六王会す
荘厳な白い石造りの建物。
高い天井からは、幾重にも輪を連ねて光る装飾魔光球が吊るされ、空間を照らす。
ステンドグラスの嵌め込まれた窓から外を見ることは出来ないが、大勢の兵士が警護にあたっている。その兵士たちが持っている松明が爆ぜる音が、時折響いた。
部屋の中央には、飴色に磨かれた大きな円卓。
静まり返った円卓を囲むのは錚々たる顔ぶれだった。
長く戦火に苛まれたアクスウィス大陸を、和平に導いた武王アレクシス・アルバーン。
痩せた土壌しか持たぬゆえ度々飢饉に見舞われるカルヴェ大陸を、豊かな緑溢れる国に生まれ変わらせた耕王カミーユ・カルノー。
長く圧政で抑圧されたサデーロ大陸の人々の心を芸術で救った歌王サルヴァトーレ・サルヴォ。
貧困に喘ぐダール大陸において、商いの力で活力を与えた商王ダニエル・ダールクヴィスト。
昼と夜が半年ごとに入れ替わるナーリスヴァーラ大陸で、魔術を駆使し人々を支える幻王ナルヒ。
麻薬が蔓延し享楽に耽るバツィン大陸の人々の目を覚まさせた賢王パーヴェル・バタノフ。
この世界にある六つの大陸から集まった代表者たちである。
何れ劣らぬ傑物たちを差し置いて、部屋の最奥、上座には黒いヴェールで顔を隠した女が座っていた。
私である。
名を山田奈子という。
昨日二十二歳になったばかりの社会人一年目。日本人。
今、私は人生で一番のピンチを迎えていた。
眉根を寄せて座る武王、真摯な面持ちの耕王、明るい笑顔を見せる歌王、眼鏡をかけた商王、フードを目深に被った幻王、柔和な表情を崩さぬ賢王。
彼らが全員――元カレだったから。
私は過去に六回、異世界に召喚されている。
今日の今日までそれらは別の世界だと思っていた。
なぜなら大陸間の交流が全くなかったから。
それが、間違いだと知ったのは、ほんの数時間前である。
同じ世界だと知っていたら……六股なんてかけなかったよ!! こんちくしょー!!