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絶望

男は森の中を走りながら悪態をつく。

男の外見は銀髪で瞳の色は翡翠色。いつもは後ろ髪を縛っているが走ってきたのでその縛りが解けている。


「ハァ、ハァ、くそ。なんで?なんでアイツなんかと。」


俺は街から出て森まで走ってきた。

木に寄りかかり座って息を落ち着かせ、目を瞑ると嫌でもあの声が聞こえてくる。







その日俺は冒険者ギルドに行き討伐クエストを受けていた。

これでも若いながらもBランク迄掛け上がってきた期待のホープだ。


「おーい、ライル。」


声を掛けてきた男に肩を組まれる。この男は俺と同期の冒険者でランクも同じBランクのケビン、見た目が金髪のロン毛で実にチャラい感じがする男だ。

たまに一緒にクエストを受けている。


「なんだ、ケビンなんか用か?」

「いや、用って訳じゃないけど、今からクエスト受けるのか?」

「当たり前だろ。その為にギルドに来たんだから。お前は?」

「俺は今日は休みだ。昨日はダンジョンに潜ってたからな、ライルはちゃんと休んでるのか?婚約者のえ~と何て言ったけ?」

「エリーの事か?」

「そうそう、エリーちゃんとたまにはデートでもしたらどうだ?」


人の婚約者をちゃん付けか、本当に軽い男にしか見えないがこれでもBランクなんだよな。


「いや、エリーにはちゃんと夜に会っているから大丈夫だ。」

「そうか、いらん世話だったな。で今日はどんなクエストを受けるんだ?」

「今日は討伐のクエストを受けるつもりだ。この辺の魔物も活発化してるしから、間引いた方がいいだろ?」

「どんな魔物をやるんだ?」

「オーガだな。リスロで目撃があったみたいでな、クエストが出ていた。」

「おいおい、リスロってここから半日掛かるぜ?オーガを探し出して倒したとしても、今日中には帰れないぞ!」

「確かに今日中には帰れないが困ってる人はほっとけないだろ?」

「リスロでも冒険者ギルドがあるだろ?そいつらに任せればいいじゃないか?」


リスロにも冒険者ギルドは有るがオーガはBランクのモンスターだ。そして今リスロにはBランクの冒険者は全員出払っている。だからこそ俺のいるラグラ迄クエストが回ってきたんだろう。


