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ダンジョンに向かえ

 俺たちはバベルが向かったとされるダンジョンの情報を集めるべく、ギルド役場へと向かった。

 しかし、受付嬢はというと俺たちの顔を見るなりどこかへと立ち去ろうとしてしまう。

「待ってくれ! 受けたいミッションがあるんだ」

「お金でしたらまだお支払い……はい? ミッションですか?」

 どうやら受付嬢は俺たちが、金の催促に来たのだと勘違いしていたようだ。

 まあこれだけ目をギラつかせて役場へと走って行ったのだ。そう思われてもしょうがない。

 受付嬢は若干の困惑顔を浮かべながらも、どのようなミッションを受けたいのか聞いてきた。

「ダンジョン攻略のミッションだ! 急いでくれ頼む」

「え!? ダンジョン攻略のミッションですか? しかしあれは、守護者討伐ミッションよりも難易度が高く

いくらナユタ様達と言えど攻略は難しいかと……」

「難しくてもいい! とにかく急いでくれ」

「わ、わかりました上席と少し相談して参ります」

 そう言って受付嬢は、席を外し裏口へと回っていった。

 一刻を争うという時になんて悠長なと考えていた時であった。

 こんな時だからこそできる話を、ルリに尋ねてみた。

「なあどうやってバベルはこのミッションを受諾できたんだ? そもそもどうしてこのミッションを受諾しようと?」

「えーとですね。始まりはナユタさんが守護者を討伐成功したと聞きつけてからです。Fランクのあいつが守護者を討伐

できたなら勇者でありAランク冒険者の俺が同じ難易度のミッションをクリアできないはずがない、そう癇癪を起こしたんです。

私も受付嬢の人も当然止めたんですけど、聞く耳を持たなくて結局規定人数の最低三人を集めて出発してしまったんです」


 なんて馬鹿なことを。俺は彼のあまりの浅はかさに頭を抱え嘆いた。

 しかも彼をこんな凶行に走らせた責任の一端が自分にあるとは……そう考えると責任を感じずにはいられなかった。

「なあダンジョン攻略には最低三人必要なのは知ってるよな? ルリも俺に着いてきてくれるか?」

「あの、私。そのことでナユタさんにちょっと謝りたいことがあって」

 そういった彼女の顔を見つめると、今にも泣きそうな顔を浮かべていた。

 彼女が何を話そうしているか、それは口を開く前から大体は察しがついていた。

「あの私、ナユタさんが追放される前酷いこと言ってしまって……その」

 そう言って泣き崩れる彼女を俺は、優しく抱きとめた。

「気にするな、俺が逆の立場だったら俺をたぶん同じことをしていた」

 そう言うと彼女は余計に大粒の涙を流した。

 女の子を泣かせるのは正直言って胸が苦しい。それにもう十分に彼女が俺のことを考えていてくれたことは理解できた。

 

 そんなこんなしていると、受付嬢が戻ってきて言った。

「あのーお客様ギルド役場ではなるべくお静かに」

「あ、すみません」

 どうやら一部始終を見ていない受付嬢にはなにやら勘違いを受けたみたいだ。

 ゴホンと一度咳払いをし、事務的ではあったが手短に用件を伝えてくれた。

「上席に確認したところ大丈夫とのご指示を頂きました。ナユタ様御一行のご健闘をお祈りしています」

 そう言って受付嬢は一礼し、俺たちにミッションに関する資料を提示してくれた。

 資料によると、守護者が統括しているダンジョンは元々ライアンが治めていた国の城であることがわかった。

 城攻めは考え得るダンジョンの中で、最も難易度が高いものの一つであった。

 特に一度落城したとはいえ、ライアンの城は堅牢なことで有名だ。

 クリーチャーが昼夜を問わず警備をしているだろうし、本来攻略するならば何かしらの作戦を立てたいところだ。

 しかし、今はバベルがたった三人で敵地に向かったという状況。

 考えるよりも、まず体を動かべきである。

 もし万が一考えているうちにバベルが命を落としたら元も子もない。

「よし! とにかく善は急げだ。出発しよう」

「何か作戦は……?」

 慎重派のルリらしい発言だ、だが期待に沿えるような回答はできない。

「ない。いや、今はない。移動している間に考えよう!」

「わ、わかりました。とにかく急げってことですねっ」

 次に俺は、レイに質問をした。

「なあこのダンジョン入り口付近まで三人を一気に送り届けることって可能か?」

「造作もないことね。Bランク程度の冒険者なら誰だってできることだと思うわ。でも急いだほうがいい、移動にはちょっと時間がかかると思うから」

「わかった! なるべく急いでくれ」

 俺がレイに指示を送ると、役場の外に出て魔法を唱えた。

「賢者レイが命ずる、我々を目的の場所まで送り届けよ『テレポート!』」

 次の瞬間には、俺たちの体は光に包まれて亜空間へと突入した。

 その亜空間の中で、ルリがこんな不思議なことを尋ねてきた。

「ねえナユタさん。どうしてバベルさんを助けるためにこうまでして頑張っているんです?」

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