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祝賀会

 俺達はギルド役場へと戻ると、守護者を倒したという証拠となるブツを受付嬢へと見せた。

 すると受付嬢も最初は半信半疑ながらも、協議の結果本物であることがどうやら認められたようであった。

 それを聞きつけた周りの、ゴシップ好きの冒険者達が寄って来た。

「おいおい、守護者をたった二人で倒した奴らがいるらしいぜ」

「マジかよ! すげーな」

 俺たちは瞬く間に、その日のうちに時の人となった。

 当然守護者を倒したということで、それ相応の報酬を受け取れるそう思っていた。

 だが受付嬢は、ちょっと尻込みした感じでこう告げた。

「あのー、大変申し訳ないのですがまさか最高難易度ミッションである、守護者討伐が達成されるとは思っても

いませんでしたので、すぐすぐには報酬の方をお渡しできません。申し訳ございません」

 受付嬢は、深々と申し訳なさそうに謝罪をする。

「わかりましたよ、近日中に報酬を用意してくれたらそれでいい。それよりも今現在支払えるだけの金を用意してくれ」

「承知いたしました」

 そういって受付嬢が裏から持ってきたのは、目を疑うほどの金貨の山であった。

「とりあえずは本日のところは、こんなもので……」

「わ、わかった。また後日金が用意できたら取りに来る」

 そういって俺は動揺を必死に抑え、ギルド役場を後にした。


 ギルド役場を一歩外に出た俺達は、思わずこみ上げてくる喜びを包み隠さず発散した。

「やったーーーー!」

 なんなのだろう、先程までの素寒貧状態からいきなりの大富豪とまでは行かずとも小金持ちに成り上がったサクセスストーリーは。

 とりあえず今日は祝賀会だ。さっそく俺たちは、街の中で一番繁盛している酒場へと趣き祝勝会を開いた。

「流石だね、ナユタ」

「だろ? でもあれ程まで上手くいくとは正直言って思わなかったよ」

 俺たちは、守護者を討伐した時の作戦について懐古してみた。

 奴らの本陣がある場所を特定した後は、次にどうやってそこに近づけばいいのか? それが近々の課題となっていた。

 そこで俺は義賊のスキルである『偽装スキル』を使って、クリーチャーに化けて伝令のフリをして本陣を強襲するという作戦に出たのである。

 運もかなり絡んだとはいえ、大勝利とうまい料理に俺たちはすっかりとご満悦になっていた。

 だがある程度腹が膨れてくると、いきなりレイは神妙な面持ちになってこんなことを言い出した。

「ねえ、今回のミッションクリアで得た報酬なんだけれどナユタはどう使うつもり?」

「どうって……うーん」

 俺は長らく大金を持って、生活したことなどなかった。

 それが今や一生暮らせるぐらいの金は得ることができたのである、普通ならばここで引退するという決断もありえる。

 しかし、それは「世界を救う」というレイの目的とはかなり反するものになる。

 だが、だからといって得た金を気前よく貧しい人々にくばるといった義賊的な行いをするには、まだ時期尚早といやつだ。

「すまない、まだ考えていないや」

「そっか……そうだよね」

「とりあえずは装備を買おうかなと思っている。正直今回の短剣はギルドからの支給品で、かなり安っぽいしな」

「確かに、まずはそこらへんの初期投資に回すべきか」

 レイはかなり残念そうな表情を浮かべるが、仕方ない。何をするにしてもまずは先立つものが必要というのが、この世界の常だ。

「それにしてもユニークスキルって叫んだだけでよくわかったな」

「言ったでしょ? 私はナユタの最高のパートナーだって。奴の攻撃パターンから見ても何をすればいいのかはピーンと来たよ」


 話は再び守護者討伐時の話へと戻っていった。

 あのタイミングで苦肉の策ではあるが、うまく俺の意図を汲み取ってくれたのは本当に最高のパートナーになり得る存在なのかもしれないと感じた。

 そんな陽気な話題で盛り上がる酒場に、懐かしい顔がやって来た。

 そう、なんと俺を追放した元パーティメンバーのルリだ。

 彼女はゼェゼェと息を切らして俺の元へと駆け寄ってきた。

「あの、ナユタさん。守護者討伐おめでとうございます」

「あ、ああ。どうも」

 なんだ俺が守護者討伐をしたことを知って、今更戻ってきて欲しいとかそういう話の流れか?と思った。

「あの手前勝手な話で悪いんですが、バベルさんを助けてほしいんです」

 ほーら来たよ。と俺は一気に警戒心を強める。が、彼女のただならぬ様子を察して一応話だけは聞いてみることとした。

「助けるって? どうして?」

「それは……ナユタさんが二人で守護者を討伐したと聞いて、開放された『魔界への鍵が封印されしダンジョン』に三人で挑んだんです!」

「なんだって!」

 俺はそのあまりに無謀な挑戦を聞いて驚愕した。

 『魔界への鍵が封印されしダンジョン』とは、本来守護者が統括しているテリトリーのようなものだが、今回俺たちが守護者を葬ったことで

封印が解けて入場できるようになったのだ。

 そこまではいい、だがそのダンジョンも守護者討伐と同じかそれ以上の難易度を秘めた危険なミッションだ。

 それをバベルがたった三人で挑むとは、正気の沙汰ではない。

「私は反対したんです。けど、そうしたら私は追放だって言われて新しいAランク冒険者を引き連れてダンジョンに挑んでいったんです」

「馬鹿な! 自殺行為だ」

 俺たちが成しとけた守護者討伐だって、かなり運任せによるところが大きかった。

 それをAランク冒険者二人、Bランク冒険者一人で挑もうなんて無謀にも程がある。

 だが、今からそのダンジョンに迎えばまだ間に合うかもしれない。レイに視線を送る。

 彼女はコクリと頷いた。

「よし、ミッションを受けに行こう。ルリ、ダンジョンへと案内してくれないか?」

「わかりました」

 彼女は泣きはらした顔をしかめながら俺の提案を受諾した。

 これにて祝賀会は打ち切りとなり、またまた冒険へと旅立つこととなってしまった。



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