キュウの家出?
リヴィアに着いてから一月が経った。
「あっ!こら、キュウ。ライルのベッドで寝るなんて、ずるいぞ!」
「キュウ?キュ、キュキュウ。」
ソルシャを見つめてから俺に近付いて頬擦りをしてソルシャを挑発する。
「こいつ、此方に来い!その根性叩き直してやる。」
「待て、ソルシャ。キュウも挑発するなよ。」
「ちっ!」「キュウ。」
キュウは寝る度に俺のベッドに潜り込んで来る。それをソルシャが怒るという流れが出来ていた。キュウには人の姿では絶対にベッドに入ってくるなと言うと、動物の姿で入って来る様になったので、もっと違う言い方をすれば良かったと思う毎日だった。
「キュウ。毎晩、毎晩。羨ましいぞ!ライル今夜から私も同じベッドで寝ていいだろ?」
「ソルシャ。そんな事したら、パーティーは解散するぞ?」
ソルシャとは一緒に旅をしていく、と言う事でギルドでパーティー登録をしてある。パーティー名はまだ決まっていない。
「くっ!でも、キュウだけズルいじゃないか!私だけ除け者なんて、酷いじゃないか!」
「はぁ~、分かった。「えっ♪」今日はソルシャに1日付き合うから、それで勘弁してくれ。」
「キュ!?キュウ、キュウ。」
ソルシャは喜び、キュウはイヤイヤと首を振って顔に張り付いてくる。
「ぷっは、キュウ。息が出来ないだろ!此ぐらい許してやれよ?それか俺のベッドに潜り込んでくるの止めるか、どちらかだぞ?」
ボフンっと音を立てて、人の姿になったキュウは考えだし、渋々納得する。
「わ、分かったの。今日1日だけ、許してあげるの。今日だけなの!」
「潜り込むのを止めるという選択肢は選ばないんだな。」
「それは断固拒否するの!」
拳を握りしめ力説する。(はぁ、そんなに力説する事じゃないだろ?)
今日はクエストを受けずに休むことにしてソルシャと二人で街を散歩する事になった。キュウは一人でぶらつくそうだ。
「さぁ、ライル。デートをしよう。」
「違うの!デートじゃなくて、只の散策なの!そこら辺の所勘違いしないようになの!」
こうして俺達二人が宿を出ていき、キュウは後からぶらつく事になった。
「今日ぐらいは花を持たしてあげるの。キュウも街を冒険するの。」
キュウは人の姿をやめて、動物の姿に戻って宿を出ていった。
最初はライル達を尾行しようとしたが、ソルシャに釘を刺されて出来なくなった。幸い、ライルからお金が入った袋を貰ったので、一人での食べ歩きも乙なもんだと思い直し、港方面へと歩いていく。
「キュ、キュ、キュウ、キュ、キュ、キュウ。」
自分のテーマ曲を口ずさみ、美味しい物を思い浮かべてどの屋台から食べようか、ヨダレを滴ながら歩いてく!
街の住民も一月経つとキュウに慣れて、声を掛ける人もチラホラ増えた。
「あら、キュウちゃん。一人で散歩かい?「キュウ。」そうかい。これでも食べなよ。」
「おっ!キュウ此方も食べていきな。」「キュウ。」
色んな屋台の店主から食べ物を貰い、ライルから貰ったお金を首に掛けてある袋から出そうとしても皆、キュウを撫でるだけで、受け取らなかった。
(人間にもいい人がいっぱいなの!)
