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遥かなる統一を夢見て ~少年少女は平和への夢を見る~  作者: 佐藤哲太
少年と少女は想いを語る
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少年と少女は想いを語る

「アーデン、生きているか?」

 広場に戻ったアーファたちは、演台に寄りかかるように座り込んでいるアーデンへ近づいた。彼がいなければ、アーファたちはこの場には来られなかった。アーファの言葉にアーデンは弱々しい笑みを向ける。

「……まだ生きております。陛下たちも、ご無事で何より」

 傷つき、肩を借りる状態となっているゼロやルー、ナナキに目をやりつつも、アーデンは誰も死んでいないことに安堵する。ゼロとユフィの圧倒的な戦闘力は目の当たりにしたが、シックス・ナターシャは皇国最上位に当たる強さを持つと聞いていた彼は、ずっと心配してくれていたようだ。

 戻ってきた広場では、救護兵が多数かけつけ、広場に倒れた皇国騎士や魔導団の者達が救護されていっている。

「お気を確かに……!」

 傷口からの出血はルーの処置により止まっていたが、多くの血を失ったことでアーデンの顔色は悪い。ユフィはゼロに左肩を貸したまま、右手の手のひらをアーデンへ向け、身体強化魔法をアーデンにかけて体力の消耗を減少させる。

 一瞬ぼぉっとアーデンの身体が輝くと、血のめぐりがよくなったかアーデンの血色が少しずつ良くなっていくようだった。

「クラックス子爵といったか。貴殿の行動は皇国への裏切りであったが、今は貴殿のおかげで王国との終戦の道筋が見え始めた。大儀である」

 一時は冷静さを失い普段の姿に戻っていたセレマウだったが、コライテッド公爵を止めるという目的を見据えた彼女は先ほどからずっと法皇モードを継続させていた。

 純白の法衣をまとう美少女の言葉を受け、アーデンは弱々しく微笑んだ。

「もったいなきお言葉……どうか、世界に平和をもたらしください」

 アーデンへ力強く頷いたセレマウは、ユフィの方へ向き直る。

「ユフィ、広場へ声を届けたい」

 セレマウの意図を察したユフィは即座に拡声魔法を詠唱し、セレマウへ頷いて見せる。

 目を閉じ、一度深呼吸をする。そして開かれたセレマウの目には、他者を従わせるに相応しい強い意思が宿っていた。

「皇国の民よ! まずは此度の騒動を詫びよう!」

 演台の上には登っていないため、セレマウの姿をとらえることが出来た者は多くなかっただろうが、彼女の声は先ほどの法話の際に既に知られている。

 突然伝わってきた法皇の声に、救護活動をする者や意識を取り戻した兵たち、広場から一度は逃げた人々も辺りを見渡しだしていた。

 法話の時よりも、多くの場所へ伝わるようにユフィは魔法の効果を拡大させたため、建物の中にいた人々も外の様子を見に出てき始める。

「此度の騒動の発端は、コライテッド公爵によるものである! 公爵の計略により現在我が国はリトゥルム王国との大規模戦争を起こそうとしている! 先ほども伝えたが、私はリトゥルム王国と手を取り合うつもりだった! だが公爵の謀りは私の思いとは異なる、これは……これは謀反である!!」

 セレマウは怒っていた。自分だけが傷ついて済むのであればそれでいいと思っていた彼女であるが、コライテッド公爵の計画では傷つくのはセレマウだけで済む話ではない。現に今この場でも、多くの人々が傷つく結果となってしまった。

 コライテッド公爵の謀反、信じられない法皇の言葉に戸惑いを見せる皇国軍の者たち。

「私はこの争いを止める! 皇国の民よ! カナン神を信じる同胞よ! どうか私の思いについてきてほしい! 長く戦ってきた我らであるが、皇国の民も王国の民も、同じ人間だ! 傷つけば赤い血が流れ、誰かが悲しみ、憎しみが生まれる! 私はその連鎖を止めたい!」

 ざわめきが広場を中心に広がっていく。

 法皇とはセルナス皇国における神の代理人だ。敬虔な信徒は法皇の言葉は神の声と心得ている。

だが、リトゥルム王国との戦いの中で愛する者を失った者もいる。手を取り合えと言われても、そう簡単に割り切ることはできない者も多くいるのも事実だった。

「これから私はコライテッド公爵とナターシャ公爵を止めにいく! この戦いを止めた後には、どうかそなたたちにも憎しみを抑え、未来の平和を目指してほしい!」

 思いを伝えるセレマウへ、肩を借りる形となっているナナキも、ゼロに肩を貸すユフィも力強い視線を送る。セレマウの願いこそ皇国の進むべき道であるべきなのだ。

 親心のようなものを抱きつつ、セレマウの従者たちは敬愛する法皇の姿を見守っていた。

「偉大なるカナン神の名において、私は平和を誓おう!!」

 セレマウの言葉が一区切りされると、彼女の姿を視界にとらえていた者たちから少しずつ拍手が起こり始めた。その中にはゼロとユフィとの戦いにより傷ついた皇国軍の者もいた。

 そして拍手は広場中へ伝播し、歓声が沸き起こる。

「見事なものだな……」

 セレマウが見せた法皇としてのカリスマ性にアーファが感嘆の声を漏らす。声を大にして憎しみを捨てろというのは簡単だが、果たしてリトゥルム王国の民たちはアーファの思いに応えてくれるだろうか。

 たった数分の言葉で、セレマウは3年間もの間コライテッド公爵に握られていた皇国の実権を握り返したのだ。脈々と続く法皇という存在への信頼もあるだろうが、セレマウの魂の叫びが、人々へ届いたのだと大歓声が感じさせてくる。

「行こう」

 セレマウの言葉に頷き、セルナス皇国とリトゥルム王国の命運を握る6人の少年少女たちは、戦争を止めるために行動を開始した。



次話に続きます。

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