再会と散財
今、リスロに入る列に並んで待っている。
「おい、キュウ。馬車の中でじっとしてろよ!」
「キュ!」
キュウに大人しくするように言うと頷いて返事をする。
漸くすると俺達の順番が来る。
「身分を証明出来る物はあるか?」
ギルド証を出し魔力を込めるとギルド証は蒼白い光を発する。
ギルド証は本人の魔力を流すと蒼白く光り、本人じゃないと紅く光る様になっている。これで本人確認が出来る。
「ん、確認した。その若さでBランクとはな。凄いじゃないか!」
「まぁな。それで中に入ってもいいか?」
「あ~すまんが馬車の中も一応確認させて貰えるか?大丈夫だと思うがこれも仕事なんでな。」
「あぁ、構わない。確認してくれ。」
門番達が馬車の荷物を確認しに中に入ると慌てた声が聞こえてくる。
「おい、なんだこの生き物?お前見たことあるか?」
「いや、俺も見たことないぞ!ちょっと聞いてくるから待ってろ。」
門番の一人が俺を呼びに来てあの生き物はなんだと聞いてくる。
やはりキュウはこの辺でも見たことない生き物の様だ。
「あんた、馬車の中にいるあの生き物はなんだ?」
「あ~その俺にも解らないんだ。ここに来る途中に見つけてエサをやったら気に入られてな、付いてきたんだ。」
「おい、大丈夫なのか?危険じゃないのか?」
馬車の中を見ると仰向けで寝ているキュウが見える、大人しくしろと言ったが、まさか寝てるとはな。道理で静かな筈だ。
「魔法を使うが、こんな間抜けに寝てる生き物が危険だとは思わないけどな。そう思わないか?」
「な、なに!魔法が使えるのか?本当に大丈夫なんだろうな?」
「あぁ、こいつは人の言葉が理解出来るみたいでな、ちゃんと言うことを聞いてくれるし、街に入ったらギルドに行って従魔登録をするから安心してくれ。」
「Bランクのあんたがそう言うなら信用することにするよ。じゃあ、馬車を確認するから待っててくれ。それと次からは早めに教えてくれよ?」
「分かったよ。驚かせて悪かったな。」
俺は馬車の確認を終え、街に入る。
「取り敢えずギルドに向かうか。」
街に入り従魔登録をするのにギルドに向かうとキュウが起きて俺の肩に登る。
「キュウ?」
「起きたか?もう街に入ったぞ。」
「キュウ、キュキ、キュウ。」
街に入った事を伝えると、肩の上で右、左と動いて周りをキョロキョロと見ている。その度に尻尾が耳や首に当たり擽ったくてしょうがない。
「擽ったいんだよ、落ち着けって。今キュウの従魔登録をしにギルドに向かってる所だ。」
「キュウ?」
従魔登録が解らないみたいで首を傾げるキュウに従魔登録の説明をする。
「いいかキュウ?お前は魔法が使えるだろう?」
「キュ。」
「よし。でなキュウが魔法を使う事を街の人は知らないがキュウに危害を加えようとする奴が居た時、魔法を使って抵抗するとそいつらが騒いで魔物扱いされて駆除の対象になるかもしれない。そうならない為にギルドに行って従魔登録をするんだ。分かったか?」
「キュウ!」
納得してくれた所でギルドに着いたので、キュウをそのまま肩に乗せ中に入ると
併設してある酒場で飲んでる奴が居るだけで余り人は居ない。まぁ、昼を少し過ぎた時間だし他はまだクエストを熟してる頃だろ。受付嬢の元にキュウの従魔登録をしに行く。
「悪いんだがこいつの従魔登録をしたいんだがいいか?」
キュウは肩から飛び降り受付嬢の前に立つ。
「きゃ。」
「こら、キュウ驚かせるなよ。」
「あ、ご、ごめんなさい。大丈夫です。見たことない子ですね?取り敢ずギルド証を出して少々待っててください。」
「分かった。」
ギルド証を受付嬢が受け取り席を離れて手続きをしに行ったので待っていると二階から声が掛かる。
「ライル?ライルじゃないか!」
名前を呼ばれ見上げるとギルマスのソルシャがいた。
「どうしてここにライルがいるんだ?リスロではクエストを発注してないが。」
