暗躍。
人気が無く暗い路地裏で男と女が喋っている。
「そっちはどんな感じなの?」
「此方はいいデータが取れましたよ。使いやすい男ですからね。」
「そう。私の方は中々見付からないわね。本当に、ここにいるのかしら?」
「さぁ?私はそちらには関与してませんから。情報を手に入れたら、渡しますよ。」
「よろしく頼むわ。もう少し探して駄目ならリスロに向かうわ。」
「私もこの街でやることは終わったのでリスロ迄付き合いますよ?」
「そしてくれると助かるわ。一週間後にまた会いましょう。」
「分かりました。それじゃ私は酒場にでも行って情報を集めてみますね。」
男は女と別れ、酒場に行く。
男が酒場に入りエールを頼み、周りの声を聴いていると。
「おい、あんた。」
「おや、ケビンさんじゃないですか。どうしました?」
「どうしたもこうしたもあるか!」
「落ち着いて、此方で話ましょうか。」
ケビンが興奮してるので男は人がいない席に移動する。
「で、何かありましたか?」
「この首飾りが使えないんだよ!」
「首飾りがですか?どうして?」
「此方が聞きたいぜ。エリーを誘うのに首飾りを使ったのに、効かなかったんだよ!」
「フーム。以前、使った時は効果があったんですよね?」
「あぁ、その時は効果はあったんだ。それにギルマスにも使えたんだからな。」
ギルマスと言う言葉に反応を示す男。
「ほぅ、ギルマスには通用したんですね?首飾りを見してください。」
「ほらよ。」
男が座っている席に首飾りを投げる。男はそれを受け取り観察をして、何やら笑っている。
「何が可笑しいんだ!」
「いえ、この首飾りは壊れてませんよ。ですが少し此方で預からせて頂きますね。」
「ちょっと待ってくれ。Aランクになってから、討伐クエストが俺にばかり指名で入って来てるんだ。今それを持っていかれたら困る。」
「首飾りが無くても渡した剣がありますよね?それで何とかなるのでは?それとも、やれる自信が無いと?」
「ば、馬鹿にするな!俺はAランクだぞ。出来ない訳無いだろ。」
「結構、預からせてもらいます。私はこれで帰りますね。」
「おい、早く返せよ。」
「えぇ、そんなに時間は掛かりませんよ。」
男は酒場を出て自分が泊まっている部屋に戻る。
部屋に戻った男は首飾りを取り出し、再度観察をする。
「面白いですね。ここのギルマスはケビンと違って、その実力はAランク。
そのギルマスにも効いたとは。気になるのは、エリーという女性ですね。どうやって首飾りの効果を無効にしたのか?」
男は楽しそうに考え込んでいる。
「ねぇ、セイル。一人でニヤニヤして気持ち悪いんだけど?」
「おや、セイラですか?盗み聞きとは趣味が悪いですね。」
「ちゃんとノックはしたわよ。気付かないセイルが悪いのよ。」
「確か、鍵が掛かってた筈ですが?」
「ノックしたのに出ないセイルが悪いのよ!」
セイルはセイラに何を言っても無駄だと悟り話題を変える。
「で、私に何か用ですか?」
「探し物の話よ。何でもリスロでそれらしいのを見たとね。」
「成る程。明日にも向かうのですか?」
「いいえ、確かな情報ではないから、最初話した通りでいいわ。」
「そうですか、それは良かった。私が作ったこの首飾りをもう少し調べてみたかったので助かりますよ。」
「それって、ケビンて言う男に渡した首飾り?」
「えぇ、中々興味深い話が聞けましてね。」
セイルはケビンから聞いた話をセイラに聞かせる。
「へぇ~。それは面白そうね。」
「でしょ?そのエリーとか言う女性に接触したいものです。」
「面白いけど、騒ぎに為ることはやめてよ?」
「う~ん、しょうがないですね。その女性の身の回りを調べる位にしておきますか。」
「そうね、そして頂戴。くれぐれも本人に接触しないでよ?」
「分かってますよ。私も騒ぎは起こしたく有りませんから。」
「ならいいわ、で調べたらケビンって男に返すのかしら?」
「まさか!ここでは大して調べる事が出来ないのに、返す訳ありませんよ。それにあの男はもう用済みですしね。」
「いいの?剣、渡したままだけど?」
「これまでデータを集めるのに協力したくれたので、あれくらいはいいでしょう。それにあの剣は使いすぎると剣が持つ熱で少しずつ、劣化していきますからね。」
セイラは剣が劣化していくのを聞いてホッとする。
あの剣も首飾り同様セイルが作ったもので、かなり強力な剣であったが作った本人が失敗作だと認めている。しかし、いくら劣化していくと言っても強力なのは間違いない。少し勿体無いと思うがセイルは自分が失敗した物には頓着しない性格なので諦める事にした。
「どうかしましたか?」
「いいえ、凝り性の兄を持つと大変だと思っただけよ。」
「そうですか。私もお転婆な妹を持つと大変だと思ってますよ。」
「何よそれ。こんな可愛い妹に言う事かしら!」
「自分で言いますか?まあ、セイラらしいですけどね。明日はエリーと言う女性の身辺でも調べますかね。」
「私も手伝った方がいい?」
「いいえ。セイラに手伝ってもらうと、失敗しそうなので止めて貰えますか?」
「あっ、そう。次から何も手伝ってあげない。」
「はい、そうして貰えると助かります。」
「もうー何よ!泣き付いてきても知らないんだから。」
セイラは力一杯ドアを閉めて部屋を出て行く。
「やれやれ、これで静かになりますね。ここに居る間に少しでも首飾りを調べますか。しかし、首飾りが戻らないとケビンさんはどうなるのでしょうね?」
ケビンのこれからを考えると楽しくて、しょうがなかった。
首飾りは無くなり、剣は劣化していって使えなくなる。
どんな最後になるのか。醜く生き抜くのか、それともあっさりと死ぬのか?
それを考えると後一週間位でこの街を出て行くのが少し残念な気がした。
「ケビンさん遠くから活躍を願ってますから!頑張ってくださいね。」
セイルはケビンが活躍して落ちぶれてく様を願って応援する事にした。
「次のリスロで何が起きますかね。楽しみだ。」
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