次の街へ
宿の部屋で寛いでる時にキュウに聞いてみた。
「キュウは俺と会うまでどこで何をしてたんだ?」
喋れる事が分かったので気になった事を聞いてみるとキュウは困った顔をする。
「言いたくないなら別に言わなくてもいいぞ?」
「ん~と。キュウは人に襲われたから逃げて来て、寝ているライルに会ったの。」
「人に襲われたってどうして?」
「よく分からないの。キュウは普通に山奥で暮らしてただけなの。」
「そうか。襲ってきた人に心当たりはあるのか?」
悲しそうに首を振って答える。
「思い出させて悪かったな。」
「大丈夫なの。今はライルと居るから楽しいの。」
笑顔で答えるキュウの頭を撫でると気持ち良さそうに目を細める。
キュウの姿をエリック達以外には黙っているので動物の姿になって貰いギルドに向かった。
「ライルさん。今日もクエストですか?少しは休んだ方がいいですよ?」
「休んだ方がいいのは分かってるんだが、もう少しお金を貯めたくてな。」
「ライルさん結構貯まってますよね?何に使うんですか?」
「リスロに2ヶ月居るからな。そろそろ違う所に行きたいんでな。その為にはもう少し稼ぎたいんだよ。」
ヘレンと話をしていると二階からソルシャが勢いよく降りてくる。
「ラ、ラ、ライル。リスロを出ていくのか?」
「あぁ、気ままな一人旅をしたいからラグラを出てきたんだしな。」
「キュ、キュ。」
一人旅の言葉に反応して顔を叩いてくるキュウ。
「わ、悪かった。一人旅じゃなくてキュウも一緒だ。だから、顔を叩くな。」
「キュウ、キュウ。」
「そ、それでどれくらいで旅立つんだ?」
「そうだな。一週間位後かな?」
「そ、そうか。分かった。」
ふらふらした足取りで二階に戻っていくソルシャを見てからヘレンを見ると両手を上げて首を横に振っていた。
「なぁ、ソルシャは大丈夫か?足元が覚束無い感じだが?」
「はぁ~。気にしないでください。では、討伐クエストでいいですよね?」
ヘレンに適当に討伐クエストを紹介してもらい、ギルドを出る。
「さーて、チャチャと終わらせるか。」
「キュウ。」
大したクエストじゃなかったので、キュウと二人?で終わらせて宿に戻る。
「キュウは何処に行きたい?俺は海辺の街に行ってみたいんだが?」
部屋に戻って人化したキュウに聞いてみる。
「キュウはライルと一緒なら何処でもいいの。だから、ライルが行きたい場所に行けばいいの♪」
「じゃあ、次は海辺の街リヴィアに行くかな?魚介類とか旨そうだからな。」
「キュウも、キュウも食べたいの。」
「よし、決まりだな。キュウ、今日から節約していくからな?リヴィアに着いたら魚介を沢山食わしてやるからな。」
目をキラキラさせて頷くキュウの頭を撫でて落ち着かせてから宿の飯を食べて休むことにした。宿の飯を食べているキュウはいつもより食べないようにしていた。リヴィアに着いたら沢山とは言ったがどれだけ食べるのか、少し怖くなった。
そしていると一週間なんてすぐに経ってしまった。
今はギルドの前でエリック達と別れの挨拶をしている所だ。
「ライルさん。ありがとうございました。また一緒にクエスト受けましょうね。キュウも元気でな。」
「本当、世話になりました。また会いましょう。」
「ライルさん、キュウちゃん元気でね。」
「う、うぅ。あ、ありがとうございます。お元気で。」
「ライルさん、キュウちゃん。また。」
エリック達と話をしている時にソルシャが近寄って来た。
「ギルマスのソルシャまでお別れを言いに来たのか?」
「いいや、違うよ。」
「なら、どうして?」
「私もライルとに着いていく事にしたからだ。」
「「「「えぇー!?」」」」
「いや、待って何故ソルシャが着いてくるんだ?仮に着いてくるとしてもギルマスの仕事はどうした?」
「ふっふふ。問題ない!パーカーにギルマスをやらせる事にしたからな。」
ソルシャの後ろを見ると真っ白に立ち尽くすパーカーが居た。
「後ろのパーカーが真っ白なんだが?」
「大丈夫だ。パーカーはBランクだが頭がいいので押し付けても問題ない!」
(今、押し付けたって、そんなんで大丈夫か?)
「あのな、ソルシャ。俺が持ってる馬車は一人用でな?キュウは体が小さいから大丈夫だがソルシャを乗せることは出来ないぞ?」
「その点も大丈夫。私が持っている二人用の馬車で行けばいい。ライルの馬車はギルドで買い取るから、これで軍資金も増える。一石二鳥だ。」
「はぁ~、ヘレン。ギルドはそれでいいのか?」
「ギル…じゃなかった、ソルシャさんは言ったら聞かないですからね。ライルさんに聞いた一週間で話を通してしまいましたから。」
ソルシャに何を言っても無駄な用だ。俺は真っ白になっているパーカーに手を合わせて合掌しておく。
「分かったよ、連れていけばいいんだな?」
「そうだ、ライル。元Aランクの私は役に立つぞ。」
「キュ~。」
ソルシャを疑いの目で見るキュウ。
「なんだ、その目は?本当に役に立つぞ。」
「分かったってば。ほら、キュウも仲良くしろよ。」
元ギルマスのソルシャが着いてくることで驚いたがなんとか別れを済まし、二人と一匹でリスロを後にする。港町のリヴィアまでは馬車で二週間掛かる。
リスロを出て直ぐに後ろからソルシャがキュウに怒っていた。先の事を考えると溜め息しか出てこない。
「頼むから、仲良くしてくれよ。」
ライル達がリスロを出て一週間が経った頃。
「ここがリスロですか。本当にいるんでしょうかね。」
「それを調べるのよ。結局セイルのせいで時間がかかったじゃない!」
「いや~、なかなか面白くて。まぁ、細かい事はいいじゃないですか?」
「細かい事ってセイルのせいなんだから反省しなさいよ!」
「そんな怒ると可愛い顔が台無しですよ。」
セイルのせいで遅れたのに。確かにリスロまで付いてきてくれたのは嬉しいけど、実験に集中し過ぎる癖はなんとかしてほしいものだ。
「それでは先に宿を決めてしまいますか?セイラはどうしますか?」
「そうね。私も一緒に行くわ。部屋でこれからの事を話しましょ。」
「分かりました。部屋は一部屋でいいですか?」
「ちょ、ちょっと。二部屋に決まってるでしょ!いくら兄妹だからってこの歳で一緒の部屋なんて。」
顔を紅くして怒鳴るセイラ。
「くっくく。冗談ですよ。顔をそんなに紅くして、セイラは本当に可愛らしいですね。」
「な!?あんたね。本気で怒るわよ!」
「ほら、行きますよ。宿で部屋を取ってこれからの事を話すのでしょ?」
揶揄うだけ揶揄って私を置いてすたすた歩いていく。
(本当に腹が立つわね。今度本気でなぐってやろうかしら?)
なんて考えてみるものの、セイルに勝てないので諦めることにした。
セイルの後を追い掛けて行くと私が追い付くのを待っている。
こういう所だけはちゃんと待っててくれるのに。もっと私の事を大切にしてほしいものだ。
今はたった二人だけの家族なのだから。
面白いと思ったら評価とブックマークお願いします。