「あ~ギルマス。クエストで来たわけじゃないんだ。旅に出ることにしたんで取り敢えず近いリスロに来たんだ。」
「ソルシャだ。って旅に出たのか?婚約者はどうした?」
「色々在ってな。余り聞かないでくれると嬉しい。」
「そ、そうか、分かったよ。で直ぐに旅立つのか?」
「暫くはリスロに居るつもりだから世話になると思うからよろしく頼むよ。ギルマス。」
「だからソ・ル・シャ・だ。何度言えば解るんだ!」
「いや、一介の冒険者がギルマスを名前で呼ぶのは駄目だろ?」
「ライルはソルシャって呼んでいいの!」
「わ、分かった、分かったよソルシャ。」
「そう、それでいいのよ♪」
口調が変わったソルシャが満足げに頷いてると横から声が掛かる。
「あの~登録し終わったですけど?」
「登録?何の登録したのライル?」
「こいつの従魔登録をな。」
キュウを指指してソルシャに紹介すると、キュウが指を叩く。
「キュウ。」
「いて、なんだよ?キュウ痛いじゃないか。」
キュウは腕を組んで首を横に向けるが、ちゃんと腕が組めてない。
どうやら自分の事を放置してソルシャと喋っていた事が気に入らない様だ。
「悪かったよキュウ。そんな怒るなよ?」
「キュ、キュウ。」
謝る俺に首を横に向けたまま片目を開けてまだ機嫌が良くならない。
「放置して悪かったよ。後で食べ物を一つ買ってやるから、それでいいだろ?」
そう言うとキュウは小さな指を二本立てる。
「こ、こいつ。分かった、分かったよ。二つ買ってやるからそれでいいだろ?」
「キュウ♪」
「え~とライル。この生き物は?」
「エルフのソルシャでも解らないか。」
「私はエルフと言ってもまだ80だ!人で換算したらまだ20だぞ。知らない事の方が多い決まってる。」
「わ、悪い。そんな怒るなよ。こいつはリスロに向かう途中で懐かれたんで一緒に旅をする事にしたんだ。名前はまだ決まって無いんだか、呼ぶのに困るので鳴き声のキュウと呼んでるんだ。」
「へぇ~可愛いわねその子。」
「ソルシャ。あ~なんだ随分口調が変わってないか?」
「へっ?そ、そんな事は無いぞ。いつも通りだ。」
俺に指摘されて慌てて口調を戻す。
「じゃあ俺はキュウに約束した食べ物を買いに行くとするよ。」
ギルドを出ようとすると呼び止められる。
「ライルさん待ってください。ギルド証またお渡ししてませんよ?」
「す、すまん。すっかり忘れていた。ありがとう。」
「いえ、私も言うのが遅くてごめんなさい。後これをキュウちゃんに付けてください。」
受付嬢に小さな首輪を渡された。
「これは?」
「この首輪は従魔の証ですね。街では外さないでくださいね。」
「分かった。え~と。」
「私の事はヘレンと呼んでください。」
「ありがとうヘレン。暫くリスロに居ると思うからよろしく頼むよ。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
「ちょっと、ライル私には?」
「いや、ソルシャには言った筈だか?」
頬を膨らませて睨んでくるソルシャ。あーさっきはギルマスと言っているから名前で呼べと言うことか。
「ソルシャもよろしく頼むよ。」
「任せなさい♪」
「キュキュ!」
キュウが肩に登って来て顔を軽く叩く。
「あぁ、分かってるよ。キュウが早く行きたいみたいなんで、今日は帰るよ。また明日顔を出すからよろしくな。」
ギルドを出てキュウに約束した食べ物を買って財布を見るとかなり寒い事に気付き、今のお金では予定している宿には泊まれない。
この後またギルドに戻りヘレンに安いお勧めの宿を聞きなんとか宿を確保する事が出来た。
「明日からは稼がないとな~。キュウも手伝えよ。お前が高い物ばっかり食べたから余計に財布の中が寒くなったんだからな。」
「キュウ。」
いい返事をするキュウ。
明日は早くギルドに行って、いいクエストを探すか!
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