オーク退治
キュウの機嫌が良くなったので使ったお金は勉強料と思う事にする。
しかしリスロに来てから稼いだお金の半分が消えてしまった。これでは次に旅立つのに心許ないのでギルドに行きクエストを探す。
「あっ、ライルさ~ん!」
振り返ると俺に気付いたライラが此方に近寄って来る。ライラが居ないのに気付いたエリック達は周りを見て探していると、俺と目が合って寄ってくる。
「「ライルさんおはようございます。」」
「お、おはようご、ございます。」
「おはよう。」
「あぁ、おはよう。」
「キュウ。」
キュウが自分も居るとばかりに鳴く。
「ご、ごめんね。キュウちゃん。おはよう。」
「おう、キュウ。おはよう。」
「うん、今日もキュウは可愛い。おはよう。」
「うんうん。そうだね。キュウちゃん、おはよう。」
「キュ~ウ。」
「確かに可愛いけど、この体の何処にあれだけの料理が入るんだ?」
「キュウ!?」
エリックだけは挨拶をせず、俺から聞いたキュウの大食いに納得がいかないみたいだ。キュウはエリックだけ挨拶をしないので、肩に乗る。
「あぁ、悪いな、キュウ。おはよう。」
「キュウ。」
遅れて挨拶をするエリックに返事を返すキュウ。
「危なかったな?エリック。」
「えっ?何がですか?」
「後少し挨拶が遅れたらキュウは尻尾で顔を叩くところだったぞ?」
「マジですか?でもキュウの尻尾は柔らかそうだから、そんなに痛くないんじゃ?」
「だそうだぞ?キュウ。」
エリックの言葉を聞き気分を害したのか、尻尾をブンブンと振り回すとそのままエリックの顔を打ち抜く。
バッチーン!と良い音がしエリックが倒れる。キュウは尻尾で打ち抜くと同時に俺の肩に乗る。
「イッテー!ちょ、ライルさんマジでいたいんですけど。」
「キュウを怒らせるからだ。まぁ、キュウもこれで許してやれよ?」
「キュ~、キュウ。」
まだ不満があるようだが、許すキュウ。
「エリックは大袈裟なんだよ。」
「キュウ。イーサンが馬鹿にしてるぞ?」
エリックの言葉を聞いてイーサンを見るキュウ。イーサンはキュウに見られて慌てている。
「お、おい。余計な事を言うな!」
「俺は大袈裟なんだろ?キュウ。やっちまえ!」
エリックがキュウを嗾けるとキュウもその気になり、イーサンにジャンプし、肩に乗ると尻尾で一撃を見舞う。
「イッテー、マジで痛い。」
「キュウちゃんは強いね。」
「キュウ♪」
ライラに誉められ気分が良くなるキュウ。
「ほら、その辺にしとけ。何がしたいんだよ?」
ライラの乾いた笑い。
「あっははは。いや、ライルさんを見つけたから一緒にクエストでもどうかな~って思ってさ。」
「なら普通に誘えよ。でお前達は何のクエストを受けるんだ?」
「勿論、討伐クエストに決まってるじゃん。今回はワイルドボアを狩るつもりなんだ。」
「ワイルドボアか。」
ワイルドボアはEランクの魔物だ。Bランクの俺が受けると他のEランク冒険者達が困ってしまう。俺は掲示板を眺めいいクエストを見つける。
「これなんかどうだ?」
「どれですか?」
俺が取った紙を覗き込むイーサン。
「え~と、オークの討伐か。えっ!?オーク!?これはCランクからのクエストじゃないですか。俺達には無理ですよ。」
「そうか?ヤれると思うぞ?俺も一緒に行くし、このクエストの方が困ってる人が多い。」
「で、でもオークって女の人を拐うって言うし、あ、危ないんじゃ?」
オークと言う事で女性のエミリーは不安そうだ。
「確かにオークは女性が居ると真っ先に狙って来るが無茶さえしなければ、フォローはしてやれるぞ?」
「本当に大丈夫ですかね?」
不安そうに聞いてくるエリック。自分達の力が通用するか心配の様だ。
「まぁ、無理にとは言わないさ。どうする?」
エリックはメンバーの顔を伺っていると。
「リーダが決めればいい。私達はそれに従う。」
「そ、そうですよ。エリックが決めてください。」
「僕もそれがいいと思う。」
「ほら、エリック。仮にもリーダーなんだから決めろよ。」
「おい、誰が仮だ!俺がリーダーだろうが。」
「そう。だからお前が決めろ。俺達はそれに文句は言わないよ。多分。」
最後におどけるイーサンを見て力が抜けて笑うエリック。
「多分かよ、ったくよ。ライルさん俺達を連れてってください。」
あれだけ不安そうにしていたエリックはどこかスッキリした顔をして、頼んでくる。
「いいんだな?」
