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遥かなる統一を夢見て ~少年少女は平和への夢を見る~  作者: 佐藤哲太
騎士たちその想いを胸に戦う
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騎士たちはその想いを胸に戦う

 その後王国軍は善戦を繰り返し、少しずつ反乱軍を押し返し始め、アーファたちが到着してから6日目。王国軍と反乱軍の衝突から換算すると10日目にはついに遠めに商業都市の姿が見える位置にまで彼らは戦線を押し上げることに成功した。

 それと同時に、ついに待望の援軍が王国軍にやってきたのである。

 今日を迎えるまでの王国軍の犠牲はおおよそ6000名、かなりの痛手を負ったがおそらく反乱軍も同じかそれ以上の兵を失っていると思われた。

「お待たせ致しました。約定通り、女王陛下及び法皇様の思いに仇なす反乱軍討伐のため、このエドガー・ナターシャ、皇国軍5000を連れ参上致しました」

 王国軍本陣に参陣し恭しくアーファとセレマウの前に跪く桃色の髪の騎士を、緊張した面持ちで王国騎士たちは見つめていた。

 アーファとともに王国軍への援軍第一陣が到着して以来となる全体軍議の場に顔を連ねるのは、前回同様リトゥルム王国女王アーファ・リトゥルム、セルナス皇国の法皇セルナス・ホーヴェルレッセン89世とその側付きの二人、そして王国七騎士団の各騎士団代表たち。そして今回はそれに加えて、援軍でやってきた皇国軍最高軍事顧問たるエドガー・ナターシャに、彼をここまで案内してきた王国最強の騎士ウォービル・アリオーシュだ。

 騎士団長不在のため副団長の立場ながら参加することになったルーとライダーは彼らの放つ雰囲気に飲まれ、緊張に冷や汗が止まらない。

――やっぱすげぇな、ゼロは……。

 この場においてもいつも通りの飄々とした様子のゼロにルーは内心で称賛を送る。ゼロからすればウォービルとゼリレアは家族なのだからルーやライダーとは受け取る感覚が違うのだが、ブラウリッター団長としてこれまでも騎士団長たちと軍議を行ってきた経験の差をルーとライダーは感じていた。

「加えまして、シュヴァルツリッター団長ウォービル・アリオーシュ以下シュヴァルツリッター10騎も本日より陣に参加致します」

「うむ。エドガー殿、ウォービルよ、よく来てくれた。これでいよいよ総攻撃の体制が整った。早速だがグロス、現在の状況確認と今後の戦略を伝えてくれ」

 本陣の上座に当たる位置に座るアーファは一言エドガーとウォービルを労うと、すぐにこれからの話を始めるようグロスに指示を出す。その堂々とした振る舞いに、セレマウは法皇モードの表情を取り繕いつつ、エドガーの到着で緩みそうになった気持ちを引き締めなおす。

「はっ。本日で開戦10日目を迎えますが、当初シュヴァインが率いた25000の兵に加え、5日目より加わった援軍を足して総勢27000が参陣致しましたが、ここまでの我らの犠牲はおよそ6000、継続戦闘不可の負傷者は5000ほどです」

「6000……」

 アーファの愛する王国の者が、それだけの数死んだ事実に彼女は悔し気な表情を浮かべる。自分自身に力がないことが、これほどまでに悔しいと思ったのは、彼女にとって初めてだった。

 王国史に残る戦いの記録で、これほどまでに死者を出した戦いはない。それほどまでに、昼夜間を問わず続く敵の戦い方は脅威なのだった。

 戦線を押し上げたことに安堵していた者たちも、その数を聞き心を痛めているようだった。

「すなわち王国騎士の残存戦力は16000ほど。これに皇国軍5000が加われば、総数は再び2万を超え、反乱軍の初期戦力を上回ります。対しておそらく敵兵の残数は多く見積もっても13000でしょう。我々が到着して以降死者を極力燃やし尽くすことで、夜間の死霊、死人の軍団は着実にその数を減らしていると思われますので、夜間の襲撃もその苛烈さは減ってきておりますし、今の状態を維持できれば、いずれは商業都市へ到達できると思われます」

