セイルとセイラ
ライル達の部屋から出て自分の部屋に戻るとセイラが恨めしそうに睨んできたのを見て相当機嫌が悪い事に気がつく。
「私一人に纏めさせて随分と帰ってくるのが遅いじゃないの!」
「まぁ、私も色々とあって大変だったんですよ?でどんな感じですか?」
「どんな感じって話の内容が多少違うだけで殆ど同じじゃないのよ。纏めるにして意味が無いわよ!」
殆どが同じ内容で量だけが有るだけで意味が無いことに対して怒るセイラをどう宥めようかと考えながら傍に近づこうとした時に足に力が入らなくなりその場で座り込んでしまった。
「ちょ、ちょっとどうしたの?大丈夫?」
机から離れて慌ててセイルの傍に生き肩を貸してセイルをベッドに座らせて体調を伺ってくる。
「大丈夫ですよ。ちょっと目眩がしただけで大した事はありません」
「でもよく見たら顔色が悪いわよ、本当に大丈夫なの?」
再度問い掛けるセイラに大丈夫だと返し、少し疲れたから今日は休むと伝えてセイラに部屋に戻る様に伝えるが心配そうにセイルに寄り添う。
「本当に大丈夫ですから心配しないで下さいよ。いつものお転婆のセイラじゃないと逆に私が心配になりますよ」
「もう何よ!人が心配してるのにセイルの事なんて知らない!」
セイルに言い返してそのまま部屋を出て扉が強く閉められてセイラが退室していったが直ぐに扉が開かれてセイラが顔だけ出す。
「隣の部屋に居るんだから何か困ったら呼びなさいよ」
それだけを伝えると扉は閉められた。
「ふぅ~。取り敢えずセイラにはまだ言わない方が良さそうですね」
今日のライルとの戦闘を思い出すとギリギリだった。
魔力ポーションを飲みながら追いかけていたがライルが魔力ポーションを飲んだ形跡はなく、あれだけ魔法を行使しても魔力切れを起こさないライルの魔力量に驚愕していた。
「あの時の上に向けた魔法も自分の位置を知らせる為のものでしょうし、戦闘に集中していた時には首飾りも聞きませんでしたが応援に来たのがあの二人で本当に良かった」
二人の声に反応した瞬間に首飾りを使うと普段は戦闘中に視線を逸らす等しない隙を作れてライルに勝つ事が出来たのだった。
その後はライルを人質にすればソルシャとキュウを動揺させれば首飾りで自分を疑わない様に仕向けるだけで隷属の首輪を三人に付けることも成功した。
あの場面でソルシャに反撃されてはセイルも危なかったのだ。
「ケビンさんと言う使えない駒がなくなってしまいましたがライルさんとあのエルフにも首輪を付けることが出来て、いい駒が出来ましたね」
プライドだけが高いケビンより実力が高いライルとソルシャを駒に出来た事を喜ぶがセイラにはいつまでも知られない様にする事も出来ないだろうと考えると頭が痛くなるセイル。
今考えても疲労が溜まり何も考えれなくなってきたのでベッドに寝転がりそのまま眠りにつく。
セイルの部屋から出て自分の部屋に戻って来たセイラは考えていた。
「本当に大丈夫なのかしら?」
普段は飄々としているセイルが顔色を悪くして帰ってきたのを心配するが情報を集めに行っただけなのに顔色が悪くなるほど疲れるものなのか?と疑問が頭を過る。
何か自分には伝えれない事をしてきたのではないのか?と考えが浮かんでは消えていく。
自分には言えない事とは何だろうと考えていると一瞬ライルの顔が頭に浮かぶが頭を降って考えないようにした。
「まさかね。別に私に隠す様な事じゃないしね……」
ライルがどうなろうと自分達の目的の為には知ったことではないと思うと少し胸がズキッと痛んだ。




