者であった。

 

 当然バベルのいた足場は、耐えきることができず彼は真っ逆さまに落ちていった。

「バベル!」

「ナユター!」

 俺は彼の最期を見て、なんともあっけないものだろうと恐怖した。

 これは彼がやってきたことの報いなのか? とも考えた。だが違うと即座に否定できる。

 彼は少なくとも、勇者としてはまっとうに任務をこなしていた。

 全てはレイの言っていた通りこの世界の仕組みが悪いのかもしれない。

 そう考えると俺は、泣き叫ばずにはいられなかった。

 だがそうしているのも束の間。

 今度は地鳴りと共に、瓦礫が落下してきた。

「ナユタ、危ない避けて!」

「うおっ」

 レイの助言がなければ、間違いなく瓦礫に潰されていただろう。

 どうやら俺たちに感傷に浸っている暇など残されてはいないようであった。

「クソがッ! レイ、ルリ着いてこれるか? ダンジョンの最奥部を目指すぞ」

 そうだ、俺は進まなくてはならない。

 今まで散っていった数多の冒険者や、この世界を変えるためにも。

「私は大丈夫よ」

「頑張ってついてきます!」

 仲間達も同じ腹のようだ。

 俺たちは、そのまま廊下を突っ走しってダンジョン最奥部である玉座を目指した。

 義賊のスキルを使い、このダンジョンのマッピングはもう既に終えてある。

 後はダンジョンが崩壊するまでに、玉座へとたどり着けるかの勝負である。

「オラアッ!」

 行く手を阻む、クリーチャーが現れたら俺は攻撃させる前に、短刀で斬りつけ衝撃波で瞬殺する。

 このダンジョンの守護者をやっていた元王子以外のクリーチャーは大したことなどなかった。

 ただ時間を浪費させてくるそれだけが厄介な相手であった。

 俺たちは特に危なげもなく、玉座へと辿り着くことができた。

 玉座には、魔界への入場券となる鍵が眠ってあった。

 鍵には真紅の色をした宝玉が埋め込まれてあり、まさに魔界への第一歩を踏み出したという気持ちであった。

「よし! 鍵を手に入れたぞ」

 その掛け声の次の瞬間には、レイの帰還魔法が発動していた。

 帰還魔法で、ギルド役場へと戻された俺たちはまずは喜びの歓声をあげた。

「やった! やったぞ。これで魔界へ進む第一歩を手にしたんだ」

 俺はこの時ばかりは、バベルやその他の仲間の犠牲があったことも忘れ大喜びではしゃぎ回った。

 特に進むなら前に進むこと。それがせめてもの弔いになると俺は考えたからだ。

 そんなことをしていると、役場の中から大歓声があがる。

「すげえ! ダンジョンをクリアした奴が現れたぞ」

 やれやれもう俺たちの噂は広まってしまったのかと思ったその時であった。

 それを明確に違うと否定する存在が、役場の中から出てきた。

 その者は、レイと同じ髪色と瞳をしており、そして測らずともわかった。

 レイよりも圧倒的に格上の魔術師であるということが。

 その者はレイよりもずっと若く、また中性的な見た目をしており男女の区別がよくつかなかった。

 そしてこちらに一瞥くれて、一言。

「姉さん?」

「アマタ……!」

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