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守護者ライアン

「ライアン様、隣国テルマの降伏は時間の問題かと」

「うむ、よくやってくれた」

 そう言って守護者ライアンは、クリーチャーと化した部下の元騎士団長に労いの言葉を送る。

(私に力があれば、本当はこんな形で生きながらえたくはなかったのだが)

 ライアンは自身の心情を独白する。

 彼の国は魔界に繋がる扉と一番近く、必然的に代々魔王軍と戦いを繰り広げてきた。

 それは彼の代になるまで続いていたのだが、その均衡もついには崩れることとなる。

 魔王軍側に新しい魔王が即位し、圧倒的に戦力が増強されたのである。

 今までは国が抱える軍隊のみで対処可能な魔物しか、送り込まれてこなかったのが

その数や質ともに顕著に増したのである。

 生き残るためには、周辺国に媚を売ってでも兵力を分けてもらうしかなかった。

 そのために人質として、自分の妻や娘を他国へと送った。

 それなのにだ。ある日突然ドスンと均衡が崩れる音がした。

 近隣国は突如として援助を途絶えさせた。

 理由は自分達の国も苦しいからという手前勝手なものからだ。

 その時私は、決意したのだ。

 魔王の軍門に下り、この不義理な国達を滅ぼそうと。

 そのためには自分達がクリーチャーと呼ばれる魔物に身をやつそうとも構わなかった。

 そう。これは個人的な復讐による戦争だ……!

「伝令です!」

「入れ」

(降伏を知らせる伝令か……? それにしてはやけに早いな。まあ関係ないどのみち降伏は認めず私の家族以外は全員虐殺する。そう心に決めてある)


「テルマが降伏を宣言しました。そしてこれがその書簡です」

「破け。降伏は認めない」

「いえ、しかし……」

(おかしい。クリーチャーなら上位の者からの命令は絶対に服従するはずなのに。いや待てよ!)

「おい、誰かその伝令の首をはねろ!」

「ハッ」

 そう命令した次の瞬間であった。

 伝令を装った暗殺者達が、その姿を顕にしたのは。

 次の瞬間、周りにいた護衛兵達の首と胴はバラバラとなった。

 残ったのは、元騎士団長の男と私だけであった。

「チッ! もう少しだったのに」

「でもうまくいったね。これで邪魔する五百体の雑魚の相手をしなく済む」

(──しまった 伝令に化けてここまで近寄られた。しかもこの偽装スキルに、戦闘能力。こいつら只者ではない)

「ライアン様、ここは私が」

 そう言って騎士団長だった男が前に出る。

「ああ、頼りにしている」

「まずはそのクリーチャーを倒してからか。まあ、本命に辿り着くにはそれぐらい歯ごたえがないとな」

 そう言って暗殺者の男の方は、短剣を妖しげに光らせながら呟く。

 それを騎士道精神からか、私のクリーチャーと化した騎士団長はよしとはしなかった。

「そこの無礼者! 名を名乗れ、私が相手をする。我が主ライアン様には手出しはさせない」

「俺の名前か? 俺の名前はナユタだ。世界を救う義賊だ、悪いがあんたの主の命は盗ませてもらうよ」

「ほざけ!」


 元騎士団長がそういった次の瞬間であった。

 既に勝負は決していた。

 国が誇るAランク超えとも噂される剣技の持ち主が、クリーチャーと化して更にパワーアップした。

 それにも関わらず元騎士団長は、一瞬にして敗北した。

「馬鹿な!」

 この男は、クリーチャーとなる以前からよく尽くしてくれた。

 それに国の英雄として、幾度となくピンチを救ってきた実績がある。

 にも関わらずだ。この義賊を名乗る男の前では児戯のように扱われた。

――このままでは終われない。このまま私の復讐を頓挫させてたまるか。

 私は腹を決めた。

「この姿にはなりたくなかったが……」

 私は瞬く間に、自分の体を巨大な一頭のライオンもどきへと変貌させた。

「見ろ! これが守護者ライアンの真の姿だ。この姿になるともう元には戻れないが、それでもいい。お前達二人、決して生きては返さない」

「レイ、ちょっと離れてて、今から激しい戦闘になると思う」

「わかった」

 いや。激しい戦闘になどならない、一瞬にしておしまいだ。お前達の敗北によってな。

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