「リーダーの俺が決めたんですからいいらしいですよ。それに何か有ってもライルさんがなんとかしてくれるでしょ?」
「あぁ、任せろ。お前達は守ってやるよ。」
「全部ライルさんがやらないで、俺達にも出番を残してくださいよ?」
「分かった。イーサンは自分で何とかしろよ。」
「ちょ、ちょっと。勘弁してくださいよ。」
慌て出すイーサンを皆で笑う。いいパーティだ。
◇
一方ラグラでは。
昨日セイルに手伝いは要らないと言われて、ムカついたのでフードを被らず街を
散策しながら人々の声に耳を向ける。
「聞いてると大した話じゃないわね。それにしてもムカつくわ。折角人が手伝ってあげるって言ったのに、あんな言い方は無いじゃない!」
聞こえてくるのは関係ない話ばかりで何の情報も手に入らない事からイライラし、昨日の事を思い出して愚痴を溢す。
「もう予定を早めようかしら?」
ふと市場に目を向けると、自分と同じくフードを被っていないセイルがいた。
見かけたセイルは誰かと喋っている様子。
「セイル何をしてるの?」
「おや、セイラじゃないですか。セイラこそ何を?」
「先に質問したのは私よ!」
「あの~私、邪魔みたいなので帰りますね。」
「あぁ、すみません。エリーさんまた話を聞かせてくださいね。」
セイルが呼んだ名前に驚いてるとエリーと呼ばれた女性はそのまま帰っていった。
「ちょっと此方に来なさい!」
「何ですか?」
セイルを人気のない路地裏に引っ張り込む。
「あんた、昨日あれほど接触するなって言ったでしょ!」
「接触するつもりは無かったのですがね。道を聞こうと声を掛けたら、たまたま彼女だったというだけで少し話をしていただけですよ?」
「絶対嘘。セイルが人を確認しないで声を掛けるなんて事する訳無いじゃない!」
「信頼されてるって事でしょうかね?」
自分の事をよく解っていると思うと笑いが込み上げてきた。
「何がおかしいのよ!」
「いいえ。流石は妹だなと思いましてね。」
「何よそれ。って言うか。あの女の前でわたしの名前を呼んだでしょ。どうすんのよ!」
「先にセイラが私の名前を呼んだでしょ?道連れにしようと思いましてね。」
クッククっと笑うセイルを見てイラついて拳を振り上げる。
「冗談ですよ。エリーさんにはこの首飾りを使い、私達の名前を覚えないように誘導させて貰いましたから。」
「それを先に言いなさいよ!」
揶揄われたのが気にくわなかったのか、振り上げた拳を振り下ろす。
「痛いじゃないですか?そんな妹に育てた覚えはありませんよ?」
「セイルに育ててもらった事なんて無いわよ!少し早く産まれたぐらいでいい気にならないでよね。」
頬を膨らませ顔を背けるセイラがとても可愛く思う。
「ふふっ。とても可愛らしいですよ。」
顔を真っ赤にして両手で殴り掛かってくるセイラから逃げ回る。
「はぁ、はぁ、すばしっこいわね。」
「落ち着きましたか?本題に入りますよ?」
「息を切らせないでムカつくわね。で本題って何よ?」
「はぁ~。首飾りの件に決まってるでしょ?エリーさんに首飾りを使った結果、
効果は出ましたね。ただ、夜の方は無理でしたね。」
「あ、あ、あんたな、何や、やってんのよ。」
落ち着いた筈なのにまた顔を赤くして動揺する。
「これも実験ですよ?どうやらケビンさんが首飾りを使ってエリーさんと関係を持ちましてね。その事がエリーさんの婚約者の人にバレて別れてしまったそうですよ。」
「サイテーね。そのケビンて言う男は。」
「そうですね。その婚約者さんとは幼馴染みで、街の人からも好かれる人だったみたいですね。婚約者さんはエリーさんの事を最後には許したそうですよ。」
「首飾りで誘導されたのが分かった訳じゃないのに、よく許したわね?」
婚約者の気持ちが解らないセイラは考えてみると、その男は馬鹿じゃないのかと思った。
「で許して貰ったエリーさんはまだ婚約者さんを愛してるみたいでしてね?
裏切る行為に関しては首飾りが効かなくなっているのですよ。これは面白いですね。」
セイルの悪い癖だ。興味が出てくると直ぐに実験をやりたがる。
これには困ったものだ。予定を早めようとしたが、これでは予定より遅くなってしまう。
もう暫くはラグラに居る事になりそうだと思うとため息が出る。
「はぁ。この悪い癖さえ無ければね。」
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