リヴィアでの食べ歩き。
リヴィアに着いた次の日。
ライル達は宿で二部屋借りて今、ライルの部屋に集まっている。
「なぁ、ライル?二部屋も借りるのは勿体ないから、やはり一部屋にしないか?」
「キュウは二部屋でもいいけど、ライルと一緒が良いの!」
キュウの言葉を聞いて睨み付けるソルシャ。
「あのな、ソルシャ。いくら旅仲間とは言え、同じ部屋はないと昨日決めただろ?」
「いや、しかしな。一部屋にすればお金が多少なりとも浮くんだぞ?」
「そうだが、男の俺と同じ部屋だと周りから、変な目でみられる事になるんだぞ?キュウは人化時に人に見られた時に俺が困るから、ソルシャの部屋で決まりだ!」
ガーンと音が鳴りそうな表情を浮かべるキュウ、そもそもキュウとソルシャが同じだと部屋で休まる時が無くなりそうで、何とか納得して貰おうと考えるライル。
「わ、私は、別にきき気にしないぞ?寧ろ……………」
顔を真っ赤に染めて言うソルシャだが最後は声が小さく聞こえない。
「そこは気にしとけ。もうこの話は終わりだ。キュウも部屋の隅に居ないで、今日こそ食べ歩きに行こうぜ?」
食べ歩きの言葉に反応して寄ってくるキュウの頭を撫で、動物の姿になってもらい部屋を出る。
「ソルシャ。置いていくぞ?」
「あっ、ま、待ってくれ。私も行くから。」
宿を出て散策しながら、街を歩いていく。
「おっ!旨そうな匂いがするな!」「キュ、キュ。」
「本当だな、いい匂いだ。」
港の方に向かって歩いてくと香ばしいニオイが流れて来て、お腹が鳴りそうになるのを我慢してニオイの元へ行く。
「ここだな、おっちゃん。ここは何を焼いてるんだ?」
「いらっしゃい。ここはな、貝を焼いてるのさ。一度食ったら病み付きになるぜ?」
屋台のおっちゃんの手元を見ると確かに貝らしきものを焼いていた。
「3個貰えるか?」「毎度あり。大銅貨9枚だ。ちょっと待ってな。」
そう言うと、貝にバターを乗せて最後に黒い液体を掛けて出来たものを渡してくれる。俺は受け取り銀貨1枚を渡してお釣りの大銅貨1枚を貰う。
「今、掛けた液体はなんだ?見たこと無いんだが。」
「これかい?これはなショーユって名前らしいぞ?港町だからな。東方の国から取り入れてるんだよ。これを掛けるとかなり美味くなるだ。」
「ほ~、私も初めて聞く名だな。ショーユか。」
皿を渡されてその上に乗っかる貝はバターが溶けてショーユと混ざり合って、とても旨そうだ。キュウには熱そうなので息を吹き掛けて少し冷まさせて同時に食べる。
「「美味い。(キュウ。)」
「そうだろ、そうだろ。こいつは酒にも合ってな、かなり進むぞ?」
「あぁ、これは酒が進みそうだ。キュウ、ソルシャ。俺はもう一つ食べるがどうする?」
「私も貰おう。」「キュウ、キュウ。」
「おっちゃん。もう3個頼む。」
「毎度。気に入ってくれて嬉しいよ。よし、大銅貨6枚でいいぞ。」
屋台のおっちゃんに値引いて貰いお礼を言って他の屋台を覗きに行く。
「何処を見ても旨そうだな。次は何にしようかな?」
「キュウ~?」
「彼処にあるスープを飲んでみないか?」
ソルシャが指差した屋台にはスープが売ってる様でそこに行くことにする。
「スープを3杯頼むよ。」
「はいよ、大銅貨3枚だよ。」
大銅貨3枚を渡してスープを受け取り中を見ると様々な魚介類が入って、これまた良いニオイがしている。
スープなのでキュウの分は下に置いてから頂く。
「ん!?こんな美味いスープは飲んだこと無いな。それに中に入ってる貝や魚も口の中に入れるとホロホロとくずれて、とても美味しいな。」
「そ、そうだな。かなり気に入ったのか、ソルシャ?」
「当たり前だ!これは毎日食べても飽きないぞ?キュウもそう思うだろ?」
「キュウ、キュウ。」
ソルシャに言われて頷くキュウ。二人の反応を見て、確かに美味いが毎日食べたら流石に飽きるだろとは言えないライルだった。
その後は焼き魚、海老を焼いた物などを堪能し一同はギルドに立ち寄り、どのようなクエストが在るかを見に行く事にする。
ギルドに入るとジロジロとライル達を見てくる、大半がエルフのソルシャにあつまっていたが気にしないで、掲示板を見に行く。
「よぉ、姉さん。掲示板なんか見てないで、俺達と一緒に呑まないか?」
「そうそう、奢るよ。俺達はこれでもCランクだから、面白い話も出来るよ。」
ソルシャに冒険者の二人組が声を掛けてきた。
「遠慮しておこう。連れがいるんでな。私に構わないで貰おうか?」
「連れってそこに居る兄ちゃんか?そんな兄ちゃんより俺達と呑んだ方が楽しいぜ?」
断られても、肩に手を置いて尚も食い下がり、ソルシャの機嫌が悪くなっていく。
「お前達は私が言っている事が分からない程の馬鹿なのか?私に構うなと言っている!」
肩に置かれた手を振り払い、男達を睨み付ける。
「人が下手に出てれば、調子に乗りやがって。覚悟出来てるんだろうな?」
「自分が少し綺麗だと思って調子に乗りやがって。」
ソルシャに断られて逆ギレする冒険者二人組、ここにはこんな奴らしか居ないのか?
