狙いと真相
避けきれず剣に左肩を貫かれたライルの背中に衝撃が走り吹き飛ばされる。
「いや~それに引き換えライルさんは大したものです。心臓を狙ったのに私の殺気に反応して避けようとしますし、直ぐに反撃を試みる。本当に大したものですね。」
ライルの反応を誉めるセイは倒れているケビンを見るとはぁ~と溜め息を吐いた。
「なんだその溜め息は、お前が寄越した剣のせいだろうが!ちゃんとした魔剣なら俺が負けることは無かったんだ。」
「あなたごときがちゃんとした魔剣を持っても負けてると思いますよ?ケビンさんはBランクが限界ですよ。」
吹き飛ばされたライルは倒れそうになるも右手で地面を捉えて回り、着地するとセイに視線を向けながら、自分の怪我の状態を確認する。
左肩に突傷、背中には軽度の火傷を負っていた。吹き飛ばされた時の衝撃は火魔法であった。
「ほら、見てください。吹き飛ばしたのにそのまま倒れずにもう私を警戒してますよ?ケビンさんには出来ない事ですよ。」
会話していてもライルの動きから視界を外していなかった事が解る。
「どいうことだ?」
「ん~、どう説明したらいいですかね?私の狙いはライルさんが連れている従魔でしてね。探してたんですよ。その過程でケビンさんと知り合いましてね。色々と魔道具を渡して実験していたんですよ。」
狙いがキュウだと知るとポーチから出てこようとするキュウを押さえる。
「キュ、キュウ!」
押さえても出てこようとするキュウに小声で大丈夫だから出てくるなと伝えて気付かれないように水属性の回復魔法で背中を治療する為にセイに問い掛ける。
「何故キュウを狙う?ケビンに魔道具を渡して何をする気だ?」
「キュウと言いましたね。その子の力を貸して欲しいのですよ。ケビンさんについては私の趣味と言いましょうか、魔道具の効果を確認してもらっていたんですよ。魔剣と呼べる物では無いんですけど、後は首飾りとかね」
「ケビンも言っていたが首飾りとはなんだ?エリーと何の関係がある?」
ケビンが言っていた首飾りとエリーの疑問を問うと笑顔を浮かべて説明し出す。
「首飾りはですね、人の思考を誘導出来るのですよ!凄くないですか?これを使えば思う様に人が動かせるんですよ。それをね、ケビンさんに渡して試してもらっていたんですよ。それをエリーさんに使われましてね、なんとギルドマスターにも効いたんですよ。いや~かなり有意義な結果が出ましたよ」
「じゃあ、エリーはその首飾りのせいでケビンと…………お前のせいかァァ!」
「いえいえ、使ったのはケビンさんですから。我ながら結構強力に作れたと思ってるんですよ?ライルさんと別れたエリーさんに使ってみたんですが何故か効かなかったんです。不思議ですよね一度は使えたのにどう思いますか?」
自分には解らないと首を横に振ってライルに問い掛ける。
その態度に頭に血が上りセイに向かって氷弾を放つも炎の壁を展開されて塞がれてしまう。更に追撃を駆けようとした時にポーチから出てきたキュウに手を噛まれた。
「ツッ!?キュウ?」
噛まれてハッとしてキュウを見ると心配そうに見上げてくる。
「すまん、ありがとな。心配してくれて」
キュウの頭を撫でながら気持ちを落ち着かせて背中と左肩の傷の具合を考えると全力は出せないと判断しこの場から離脱する事を決めると炎の壁に水弾を大量に撃ち込む。
「素晴らしい才能ですね。ライルさんがBランクなのも不思議ですよ。今のライルさんはAランクの冒険者の中でも上位に匹敵しますよ」
炎の壁の向こうからライルを誉めたてる。炎の壁が消える変わりに水蒸気が立ち込めるがセイが風の魔法で散らすとそこにライルの姿は無かった。
「おや?かなり激昂してたはずですが、不利を覚って撤退ですか。素晴らしい判断ですね。」
「いいからさっさと俺を回復しやがれ。次はライルには負けねぇ。」
次は負けないと言い張るケビンに何処からそんな自信があるのか不思議でしょうがないセイ。
「ケビンさんじゃいくらやってもライルさんには勝てませんよ。じゃあ、私はライルさんを追いますので。っと、そうそうお疲れ様でした。あなたはいい道化でしたよ」
一言告げ剣を振り下ろす。
「さて、回復はしていたようですけど、完全ではないでしょう。」
回復魔法を使っていたがあの怪我で何処まで逃げれるものかと興味を持ちながらライルを追い掛けて行った。




