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斬撃

 俺たちのとった作戦は、とてもシンプルなものだった。

 そう、伝令のフリをして敵の大将に近づき、寝首をかくというものだ。

 この作戦は面白いようにうまく嵌った。今、大将を目前としている。

 ──ここまでは計算通りであったが、ここからが面倒だ。敵の大将は、守護者としての本性を顕にし、攻勢を仕掛けてきた。

 守護者ライアンは、ライオンを模した人間とのキメラのような醜いクリーチャーへと成り果てた。

 しかしその対価として、身体能力は爆発的に向上し、鋭く尖った爪で俺喉元を掻っ切ろうと、驚異的なスピードで襲いかかってくる。

 ──ッ。

 俺は、ただ回避に専念するためだけに全神経を集中させ、防具をつけていない分軽い身のこなしで全ての攻撃を避けた。

 以前バベルと決闘を行った時とは比べ物にならない程の、苦戦を俺は強いられた。

 普通これだけ激しく動き回れば、疲労からスピードが落ちてきそうなものだが、クリーチャーと化した守護者ライアンにその常識は通用しない。

 奴は無尽蔵のスタミナを有しており、俺たち人間の当たり前等関係ない。

 しかし、俺はある弱点に気がついた。奴の激しい攻撃だが物凄く単純なワンパターンでのゴリ押しなのだ。

 右左と交互に何度か鋭い爪で引っ掻いてきた後に、必ずと言っていいほど大振りの攻撃を放ってくる。

 そこがチャンスだ! 俺は次に大振りの攻撃が来そうな時を見計らっていた。

 (クソッ……! 俺がレイの未来予知を使えたらもっと楽だったろうに)

 俺は思案を巡らせるが結局いい案は浮かばず、彼女に直接的な助言を求めることとした。

「レイ、ユニークスキルだ!」

 それを聞いて彼女はコクリと頷いていたが、俺の言葉の意図が伝わっているとい保証はない。

 なにより奴に俺たちの作戦の意図が漏れてしまっているかもしれない。危ない橋だが渡るしかない。

 右に二回、左に二回引っ掻きの攻撃が来た。おそらく次だ、俺は奴が大振りの攻撃をしてくることに賭け反撃の体勢をとった。

 これは博打だ、もしその当てが外れてしまえば俺は奴の引っ掻き攻撃を受けタダではすまないであろう。


「今よ!」

 レイのその言葉と同時に、ライアンは大きく腕を振り上げ大振りの一撃を放ってきた!

(しめた!)

 きちんと俺が考えていた意図の通りに伝わっていた!

 そのおかげで俺は、タイミングよく身を翻すことができた。

 大振りの攻撃の後だ、当然大きな隙が生まれるその刹那を突いて俺は短剣を奴の脇腹に向かって刺しこんだ。

 タイミング的にはこれでバッチリのはずであったが、おかしい。

 何も肉を抉ったような感触が全くもってない。

 奴は俺の反撃を天性の直感で察してか、思い切り後ろへと仰け反っていたのである。

「クソッ!」

 せっかく作った攻撃のチャンスであったのに、俺は思わず本音を漏らす。

 俺の攻撃は、奴へと全く届いていないそう思いこんでいたが実際は違った。

「グガアアアッ!」

 けたたましい叫び声を奴はあげた。

 どういことだ、俺の攻撃は完全にカスってもいなかったはず。

 直後、バベルとの決闘のときのことを思い出す。

 そうか俺の斬撃は、直接あたっていなくても衝撃波として相手にダメージを負わせることができるのか。

 奴は俺の真空波による斬撃により一気に体勢を崩す。

 それを口火に俺の反撃は始まった。

 当たらなくてもいい、とにかく素早く相手を刺す。

 それを繰り返すだけで、相手は徐々にだがダメージを蓄積させていっているのがわかった。

「ク、クソォッ……! 私は、私の復讐はここで終わってなるものか!」

 そう叫んだ直後、奴の体に変化が起きていることに気がついた。

 俺から受けた傷口が塞がり始めていたのである。

 マズイ。奴もクリーチャーとして徐々に体が順応しつつあるようだ。

 こうなれば、やることはただ一つ。

 俺は奴の巨大な体躯から逆算して、ちょうど首に衝撃波が当たるように斬撃を放った!

 奴もそれに反応するが如く首を腕で守ったが、それも無駄に終わる。

 腕ごと首が切断され、ボトリと胴と首とが離れる音がした。

「やった! 勝った」

 そう思った矢先であった。

 なんと胴の方から、首に向かって触手のようなものが生えだし首を取り戻そうとしてきたのである。

「レイ! 俺の攻撃じゃ広範囲攻撃は無理だ。胴を焼き払ってくれ!」

「わかってる。『クロスフレイム!』」

 そう唱えると、胴体は焼け焦げ完全に消滅した。

 首の方に目をやると、なんとも恨めしそうな顔を浮かべて奴はくたばっていた。

「これで勝ったんだよな……?」

「当たり前じゃない、これで完全勝利! ギルドに賞金首を持ち帰って祝賀会よ!」

 その時であった、陣営の異常を察して偵察隊のクリーチャーがやってきたのは。

 俺たちはもうここに残る意味もない、帰還魔法を唱えて間一髪のところでギルド役場へと戻ることに成功した。

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