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婚約者に裏切られたので諦める事にした  作者: 東海さん
リヴィア編
38/39

無力

間が空いてすみませんでした。

 

 脇腹の傷を押さえて膝を着くライルにキュウとソルシャが駆け寄り、剣を突き付けているセイを睨む。


「これは手間が省けましたね」


 キュウとソルシャを確認して逃げられないように背後を土壁で覆う様に展開させる。

 背後を振り返り不味いと思ったソルシャが精霊にお願いしようと視線を背後に向けるとセイがソルシャを殴ろうと近付かれたがライルが間に入り替わりに殴られてソルシャに倒れかかってしまい精霊魔法が発動出来なかった。


「「ライル!」」


「危ない、危ない。エルフの精霊魔法は感知しづらいですからね。手荒な真似はしたくないので大人しくしててくださいね?」

 

 自分の替わりに殴られたライルに目を向けると脇腹からの出血が増えて顔色が悪くなっていた。


「分かったわ、でもライルにこのポーションを使わせてこのままじゃライルが死んでしまう」


「そうですね。使わせるのに条件が有ります。聞いていただけますか?」


 セイが出した条件には三人に隷属の首輪を付ける事だった。

 ライルは首を横に振り反対していたが声が出せないほどに弱っていた姿を見てソルシャとキュウはお互いを見つめ頷き、セイから渡された首輪をつけてしまう。


「これでいいでしょう?」


「えぇ、結構です。ライルさんには私が用意したポーションを使ってもらいますね。リスロでギルマスをしていた貴女が用意したポーションだと傷と一緒に魔力も回復させる物を出してきても不思議じゃないですからね」


「それでいいから早くライルにポーションを使わせて」


 セイから渡されたポーションをライルに飲ませると傷は治ったが失われた血までは戻らないので顔色が悪いままの状態であった。


「さぁ、貴女達には私に着いてきて貰いますね」


「待って、今のライルの状態では無理をさせられないわ。もう少し休ませてお願いよ」


「私としてはそこのカーバンクルさえ居れば良いのですが言う事を聴いてもらえないのであれば考える必要が有りますかね?」


 キュウはカーバンクルの名が出ると肩を震わせた。

 

「わ、分かったわ。ちゃんと着いていくから。その代わり着いた先でライルをちゃんと休ませてお願いします」


 頭を下げて懇願するソルシャを見ていたライルは血を失いすぎて足元が定まらない中、己の力のなさを痛感させられた。 

 

「分かりました。着いたらライルさんを休ませる事を約束しますよ。そうそう、ライルさんにこれを飲ませて上げるといいでしょう」


 そう言ってソルシャに丸薬を渡してライルに飲ませるように促して来るが怪しくて躊躇っているとセイが説明してくる。


「それは簡単に言えば増血剤ですよ。今のライルさんの状態では時間が掛かりすぎてしまいますしね。多少はマシになるでしょう」


 説明を受けてライルに飲ませるともういいでしょうと言われライルに肩を貸しながらセイの後を着いていく。



 森を抜ける頃には薬が効いてきたのかライルの顔色が多少良くなていたがそれでも足元は覚束無いままであった。


 リヴィアに戻って来る頃には日が暮れてきており、ライルの状態見て心配そうに話し掛けてきた門番にセイが話し掛けると何事も無かった様に通されて疑問に思うソルシャであったが早くライルを休ませたくて気にしない事にするのだった。


 そうしてリヴィアに入るとセイが借りていると思われる宿に着き、宿の主人に言ってもう一部屋借りてそこにライルをベッドに寝かせるとそのまま意識を失ってしまった。


「約束はちゃんと守りましたよね。カーバンクルは此方に来てください」


 言われて行きたくは無いが近寄るとキュウの髪をかきあげて額を確認したセイが笑いだす。


「はっははは、間違い無いですね。貴女はカーバンクルですね。徐々に力を取り戻しつつあるがまだ完全では無いですね。残念です。直ぐにでも実験をやりたかったのですがね」


「貴方、キュウに何をするつもりなの!」


 問い詰めてくるソルシャにライルと同じように説明を始めるとキュウの顔色が悪くなって体を震わせる。

 その様子を見てキュウを抱き締めながらセイを睨み付ける。



「そんなに睨まないで下さいよ。まだ力を取り戻せてないのでは意味が無いのでね。上手く行けば死なずに済むかもしれませんし、ここは気持ちよく協力してもらえませんかね?」


「そんな事出来るわけ無いじゃない!キュウはまだこんなに小さいのよ?何で平気でそんな事が出来るの?貴方普通じゃないわ」



「普通じゃないですか。当たり前です。普通にしていたら何も出来ない!守る事も復讐する事もね!…………っと、すみませんね。暫くはこの部屋で大人しくしててくださいね?まぁ、その首輪があるかぎり何も出来ませんけどね。」


 そう言い残し部屋を出ていったセイを眺めてどうにかしなければと考えながらキュウを抱き締めて背中を擦ってやりながらライルを見つめる。





(ライル、どうすればいいの?私じゃ何も出来ないよ)


 


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