到着!
今、リヴィアに入る為にならんで待っている。
リヴィアに着くまでの二週間が異様に長く感じた。その訳はソルシャにキュウが人化、出来る事を話した時のソルシャの慌てぶりが凄かった。
「一緒に旅をするソルシャに隠し事はしたく無いから、言うが驚かないでくれよ。」
「そ、そうか。私に隠し事はしないんだな。驚かないから言ってみてくれ。」
ソルシャに確認をし、キュウに目で合図するとキュウも頷く。
ボンっと音を立ててキュウが少女の姿になる。
それを見たソルシャは人には見せてはイケない顔をし、驚いていた。
「あ~、ご覧の通りだ。キュウは人の姿になる事が出来るんだ。この事はエリック達しか知らない。ソルシャにも人に言わない様にしてもらいたい。」
ソルシャは驚いたまま動かなかったので目の前で手を振りながら声を掛けると我に戻る。
「な、なんだこれは?キュウが女の子になったぞ?おい、ライルこれはどういう事だ?」
「落ち着け、ソルシャ。俺も詳しくは分からないが、人の姿になろうとキュウであることには変わりない。」
「そうなの~。キュウはキュウなの。」
俺の腕にしがみ付きながら言うキュウ。それを見て頬を引き攣らせるソルシャ。
「そ、そうだな。人の姿になっても、キュウである事に変わらないな。だが、ライルに引っ付く事は無いんじゃないか?」
「そんな事ないの。キュウが引っ付くとライルは喜ぶの!」
「ま、まさか!?ライルは小さい子が「キュウは小さくないの!」好きなのか?」
「やめろ、変な事を言うな!只キュウが引っ付いて来るだけだ。」
人聞きの悪い事なので即否定しておく。
「そうだよな。うん、こんなお子様じゃ、ライルが手を出すわけ無いよな。うん!」
「キュウは子供じゃないの!まだ力が戻ってないだけで本来のキュウはソルシャには負けないナイスバディなの!」
本来の姿ならソルシャには負けないと胸を張るキュウ。ソルシャはキュウの一部を見て勝ち誇った顔をしながらキュウを宥める。
「キュウはこれからだもんな。」
「ムキーなの!キュウを見る顔がムカつくの!」
「おい、狭い馬車の中で暴れるな!」
こんな喧嘩がリヴィアに着くまで続いて、この二週間がとても大変だった。
「次の方どうぞ。」
やっと俺達の番がやって来てる。
「身分証明の提示をお願いします。」
丁寧な言葉で相手をしてくれる門番、まだ若いな、エリック達と同じ位だろうか?170無い感じで薄い青色の髪を目に掛からない位で眼鏡を掛けている。
俺とソルシャは言われた通りにギルド証を提示する。なお、キュウは動物に戻ってる為に従魔の首輪を見せる。
「二人は冒険者なんですね。それもAランクとBランクなんて、凄いですね。」
「いや、そんな事は無いぞ。なぁ、ライル。」
「俺はBランクだからな。ソルシャの方が凄いさ。」
「へぇ。やっぱり、AランクとBランクじゃ、違いますか?」
「それはそうだろ?俺なんかではソルシャの相手は出来ないさ。」
俺の言葉を聞きキラキラした目でソルシャを見る門番。
「こらぁー。ニック遊んでないで仕事しろ。」
「す、すみません。」
「おい、ニック。確認は終わったのか?」
「はい、確認は終わってます。ブラットさん。」
「確認が終わってんなら、早い所中にいれてやんな。長旅で疲れてるだろうに。」
ブラットと呼ばれた男は俺達の事を気遣ってくれる。
熊みたいな体格に茶色の髪は短く刈り上げて、外見を見ると気を使う人には到底見えなかった。
「うちの奴が迷惑掛けて悪かったな。リヴィアは良い所だから楽しんでいってくれ。」
「此方こそ、仕事の邪魔をして悪かったな。」
「気にしないでくれよ。ニックは成人したばかりで、あんた達みたいな腕の良い冒険者を見たことが無かったんだよ。それに、こいつ外見がナヨナヨしてるだろ?自分には出来ない冒険者に憧れてる部分があるから、つい長話をしちまったんだと思う。勘弁してやってくれ。」
「いや、気にしないでいいぞ。私も楽しかったからな。」
「へぇ~、綺麗な人だな。あんたの彼女かい?」
ブラットの言葉を聞いて喜ぶソルシャ。
「そ、そうか、そういう風に見えてしまうか。こ、困るな。な、ライル。」
「そ、そうだな。」
笑顔で困ると言われても、どうすればいいのか、分からず返事だけしておく。
「キュウ、キュキュキュウ。」
キュウに至ってはブラットに抗議をしている。
「なぁ、ニック?俺、このちびに怒られるような事したか?」
「えっ、僕に言われても?」
「いや、すまん。気にしないでくれ。ほら、キュウ行くぞ。」
ニックとブラットに別れを言い、街の中に入っていく。
街の中は買い付けに来てるだろう商人やら、漁師、沢山の人で賑わっている。
「へぇ~、かなりの人が居るわね。」
「そうだな。先に宿を決めて、その後に散策でもしよう。」
「キュ、キュ、キュウ。」
「分かってるから、袖を引っ張るな。食べ歩きだな。」
「キュ~ウ♪」
「ライル、ギルドに寄ってお勧めの宿を聞きましょう。」
「そうだな。初めて来たから何処に何があるのか、分からないからな。」
ソルシャの提案に頷いてギルドに向かう。向かう中で人々の視線がソルシャを見ている。(エルフのソルシャは綺麗だから目立つな。何も起こらなければいいけど。)
元ギルマスのソルシャに付いて行きギルドに到着し中に入る。
「いらっしゃい。クエストの注文かな?」
ギルドに入って直ぐに声を掛けた人物を見る。歳は15~18代位で人懐っこい笑顔を浮かべていた。赤毛の髪が耳が見えない位まで伸び。前髪の右だけ長く伸ばして、左は眉の辺りで揃えている。
「いや、私達は冒険者だ。暫くリヴィアで活動するから、お勧めの宿を教えてほしい。」
「こんな綺麗な人が冒険者だなんて。良かったら一緒にご飯でもどう?」
「結構だ。それよりも宿を教えて貰えるか?」
「そんな事言わずに、俺美味しい店知ってるからさ。行こうよ。」
「あ~、悪いがさっさと宿を教えてくれるか?」
キュウがイライラしてきてるから早く宿を決めないとまた食い潰されるからな。
「何あんた?話に入ってこないでくれる?俺は此方のお姉さんと話してるだから。」
「はぁ~。言っておくが、ソルシャはリスロでギルマスをやっていた人物だぞ。悪い事は言わないから、早く宿を紹介してくれ。」
「えっ!?ギルマス?嘘でしょ?」
「本当だ。正確には元が付くがな。早くしてくれないか?」
俺が言ったギルマスを元ギルマスと訂正するソルシャに口説いていた男は冷や汗を流しながら謝罪をして宿を紹介してくれた。平謝りで謝る男にもういいと伝えて、教えてもらった宿に行き荷物を預けて街で食べ歩きをする。
「いいかキュウ?食べ歩きはするが程々にしてくれよ?」
「キュウ~?キュ、キュ。」
不服そうになくキュウにソルシャから爆弾発言が。
「太るぞキュウ?」
「キュウー!」
それからはキュウとソルシャで喧嘩が始まり食べ歩きには行けなかった。
宿で食べた魚介料理は美味しかった。