ご機嫌で散歩していると、何処からか泣き声が聴こえてくる。
「キュ?キュウ?」
小さな体で立ち上がり、首をキョロキョロ、耳をピクピクと動かして、泣き声が聴こえる場所を探す。暫く探していると泣き声の元を見付けて駆け寄ると、そこに居たのはまだ小さい女の子が居た。
「キュ?キュ、キュウ?」
女の子に話し掛けると、泣くのを止めてキュウ見つめてくる。
「キュウ、キュウ。」
「きゃ、くすぐったいよ♪」
女の子の肩に飛び乗って顔を舐めて、尻尾で顎の辺りをこちょこちょと擽ってやると泣いてた女の子は元気に笑いだす。
「ありがとう。あなたの名前はなんて言うの?」
「キュウ!」
キュウと鳴き小さな親指?で自分の事を指す。
何となく聞いてみたら、女の子の質問に答えるようにキュウと鳴いて自分の事を親指?で指す動きを見て驚く。
「そ、そうなんだ。キュウって名前でいいんだよね?じゃあ、キュウちゃんね♪私はティアナって言うんだ。よろしくね♪」
「キュウ♪キュ、キュ。」
自己紹介をしたティアナに小さな手を出して握手を求めると、ティアナはキュウの手を優しく触る。
「ねぇ、キュウちゃん?私、お母さんと逸れちゃたの。一緒に探してくれる?」
「キュ、キュウ♪」
「ありがとう。」
お礼を言われて、キュウはティアナの頭上に乗る。
「あはっ。頭の上から探してくれるの?」
「キュ。」
一人と一匹はお喋りをしながら、母親を探しに行く。
「キュウちゃん、お母さんはね。とっても綺麗で優しいの♪」
「キュ、キュ。」
ティアナは話し掛けると鳴いて頷いてくれるキュウが大好きになっていった。
時折キュウもティアナに何か話し掛けるが上手く伝わらず、少し悲しんだキュウは、ライルが芸達者と褒める程の芸?を見せティアナと愉しく母親を探していく。
「ティアナ!」
突然後から名前を呼ばれたので振り向くと、ティアナによく似た女性が走って来てティアナを抱き締める。
「何処に居たの?お母さん、凄く心配したんだから。」
「うぅ、おかあさん、ご、ごめんなさい。」
母親と再開できて安心したティアナは泣き出してしまう。母親は我が子を抱き締めながら優しくその頭を撫でる。
「キュ、キュウ♪」
「えっ!?何?この動物は?」
「おかあさん、この子はキュウちゃんって言うの。泣いてる私に優しくしてくれたの!」
「そうなの。ありがとうね、キュウちゃん。」
「キュ、キュ~。」
照れくさそうに顔を横に向けて手を振るキュウ。
「おかあさん、キュウちゃんを家に連れていってもいい?」
「ティアナ、おかあさんはいいと思うけどね、キュウちゃんはどうなのかな?ちゃんとキュウちゃんに聞かないと駄目よ?」
「そうだね、キュウちゃん。これから一緒に家に帰ろう?」
「キュ~?」
腕を組んで考えるが、やはり腕がちゃんと組めないキュウ。
「キュウちゃん、来てくれないの?」
目には涙を浮かべて溢れそうになっている。何やら気まずい雰囲気が辺りに立ち込める。母親は苦笑いを浮かべて、キュウに頭を下げていた。
「キュ~、キュウ。」
キュウが鳴きながら頷くと、ティアナは涙を袖で拭い喜んでキュウを抱き締める。
「キュ、キュ、キュウ~!」
「こら、ティアナ。キュウちゃんが苦しそうよ?そんな強く抱き締めては駄目よ?」
「あっ!ご、ごめんね?嬉しくて、今日は家に泊まっていってね♪」
「キュ!?」
泊まりと聞いて驚くキュウを涙目で見るティアナに負けて頷いて、一緒に帰る事にした。
今日は帰れないのを良い事にソルシャがライルを襲わないか心配でしょうがなかったが、ライルを信じる事にする。
その頃のライルはソルシャとデート?を終わらせて宿に戻っていた。
部屋で寛いでると、急に悪寒が走り、体を擦る。
「どうした、ライル?風邪か?」
「いや、分からないが、何故か寒気を感じてな。」
「今日は早い目にベッドで寝たらどうだ?」
「しかしキュウがまだ帰って来て無いのが心配なんだが?」
「キュウの事だ、どうせ食べ歩きで忙しいんだろう。夕食までには帰ってくるだろう。帰ってきたら、起こすからそれまで寝てるといい。」
「なら、そうさせてもらうよ。ありがとうソルシャ。」
「気にする事は無いさ。」
「ライル、ライル。起きて。」
ソルシャに体を揺すらされて起こされる。
「もう、夕食の時間か?」
「そうなんだが、キュウがまだ帰ってこないんだ。」
「何、本当か?何かあったのか?」
「朝の事を怒って家出したのかも?」
「う~ん、あんな事では、怒らないと思うけど、探しに行くか。」
「あぁ、私も探すよ。」
宿を出て二人でキュウを探すが見つからなかった。
「ソルシャ、今日はここまでにしよう。かなり暗くなってきて、探すのも難しくなってきた。明るくなってから、街の人に話を聞いて探そう。」
「でも、キュウに何かあったら。私はどうすればいい?」
「変な事は考えるな。キュウはあれでも、俺の従魔だぞ?そこら辺のゴロツキ位なら、倒せる。だから、あまり心配するな。」
その日はキュウを探すのを止めて朝早く聞き込みをしながら探す事にする。
「ふぅー、キュウなにしてんだよ?明日、見つけたら説教だからな!」
空の月を見上げてキュウの無事を祈る。
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勇者の監視を頼まれた俺。を書いてます。まだ数話しか、挙げてませんが、読んでくだると、嬉しいです。




