遭遇
リスロの宿で朝を迎えたソルシャ。
「手紙を書いてヘレンに渡したけど、なんか嫌な予感がするわね」
昨日ヘレンから聞いたキュウを探しているらしい二人組の事が気になってあまり眠れず、今日は朝からラグラに向かう事にしていたがこのまま向かってしまってもいいのかと迷っていた。
「リヴィアに戻るのに二週間は掛かるし、でもキュウの事を探っていた二人組が気になるわね。もうリスロに居ないみたいだし」
一人で考えても纏まならないのでヘレンに相談する為にギルドに行く事にする。ギルドに着き、ヘレンを見つけて話し掛けた。
「ヘレン、ちょっといい? 相談に乗ってほしいのだけど」
「私に相談ですか?今ならいいですよ。まだ冒険者の皆さんは来てないので」
ヘレンはそう言うと、相談するのに部屋を用意してくれる。部屋に入って机を挟んで座ると、昨日ヘレンから聞いた話の二人組の事を話す。
「昨日ヘレンから聞いた二人組が気になってこのままラグラに行くか、リヴィアに戻るか、迷ってるのよ。どうしたらいい?」
「確かにキュウちゃんを探してる二人組は気になりますね。私が思うにはラグラ
に行くよりも、戻った方がいいですね。ギルドにある魔道具で連絡したい所ですがギルドの仕事じゃないので出来ませんから」
意見を聞いたソルシャは相談をして良かったと思い、ヘレンにお礼を言って、リヴィアに急ぎ戻る事を決めた。
ソルシャがギルドを出て行く後ろ姿を見ていたヘレンはギルマスだった頃のソルシャと今のソルシャを比べるとギルマスを辞めて正解だと思い、笑顔で見送った。
ギルドを出たソルシャは宿に戻り荷物を必要最低限に纏める。少しでも馬車を軽くしスピード上げる為に。
◇
「ライル~今日はどうするの?」
「今日はティアナの所にでも遊びに行くか」
「やった~なの!直ぐに行くの」
ティアナの家に遊びに行く事を伝えると両手を上げて喜び、ライルの腕を掴んで引っ張ろうとする。そんなキュウは年相応に見えた。
「朝食を食べて、何か手土産でも買ってから行こう」
「分かったの。早く食堂に行って食べるの」
腕を掴んだまま離さずに食堂までライルを引っ張って行く。食堂に向かうまでに他の客とすれ違いライルを引っ張るキュウを微笑ましそうに見ていた。
◇
「まずは、宿を決めるわよ。それから情報集めね」
「それでいいんじゃないですか。リヴィアに着いて直ぐ行動ってのも疲れますしね」
「おい、全員で行く事はないだろ。俺はライルを探すぞ」
「まぁまぁ、ケビンさん。落ち着いてください。着いて直ぐに問題を起こすのは得策ではありませんよ」
笑顔でケビンの肩を握る。
「くっ、わ、分かった。言う通りにするから、手を離せ」
「解ってくれて何よりです。情報は私がやりますから、ケビンさんは暫く宿で待機をお願いしますね」
「ちょっと待って、何で俺だけ宿で待機なんだ!」
「ケビンさんがライルさんと言う人を見つけたら、街中でも襲いそうだからですよ。わかってくれますよね?」
セイルが問い掛けると渋々頷いて、二人の後に付いて宿屋に向かう。
その頃ライル達はティアナの家を訪れていた。
「ライルお兄ちゃん、キュウちゃん、いらっしゃい」
「ティアナ、遊びに来たの♪ 」
「お邪魔するよ。これはティアナ達、家族で食べてくれ」
ここに来る途中で買った果物をティアナに渡す。
「わぁ、ありがとう。お母さ~ん、ライルお兄ちゃんが果物貰ったよ」
声を聞いて玄関に顔出したティナはできないが持っている果物を見て、ライルにお礼を言って中に入れてくれる。キュウはティアナと手を繋いで中に入って行く。
ティアナもライルを放置してキュウとお喋りを楽しんでいた。母親のティナは苦笑いを浮かべて、ライルを家に招き入れる。
「手土産まで用意して貰って、すみません。」
「気にしないでくれ。キュウの気分転換に付き合ってくれるティアナにお礼として買った物だしな」
