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戻ってこいと言われても

 俺は曲がった廊下の先で、血塗れになって倒れたバベルを見つけた。

 奴もこちらに気がついているようで、力ない声で俺の名を呼んだ。

「なんで……最期に見る顔がお前の顔なんだ」

 奴は凄い数のクリーチャーに囲まれており、今にもその命の灯火が消えそうだ。

 俺は当初の目的である、バベルを助けるという目標を達成すべくクリーチャーを軒並みなぎ倒していく。

 だが、俺がクリーチャーを倒す速度よりも沸いてくるほうが早く、倒しても倒しても追いつかない。

 レイやルリも奮闘するが、それでもまだだ。

「エリスやもう一人の冒険者はどうした!」

 俺が大声で叫ぶと、彼は力無い声でこう返す。

「死んださ……なあ、ナユタ。俺のパーティに戻ってこい! 今までみたいな酷い待遇にはしない。だから帰ってきてくれ頼む!」

 奴は年甲斐もなくワンワンと泣き叫びながら、俺に懇願した。、

(今更お前のパーティに戻る……? ふざけるな!)

 少しでも奴が反省していると考えた俺が馬鹿だったとここに来て、後悔の念が沸いてきた。

「いや、もう遅い。俺はもう別のパーティのリーダーだ、お前の元にはもう戻れないよ」

「そんな……ふざけるな!」

 そんな問答をした直後であった、奴の四肢がいきなり吹っ飛んだのは。

「うわー! 俺の腕が! それに脚も! 何が起きた? 何が……」

「キャッー!

 そんな勇者にあるまじき情けない声をあげるバベル。

 その姿を見せられ、悲鳴をあげるルリ、レイは戦闘に必死でこちらの様子に気がついていないようだ。

 奴もこうして、無闇矢鱈に魔物を痛みつけてから一方的に嬲り殺しにするのが好きなサディストだった。

 その行いがとうとう自分に返ってきた、そんな瞬間であった。

 しかし、Aランク冒険者の四肢をいとも簡単に切断する魔法かスキル、どうやら相当な手練だ。

 俺としたことがまずった。どうやらこのクリーチャーの群れにもかなりの強敵が存在しているようだ。

 そうしてその強敵は、自分の成果を見せびらかしたいのか俺たちの前へと姿を表した。

「どうだい? ぼくのスプラッターショーをお楽しみいただけたかな?」

 無邪気な笑顔でほくそ笑む人間の姿を残した、魔のオーラを宿すクリーチャーがそこにはいた。

「お前バベルから離れろ!」

「え? どうして? だって君達どう見ても仲が良さそうには見えないよ? だから代わりにぼくが始末してあげた。

むしろ感謝されてもいいくらいなのに」

「いいから離れろっていってんだろうが!」

 俺は思わず目の前にいる邪悪に対し語気を荒げる。

 こいつ、Aランク冒険者のバベルをいとも容易く瞬殺しやがった。


「ナユタ! 気をつけて、そいつなかなかに厄介な敵よ」

 そう一言言い残してレイはまたクリーチャーの群れの中へと消えていった。

(Aランク冒険者をいとも簡単にぶっ倒しやがったんだ。厄介なのはわかるがどう厄介って言うんだ?)

 俺は考えてもわからなかったので試しにと一発、短剣による突きを厄介な敵とやらに放った。

 グサリと短剣は奴の心臓を貫き、確実に仕留めたかのように思えた。

 しかし全く刺したという感触がない。それにだ、よく見るともう俺の目の前から奴は消えていた。

「遅いねえ、短剣使いは素早しっこいって聞くけど案外そうでもないね」

 なんと奴は俺の背後へと回り込み、俺の耳元でそう囁いた。

 馬鹿な。俺には突きの他にも真空波による見えない一撃もあったはずだ。

 それすらも透かす程の超スピードでの移動だと!

 俺は一瞬混乱に陥るが、すぐに落ち着きを取り戻し今度は後ろに振り向きざまに回転斬りをお見舞いした。

 しかし奴はそれを飛び退いて躱し、攻撃は虚しく空を切るのみであった。

「クソッ……! こいつもしかしたらライアンよりも厄介かもしれねえ」

「ライアンよりも強い……? ああ、やっぱり君がぼくの父さんを倒した奴か」

 ということはこのクリーチャーは、ライアンの息子つまり元王子というわけか。成程、確かに面影がある。

 ライアンと違い、元王子の体躯は俺よりも小さく靭やかで剛のライアンと言うならば、柔の元王子といったところであろうか。

「おい、元王子。ちょこまか逃げるばっかじゃなくてお前も攻撃を撃ち込んでこいよ」

「ぼくに命令するな!」

 そう言って元王子は俺の脇腹めがけて蹴りをいれてきた。

 俺はそれを腕でガードし、事なきを得る。

 怒りで動揺が走ったのか、攻撃を避けるときほどのキレはないように見えた。

 それにコイツの攻撃、やはり大して重くない。

 これならば勝機が見れる!

「なんだ? 全然大したことないな」

 俺は元王子を挑発し、更に激昂させることとした。

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