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遥かなる統一を夢見て ~少年少女は平和への夢を見る~  作者: 佐藤哲太
騎士たちは絶望と踊る
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騎士たちは絶望と踊る

「日が、暮れたか……」

 王国軍本陣に立てられたテントの外にでて、アーファがぽつりとつぶやいた。外は明るさを失い、前線に時折発生する火柱が赤々と輝いていた。

「嫌な……臭いがするね」

 本陣まで流れてくる人が焼ける臭いに慣れてしまった自分に苦笑いを浮かべつつ、それだけではない、何か得体の知れない気配が近づいてくるのをセレマウは感じていた。彼女たちを護衛するリラリッターたちは少し離れたところで警備をしており、今は近くにはアーファ以外いないため法皇モードではないようだ。

「何だろう……この気配……」

 ざわついた感覚が、セレマウの胸から消えない。

 悪意の塊が迫るような、逃げ出したくなるような衝動が胸を襲う。

 だが彼女は逃げるわけにはいかない。前線では、友たちが戦っている。隣にはこの戦いの全てを見守る新たな友がいる。

――お願い、みんな……死なないで……。

 彼女の願いは、果たして届くのだろうか。日が落ちた空は雲で満たされ、星空は全て隠されていた。




「ヴァイスリッター、行きましょう」

 前線での交戦する音が小さくなっていくのに気づいたゼリレアは、落ち着いた声音で30名ほどの団体たちへ指示を出した。白色の軍服に身を包んだ女性騎士の軍団は優雅に行軍を開始する。おそらく前線では四人一組の小隊たちが引き上げ、死人、死霊の軍勢が進行を開始したのだろう。

「シュヴァインが現れた場合、我らは迅速に彼を抑えに行きます。彼が現れるまでは、グリューンリッターと共同し、3人一組で炎の壁形成に助力なさい」

 ゼリレアの指示に応えるように、鞘に収まった剣を大地に打ち付けるヴァイスリッター。一糸乱れぬその動きは、彼女たちの組織としての強さを物語る。

 その様を真横で見ていたグロスも感嘆の声をもらしてその光景を見守っていた。

「夜でも、白なら同士討ちしにくいでしょ?」

 これから人ならざる者と戦うというのに、冗談めいた口調でグロスへ振り返ったゼリレアの普段通りの穏やかな表情に、グロスは苦笑いを浮かべるのだった。

 一糸乱れぬ隊列で、ヴァイスリッターが前線へ近づいていく。

 既に作戦が始まったのだろう、ゲルプリッターやロートリッターたちが後列に撤退を完了すると、グリューンリッターたちが隊列を組み炎の壁を生み出し始めていた。

 近づけば火傷は免れられないだろう熱量に、あれならば死人たちも通過できないだろうとゼリレアは安心していた。

 時折生じる炎の壁の隙間から向こう側に、ふらふらとこちらへ進み続ける王国騎士と東部の騎士たちが入り混じった軍団が目に入り、ヴァイスリッターたちは複雑な心境を抱いていた。

話は理解していても、その目が映す光景の非現実感に心が追い付かない。

「むごい……」

「そんな……王国騎士が……」

 進軍してくる死霊たちは、者によっては片腕を失い、明らかな裂傷を負っていたり、目を背けたくなる光景が広がる。日没までの間に攻撃の余波を食らった大地に足を取られ転倒してもなお、倒れた者を踏みつけながら彼らは進軍を続ける。

 その行動に意思は感じられず、やはり既に彼らは死んでいるのだと思わせるには十分だった。

 だが何かしらの思考回路か、消滅を避けたい本能があるのか、炎の壁を前にして死霊たちはその進軍を止めていた。

 たった数メートルを挟んで死霊たちと対峙するグリューンリッターたちの心が保つように祈りながら、ヴァイスリッターたちが一定間隔に散開し、死霊たちに襲われそうな場所を探していく。

――……これは、思ったよりもしんどい戦いね……。

 余裕ぶった表情を浮かべ続けるも、内心不安を覚えていくゼリレア。彼女は心の中で、早くウォービルが到着することを願い続けた。



次話に続きます。

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