閑話ケビン2
今回はケビンの話になります。
ケビン視点
男に首飾りを預けて一週間が経った。
「あいつ、何にも連絡してきやがらねぇ!」
俺は男を探す為に宿を出て酒場に行く。あの名前も知らない男とは酒場で声を掛けられたから、まずは酒場だ。
酒場に向かっているとエリーが居て男と話をしていたので近付いて声を掛ける。
「おーい、エリー。」
「ケ、ケビン。何か用?」
エリーは俺が声を掛けると驚いている。最近は距離を置いていたから声を掛けられるとは思ってもみなかった様だ。
「用っていうか、エリーを見かけたから、声を掛けただけなんだが。」
「そう、用が無いなら私は帰るわ。セイさん、私はこれで失礼しますね。」
「分かりました。エリーさん、またお話しましょう。」
エリーは踵を返し家に帰って行った。が俺はエリーと話をしていた声に聞き覚えがあった。
「なぁ、あんた。エリーとはどんな関係なんだ?」
男が振り返ると俺が知っている男だった。
「おや?ケビンさんじゃないですか。エリーさんとは市場で会ってから、たまに会った時に世間話をしているだけですよ?」
「首飾りはどうした?あれから何日経ってると思ってるんだ!」
「そうでしたね。それは申し訳ない。」
悪びれた様子も無く、軽く頭を下げる男に腹が立ち、胸ぐらを掴む。
「お前、舐めてんのか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ?ここでは人の注目を集めてしまうので場所を変えましょうか。」
周りを見ると俺達の方を見てる奴らが視線を逸らす。
「ちっ!此方に来い!」
「勿論。着いていきますとも。」
男を連れて人気のない路地裏に足を運ぶ。
「ここなら、いいだろ。早く首飾りを寄越せ!」
「まぁまぁ、落ち着いてください。首飾りを詳しく調べていたら、若干の不調がありましてね?今、材料を集めて直してる所なんですよ。」
「この前は壊れてないって言ってたじゃねぇか!」
「やはりあの場では詳しく調べれないので持ち帰って調べ直した結果判明しましてね。」
「じゃあ、後どれくらい掛かるんだよ!」
男の胸ぐらを掴んで揺する。
「っ!?」
「やれやれ、先程も落ち着きましょうと述べたでしょう?」
この男の何処にこんな力があるのか?胸ぐらを掴んだ手を握られて手を離してしまう。
「ね?落ち着いて話をしましょう。そんなに興奮していたら、話が纏まりませんよ?」
「わ、分かった。後どれくらい待てばいいんだ?」
「後3週間は見て貰いたいですね。直してからの試験もしたいですし。」
「おい、3週間は流石に長過ぎる。もう少し何とかならないのか?」
「う~ん?試験を切り詰めれば、それでも2週間は頂きたいですね。」
今は何とか剣のお陰でやれてるが首飾りが有った時に比べると怪我をする頻度が増えてきている。最低2週間乗り切れるか?
「これが譲歩できる期限ですかね。どうですか?」
「うぅ、わ、分かった。それでいい。出来るだけ早く仕上げてくれ。」
「分かりました。善処させて貰います。」
男と別れてギルドに行く。
「あっ!?ケビンさん、ギルマスが呼んでるんで部屋まで来てくれますか?」
「ギルマスが俺を?また指名か?」
「さぁ?ケビンさんが来たら呼んでくれと言われただけで、私も詳しく聞いてないですから。」
ミアに言われてギルマスの部屋を訪ねる。
いつもならミアに要件を伝えてから俺を呼ぶのに何の話だろうか?
コンッコン!
「ギルマス、ケビンだ。入っていいか?」
「入れ。」
ギルマスの許可を貰い部屋の中に入ると怖い顔で俺を見てくるギルマス。
「なんて怖い顔してんだよ。何か有ったのか?」
「この前エリーから話を聞いてな、どうもお前と喋ってる時、頭に靄が掛かる時があるそうなんだが、何か知らないか?」
最後の言葉は怒気を伴って言われて焦る。ヤ、ヤバい。ライルが出て行ってからエリーを誘ったが断られて、その度に首飾りを使ったが効果がなかった。何とか誤魔化そうとするが今、手元に首飾りがないので意識を逸らすことが出来ない。
「おい、何とか言ったらどうだ?」
「いや、ま、待ってくれ。そんな事を言われても俺もよく分からない。」
「そうか、エリーから話を聞いて俺なりに調べてみたんだがな。お前がAランクになったばかりの時は怪我もしなかったのに、最近は怪我をする様になってるみたいだな?」
「おいおい、そりゃ怪我もするだろ!?Aランクのクエストは簡単じゃないのはギルマスも分かってるだろ?」
「そうだな、確かにAランクのクエストは簡単じゃない。「だろ!」だがお前が怪我をする様になってから、着けてた首飾りをしてないじゃないか?お前がダンジョンの報告をしてきた時には着けていた首飾りがな!」
ギルマスは首飾りが怪しいと睨んでいる。何とかこの場を切り抜けたいが首飾りも無く何も思い付かない!(ヤバい、どうする。どうすればいい?)