「はぁ~、お前達が口説こうとしたソルシャはAランクだぞ?ついでに言えば、俺はBランクだ。悪い事は言わないから止めておけ。」
「はっ!下手な嘘を吐いたって騙されないぞ。」
「お前らみたいなのが高ランク冒険者な分けないだろが!」
「ライル。コイツらには何を言っても無駄だ、痛い目を見ないと分からん程の馬鹿だからな。」
「その様だな。ソルシャ、下がってていいぞ?俺がやるから。」
「舐めるんじゃねぇ!」「舐めた口聞けないようにしてやるよ!」
俺の言葉に腹を立てた男達が俺の前後から殴り掛かってくる。
(コイツら本当にCランクか?動きが悪すぎるだろ。)
同時に踏み出してくるが、前から来る男の方が若干早く殴り掛かってきたので後ろから来た男の位置を確認して当たる寸前で避けると後ろの男が殴られて倒れる。
「ぎゃ!」
「なっ!?」
「嘘だろ?お粗末にも程があるぞ?本当にCランクか?」
「ウルセェ!避けるんじゃねぇ!」
何もしないで殴られろと男がいい放ち、呆れてしまう。
避けるなと言われたので殴り掛かってくる前に相手の鼻目掛けて左で軽く殴り、怯んだ所を右ストレートで顎を打ち抜くと膝から崩れて前に倒れこむ。
「呆気ないな。ここはこんな冒険者しか居ないのか?」
「そんな事はないと思うが、昨日の出来事を考えると即否定が出来ないな。」
昨日ソルシャを誘っていたギルド職員を見ながら言うソルシャ。
慌てて昨日のギルド職員が飛んできた。
「す、すいません。次からはこんな事が無い様に言い聞かせるんで、今日の所は抑えてもらってもいいですか?」
「あぁ、分かった。次からは気を付けてくれ。俺よりもソルシャが暴れたらどうなるか、俺にも分からんからな。」
「な、暴れる訳無いだろ!私を何だと思ってるんだ。ライルは。」
「俺よりも高ランクの冒険者だろ?俺はBランクだから、ソルシャには敵わないさ。」
お手上げのポーズをするとソルシャが拗ねてしまった。
取り敢えずギルドを後にし、ソルシャの機嫌を直そうと試みてみる。
「悪かったって、そんな怒るなよ?」
「私は高ランクの冒険者だからな、そんな事で怒る訳無いだろ!」
プイッと顔を逸らして言うソルシャは、怒ってる様にしか見えない。
「分かった。ソルシャの言うことを一つ聞くから機嫌直してくれよ。なぁ?」
「キュ!?キュ、キュウ、キュ!」
何故か慌てるキュウ、ソルシャは俺の言葉を聞き、真剣な顔をして問い詰めてくる。
「本当だな?本当に何でも聞くんだな?」
「待て、何でもと言ってないぞ?俺が聞ける範囲で頼むぞ?」
「なら、同じ………たい。」
「悪い、途中の声が小さくて、よく判らなかったんだが?」
「だから、同じへ「キュウ、キュウキュキュ、キュウ」い。」
キュウがソルシャの言葉に被せてきて、また分からなかった。
ソルシャはキュウを捕まえて、声を出せないように口を押さえる。
「これからは部屋を一つにしようと言ったんだ!」
顔を紅く染めて言い放って、上目遣いで見てくる。
「うっ!?それはちょっと不味いだろ?」
「私はそれがいいんだ。一つ聞いてくれるんだろ?何も同じべ、ベ、ベットで寝ようって、い、言ってる訳じゃないだから、き、気にしなくてもいいじゃないか!それともライルは私とは同じ部屋は嫌か?」
目に涙を浮かべて見詰めてくる。
「嫌じゃないが………分かった、同じ部屋でいいよ。ベッドは別々だからな!」
「キュ!?キュウ、キュウ!」
ソルシャの腕から逃れたキュウは抗議してくるが、俺が了承した途端に宿屋に走っていたソルシャを止めないと意味が無いのだから。
「そんな怒るなよ、キュウ。同じ部屋でもベッドは違うんだから、何も起こらないよ。…………そう、起こるわけ無いんだよ。」
今は旅を楽しみたいのだから。
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勇者の監視を頼まれた俺。を書いてます。良かったら、此方もよろしくお願いします。https://ncode.syosetu.com/n6210ff/