「そんな、私達の方こそティアナと仲良くしてもらって感謝してる位です。キュウちゃんと友達になってから、毎日が楽しそうにしてますよ」
仲良くなってからティアナはキュウとライルの事ばかり話す様になった。
楽しそうに話す娘を見て微笑ましく見る母親とライルの話が出ると眉を寄せる父親がそこにいた。
ライルとティナはお喋りを楽しんでいる二人を眺めていた。その視線に気付いたティアナがライルを自分の横に座る様に促してくる。キュウは自分の横を主張してくるので対面に座る事にした。
「何でキュウの横に座らないの!」
「キュウちゃんは何時もライルお兄ちゃんと一緒なんだからいいでしょ!今日は私の横に座ればいいんだよ」
対面に座っても自分の横に座るように主張してくる二人。
「こらこら、喧嘩するなよ。二人の顔が見れるからここに座ったんだからな」
テーブル越しに二人の頭を撫でてやると言い合うのをやめて大人しくなる二人。中々上手い事を言うなと感心して台所でお茶を入れに行くティナ。
それからはティアナとキュウのお喋りに付き合う事にした。時折、ティナが会話に入って来てティアナを揶揄う場面があり、顔を紅くするとキュウにも揶揄われてティアナが怒る等、楽しく過ごしていく。
「キュウ、そろそろお暇するぞ?」 「まだ帰りたくないの」
「じゃあ、今日は泊まって行けばいいよ。ライルお兄ちゃんも」
「俺は無理だろ。キュウの事を頼めるかな?」
「えぇ、いいですよ。その方がティアナも喜びますし」
「キュウ、あまり迷惑を掛けるなよ?」
「分かってるの。キュウは大人しくティアナと遊ぶの」
ティナにキュウの事を頼み、食費としてお金を渡そうとすると、前回貰ったのが残っているからと断られてしまう。何とか渡そうとしても断固として受け取ってくれなかったので、お言葉に甘えてキュウの事を頼みティアナの家を出て宿に戻る。
夕方、道は仕事終わりの人や夕食の材料を買いに来てる人達でごった返していた。
「もう少し早く切り上げるべきだったな」
ティアナの家を早く出ればこの人混みの中を行く事もなかったがキュウとティアナが楽しそうにしている所を邪魔するのは憚られた。
しょうがないと割り切って、人混みの中に突入して宿屋を目指す。
人混みを抜けて宿屋まであと少しの所まで戻って来ると先程よりは人が減って歩きやすくなる。
「ふぅ、凄い人混みだったな。今度からは何時もと同じ時間にお暇させて貰おう」
宿屋の扉を開けて中に入ろうとすると。
ドンッ。
「きゃ」
ライルとぶつかり尻餅をつく女。
「すまない、大丈夫か?」
倒れた女に手を出すとその手を掴んで起き上がる。
「どこ見てるのよ。お尻ぶつけたじゃない!」
「本当にすまない、お詫びに飯を奢るからそれで許して貰えないか?」
「しょうがないわね、それで勘弁してあげるわ。ほら、行くわよ」
そう言うとライルの腕を引っ張って宿屋から出て行く。どうやら宿屋の飯では駄目な様だ。
「逃げないから引っ張るのは止めてくれないか?」
「本当でしょうね?逃げたら承知しないわよ」
ライルの腕を引っ張るのを止めて並んで歩く。
「何処に向かっているんだ?」
「何処って美味しそうな店を探すのよ。タダ飯ですもの、美味しい物を食べないと」
笑顔で言う女に苦笑いし、そのまま女が言う様に店を探し出して飯を食べる。
そこの店では海鮮を鉄板の上で焼いて出してくれる店で女は気に入ったみたいだった。
店を出ると混んでいた道も人が少なくなり歩きやすくなる。
「ふぅ~、美味しかったわね。私のお陰で美味しい店を見つけられたんだから、感謝しなさいよ?」
「あぁ、感謝するよ。」
女の言葉に笑って感謝を述べる。
「な、何笑ってるのよ。怒るわよ!」
「素直に感謝してるだけだぞ?何を怒るんだ?」
女が怒る意味が解らないライル。
「ウッ、もういいわ。」
女はそう言って走ってライルの前から去っていく。
「何だったんだ?まぁ、いい。宿に戻るか」
遅くなってすみません。




