キュウの正体
セイの目を自分に引き付けながら森の奥へと進んでいく。後ろからは火球が飛んで来ては愉しげな声が森の中に響き渡る。
「おぉ、これも駄目ですか?ではこれはどうでしょうか?」
目掛けて飛んでくる火球が頭上を通過するのを見たライルは火球の落下地点を
確認して足を止めると落ちた火球は直ぐ様燃え広がり炎の壁に変わった。
「さぁ、これで逃げれませんよ?」
追い付いたセイは笑顔を浮かべてライルとの距離を少しずつ詰めていく。
「そうみたいだな。お前には色々と話を聞かせてもらいたいしな」
振り返りながら答えるとセイは頷いて足を止めてた。
「えぇ、お話をしましょう。何の話をしますか?エリーさん?あなたがキュウと呼ぶ幻獣の事がいいですか?」
「キュウが幻獣?何のことだ」
「ご存知無かったのですか?あの子はね、カーバンクルなのですよ」
キュウの正体がカーバンクルと告げられて驚くがカーバンクル自体は伝説の生き物として人々に伝わっているがとてもじゃないが信じられなかった。
「そんなはずはない。カーバンクル自体お伽噺の筈だ。仮に実在してたとしてもカーバンクルの特徴には額には紅い宝石があるがキュウにはそんな物はない!」
「はい、確かに額には有りませんね。カーバンクルの額の宝石は力の源でしてね。あの子は力を使い過ぎたのです。でもね、人の姿に成れるように迄は力を取り戻している様で、ならその力を取り戻させてその額の宝石を有効に使わせて貰おうと言う訳です。まぁ、額の宝石を外すと力を無くして死んでしまうらしいんですがね?」
「ふざけるな!」
キュウの命を軽々しく扱おうとする様を見て怒りが押さえられず叫び氷弾をセイに向けて放つ。
「ふざけてなどいませんよ?これでも私、苦労してるんですよ?私が見つけたのにどこかの馬鹿な貴族のせいで逃げられてしまいましたし見つけたと思ったら力を失ってるんですから」
炎の壁でライルが放った氷弾を防ぎつつ悪びれもせず話し掛けて来る。余裕を浮かべるセイに尚も氷弾を放つ。
「その程度の魔法じゃ無駄ですよ。次は私から行きますよ?」
氷弾を火球で相殺してライルへと距離を詰めて剣を一閃。後方に飛び回避したが交わしきれずに胸元を浅く切り裂かれてしまった。
「ちっ」
後ろを見ると先程の炎の壁はまだ消えずに残りこれ以上は後ろに下がる事が出来ないでいた。
「後ろには下がれませんよ。さぁ、どうしますか、まだ時間稼ぎをしますか?どうせ先に逃がしているのでしょう?」
キュウを先に逃がしているのを見抜いて尚もライルを追ってきた事に疑問を浮かんだ。
「気付いていながら何故追い掛けるのを止めなかった?」
「簡単な事です。ライルさんを捕まえれば言う事を聞いてくれると思ったからです。ある程度研究に協力してもらった方がいいですし、宝石を取り出して死んでしまって実験が失敗したら終わりですからね」
「キュウに対する人質か」
「はい、カーバンクルがここまで人に懐くのは聞いた事が無いですからね。もし協力してくれればライルさんには危害を加えないと約束しますよ?研究が上手くいけば死なずに済むかもしれませんよ?どうですか、協力してくれませんかね?」
「断る。お前みたいな奴がする研究なんてろくでもないに決まってるからな!」
セイの頭上に風刃を放つと同時にセイに向かっていく。
向かってくるライルに向けて剣を突きだしてくるがこれをバグ転でかわしつつ突きだした手を蹴り上げるとバランスが崩れた。
着地と同時に足に風を纏い鳩尾に肘を打ち込み、腕をひねると剣取り上げてそのままセイに向けて突きだす。
「勝負ありだ」
「参りましたね。ここまで追い詰めたのに本当に大したものです」
それでも余裕を崩さないセイは両手を上げてライルを称賛する。
「「ライル!」」
後ろからライルを呼ぶ声が聞こえ何故か視線をセイから外してしまった。
ライルが視線を反らした瞬間に地面から土槍がライルを襲った。
「グッ!?」
意識をキュウとソルシャに持っていかれていたライルは後方に飛ぶが回避しきれず脇腹に受けてしまい剣を落としてしまった。
「形勢逆転ですね♪」