 グロスの言葉を黙って聞く既に反乱軍と交戦している者たちをよそに、ウォービルとエドガーは困惑の表情を見せた。

「死者を燃やす? 死人の軍団? この戦場は、何が起きてるんだ?」

「王国騎士がそれほどまでの犠牲を出しながら、わずか7000しか敵を減らせていないのですか?」

 それぞれが思ったことを口にする二人の最強たち。今きたばかりの彼らの反応は正常なものだろう。

二人の疑問にグロスがしばし説明を行うと、二人の表情が苦しげなものへと変わっていく。

「同胞に、そんな、そんな最期を与えなきゃならんのですか……!」

「……どなたか、日中に敵兵と言葉を交わした者はおりますか?」

 ウォービルは死霊魔法の話を聞き激怒していたが、エドガーが気になった点はそこではなかった。そして彼の質問に答える者がいないことで、彼は何か思い当たる節があったようだった。

「予想を遥かに超える強さに、練度の高い連携……これはおそらくウェイレア王朝の傀儡魔法ではないかと思います」

「え、そんな……!」

 エドガーの言葉に反応を見せたのはセレマウの隣に座るユフィだけだった。全員がその言葉の意味を理解できず、首をかしげる。

「かつては、カナン大陸と東の大陸も交易が行われていたことはご存知かと思いますが、その時代の遺物として、いくつかの魔導書が我が家には保存されております。そこで読んだ知識ですが、かの国には禁忌魔法がいくつかあるのです。今グロス殿が仰せられた死霊魔法もそうですが、おそらく日中の軍勢には、傀儡魔法と呼ばれる、対象の身体を術者の意のままとする魔法が使われていると思われます。傀儡となった者はその者の意思を奪われ、人体の限界まで力を発揮させられる禁術です。本来であれば自分が怪我をしないために制御されるはずのリミッターが働かず、実力以上の力を引き出されるのです」

 エドガーの言葉に皆が眉を顰め、ユフィが表情を曇らせる。

「そんなことをしてしまったら……」

 おそらく魔法の対象がどうなるかの先を想像したセレマウがぽつりと言葉を漏らす。その想像は、難くない。

「ええ。傀儡とされた者は限界を超えた反動で、死にます」

「なんということを……!」

「一度戦った小隊が翌日には姿を見せないのは、撤退後死んでいるからでしょう。そして死後も彼らは死霊となり再び襲い掛かる。この戦術によりウェイレア王朝は一時東の大陸を制服するほどの勢いを見せたとのことですが、その非人道的な戦術を咎めた者たちにより今では禁忌扱いとなったとか。何故このような魔法が今この戦場で使われているのかはわかりませんが、敵の首謀者は相当な魔力を持つ魔法使いであり、極悪非道な人格の持ち主と見受けられますね」

 誰もが言葉を無くす中、ルーの心中は複雑だった。確かにクウェイラートはプライドの高い面もあったが、貴族としての責務は忘れていない、そう思っていたのだ。

「先ほどグロス殿は敵兵は残り13000ほどだろう、と仰られましたが、もし傀儡魔法が使われていたとすれば、敵の生存戦力はすでにさほど多くないかと」

 軍議の雰囲気が落ち込んでしまった状況を立て直そうと、エドガーが状況を分析し直す。その言葉に、少しだけ皆の表情に明るさが戻った。

「ならば、一気にカタをつけるべきだな」

「そうですね、本日我らは総攻撃を仕掛けます。北部よりエドガー殿率いる皇国軍、南部よりウォービル率いるシュヴァルツリッター、ゼリレア率いるヴァイスリッターを筆頭に王国軍6000、そして中央より私が指揮する1万名で敵陣を切り裂き、占領された商業都市まで一気に軍勢を進めましょう」

 グロスの言葉に皆が力強く頷く。これ以上、この無益な戦いを続けるわけにはいかない。

 グロスの言葉にアーファが大きく頷いた。

「本日の夜が来る前に、決着をつけよ!!」

 アーファの命令に応えた最高戦力たちは、足早に準備へと向かっていった。



次話に続きます。

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