「どうした?そんな汗を浮かべて、やはり首飾りに何かあるんだな!」
「う、うるせぇ!魔道具を使って何が悪い!」
「魔道具を使うなとは言わん!だがお前が使った首飾りは思考を誘導するものだな?魔物だけに効くなら問題ないが人にも使えるのは看過出来ん!お前の身柄は衛兵に引き渡す。」
俺を、Aランクの俺を衛兵に引き渡すだと!ふざけるなぁ。
この事を知ってるのはギルマスだけ、ギルマスが居なくなれば俺は安泰だ。
だがギルマスの部屋で暴れたら俺の立場が不味い、何とかギルマスを何処かに連れ出さないと。
「わ、分かった、観念するよ。自分から出頭するからギルマス付き添ってくれないか?」
「本当だな?分かった。付き添ってやる。」
何とかギルマスを引き連れてギルドを出て詰所に向かう振りをし路地裏まで誘い込む。
「おい、詰所に行くのになぜ路地裏に入る?」
「Aランクの俺とギルマスが表を通って詰所に向かったら、怪しむ奴が出てくるだろ。ギルドの信用が落ちないように俺なりに考えての行動だよ。」
ギルマスが怪しむのでギルドの信用を盾にして話を逸らして靴紐を結ぶ振りをしてギルマスを先に歩かせる。
「悪いな!ここで死んでくれ。」
先を歩くギルマスに剣を振り下ろす…………。
ガキィーン。
金属音が響く。
「やっぱりこうなるか。ケビン、覚悟はいいんだろうな!」
「クソッ!なんで?なんで斬れない?」
この魔剣は鉄でも何でも切り裂いてきたのになぜ?
「理解出来ないようだな、お前が持ってる剣は火の魔剣だろ。それで何でも切り裂いてきたかも知れないが、自分で剣に火魔法を付加させればご覧の通りだ。」
「ちっくしょ。なんだよそれ、卑怯だぞ!」
「それはお前が言っていいことじゃないな。さて、話はここまでだ。」
追い詰められて焦っていると何処からかギルマスにナイフが飛んでくる。
「ちっ!誰だ!?」
ギルマスが剣で弾くとナイフから白煙が上がり、ギルマスの姿が見にくくなる。
「ケビンさん、此方です。」
突然の事で焦った俺の腕を引っ張り、声を掛けてくる人影。
「風よ。ちっ!逃げられたか。やはり手引きしてる奴が要るな。」
ギルマスは風魔法で白煙を吹き飛ばすがその頃には俺と俺を引っ張った人物は姿を消していた。
「大丈夫ですかケビンさん?」
「あんたか。助かったよ。でもこの魔剣ギルマスには通じ無かったぞ。」
「流石ギルマスですね。それで此からどうしますか?もう冒険者は続けれないし、ラグラにはいられないでしょ?」
「クソッ!なんで俺がこんな目に遇わなければ行けたいんだ!」
後少しでエリーが手に入る筈だったのに。何故だ?そもそもライルが俺にエリーを紹介しなければ、エリーの事を欲しがる事もなかった。
「あいつさえ居なければ、そうだ、あいつさえ居なければエリーも俺の物になった筈だ。」
「で、ケビンさんどうするのですか?」
「決まってる。あいつを殺す!あいつさえ居なければ俺はこんな事には為らなかった。」
あいつは殺さないと気が済まない。全部あいつが悪いんだから。
ライルをどうやって殺してやろうか、そればかりが頭の中に浮かんでくる。
「くっくくく、いい具合に壊れてきましたね。いやぁ、此からが楽しみだ。」
男が何か言っていたが頭には入ってこなかった。
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