「いや、今リスロにはBランクの冒険者が居ないみたいだな。だからここラグラ迄クエストが回ってきたらしいぞ。」

「マジか?そりゃ、ついてないな。クエスト受けて直ぐに行くのか?」

「クエストを受けて一旦戻ってエリーに説明してから行くつもりだ。」

「そうか、気を付けて行ってこいよ。」

「あぁ。ケビンも休みだからって飲み過ぎるなよ。」

「ヘイヘイ、飲まないようにしますよ。じゃあな。」


ケビンはギルドから出ていった。

俺はクエストを受けて家に戻りエリーに今日中には帰れないクエストを受けたことを謝る。

エリーは髪は赤茶色でポニーテールにしている。


「悪いな。今日は帰れそうにない。」

「いいよ。困った人ほっとけないでしょ?私はそんなライルが好きよ。

気にしないで。」

「ありがとう。俺もエリーの事が大好きだよ。」

「でもケガだけは気を付けて行ってきてね?ライルに何かあったら、わ、私。」


涙ぐんで此方を見上げるエリーを抱き締めて背中を擦りながら落ち着かせる。


「ごめんね、もう大丈夫。」

「いや、エリーが心配してくれるのは嬉しいよ。エリーを悲しませるような事はしないよ。」

「うん、行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」


エリーと別れリスロ迄向かう馬車を探すがもう出て行ってしまったみたいだ。

次の馬車は昼過ぎになる。しょうがないのでギルドに戻り明日でもいいか確認しに行くとギルドで馬を用意してくれる。

ギルドに馬を用意して貰うと通常金が掛かるが、リスロが早く来てほしいみたいでその分馬をタダで用意してくれた。


「かなりいい馬を用意してくれたんだな。」

「はい、リスロも不安みたいで早く来てほしいそうです。ライルさんよろしくお願いしますね。」

「直ぐに片付けるよ。」


ギルドから用意してもらった馬を引いて街の門まで行く。


「よぉ、ライル。馬なんか連れて遠出か?」

「あぁ、ちょっとリスロ迄な。」

「かなりいい馬に乗ってるな。」

「まぁな。急ぎのクエストを受けたんで、ギルドが用意してくれたよ。」

「流石Bランクにもなると扱いが違うな。ハッハハハ。」


門で少し話し馬を走らせリスロを目指す。

馬をかなりの速度で走らせてるが、全然疲れた素振りも見せないで走り続ける。


「この調子なら半日も掛からないな。うまく行けば今日中に帰れるかもな。

そう都合よくオーガが見つかるわけもないか。」


馬を走らせ途中に乗るはずだった馬車を追い抜き、二時間位でリスロに着く。

門番にギルド証を見せ、リスロのギルドに行く。

ギルドに着き馬を馬小屋に預けてギルドに入り受付嬢の元に行く。


「すまない、ラグラでクエストを受けたライルだか、オーガの情報がほしいんだが?」

「は、はい。此方の部屋でお待ちください、直ぐにギルマスを呼びますんで。」

「わかった。」


受付嬢は二階に上がってギルマスを呼びに行くと、直ぐに部屋に入ってきた。

入ってきた人物を見ると耳が尖っていて髪は翡翠色で腰位まで伸びている。

ここら辺では見ないエルフがそこにいた。


「ギルマス此方がラグラから来ていただいたライルさんです。ギルマス聞いてますか?」

「あぁ、すまない。え~と。」

「ラグラから来たライルだ。」

「私は此処でギルマスをしているソルシャだ。今回リスロ迄来てもらって感謝する。」

「いや、気にしないでくれ。早速で悪いがオーガの情報を教えてもらえるか?」

「そうだな。では説明させてもらおう。今回オーガを目撃したのが薬草採取に行っていた新人冒険者だ。リスロから出て一時間も歩かない場所の奥で見たらしい。」

「見たらしいってその情報は信用できるのか?」

「私は信頼できると思っている。その新人冒険者にはDランクの冒険者がついて色々とレクチャーしていたんだが、用を足しに行くのに離れたとこで見たとDランクの冒険者に報告しに行って戻って来たら居なかったが、オーガが立っていたとされる場所を見ると、人にしては大きな足跡があり、何かを引きずった後が残されていた。大きな獲物を引きずったみたいな痕がな。」

「なるほど。だがそれではまだオーガと断定出来ないな。もしオーガ以上のモンスターだと俺には手が余るぞ?」

「もしオーガ以上だと確認したらそのまま戻って来てほしい。その時は討伐クエストから調査クエストに切り替えて報酬を出せそう。どうだろうか?」

「そうしてもらえると俺も助かる。オーガを見たのは一体か?」

「そうだ。新人冒険者が言うにはな。オーガは群れから外れない筈だ。この辺ではオーガの目撃はないからはぐれオーガだと推定している。」

「わかった。この後直ぐに森に行こう。オーガなら早く仕留めた方が安心出来るだろ?」

「すまない、助かるよ。」

「なに、此方も早く終わらせて婚約者の所に帰りたいしな。」

「そ、そうか、婚約者がいるのか。」


急に落ち込むギルマスどしたのだろうか?変な事はいってないつもりだか?


「じゃあ、その森に行ってくる。」

「あぁ、頼んだぞライル。」

「任せろ!」


ギルドを後にし馬小屋で馬を受け取り、門で手続きをし街を出て森に向かう。


「この森だな。流石に中までは乗っていけないな。悪いが此処で待っててくれよ。」


森の中まで連れていけないので馬から降り木に縛ってここで待っていてもらう。

馬も俺の言っていることが分かるのか首を縦に振り頷く。


「いい子だ。帰ったらうまい飯を用意させるからな。」


ヒヒーンと嬉しそうに鳴く。人の言葉を理解してるみたいだ。

馬と別れ森の中を注意して進むと何かを引きずった跡を見つける。

引きずった跡を見るとそれほど時間が経ってないように思われる。

引きずった跡はそのまま続いてるので音を立てないように進むとそこに猪であろう物を生で食べているオーガいた。


「よし。間違いなくオーガだな。しかも食事中とはついてるな。」


オーガは食事に夢中なのか此方に気付く素振りもない、武器も手元に無い。

かなりのチャンスだ。此処は慎重に行かないとな。

まず俺は魔法で身体強化をし足には風魔法によるスピード上昇を掛ける。


「よし、準備は整った。行くか。」


背後から忍び寄りそこから一気にスピードを上げてオーガに接近する。

スピードを上げて近づいた音に気付き後ろを振り返り剣のクレイモアを取ろうとするがその時に目の前まで近づいていたので剣でオーガの右腕を切り落とす。


オーガは叫び声上げて左手でクレイモアを持ち剣を振り下ろしてくる。

振り下ろされた剣よりも早くオーガの懐に入り剣を突き立てそのまま回転するように腹部を斬って直ぐに距離を取る。

オーガはまだ生きていたが膝をつき最早瀕死の状態だ。いくらモンスターだと言えどもこのまま放置し死ぬの待つのは不憫なのでオーガに近付き首を跳ねて止めをさす。


「これでクエスト達成だな。ギルドに戻るか。」


馬を繋いだ場所に戻って乗りリスロに戻る。

門番にギルド証を見せなかに入れてもらいギルドに行き中に入ると、受付嬢が此方に走ってくる。


「どうでしたか?オーガ以上のモンスターでしたか?」

「オーガで間違いなかったぞ。証明のオーガの角だ。」

「す、すごい。こんなに早く見つけて討伐できるなんて!」

「たまたま運が良かっただけだ。クエストの達成の手続きをしてくれるか?」

「は、はい直ぐにしますのでギルド証を出してこちらの部屋でお待ちください。」

「あぁ、頼む」


ギルド証を受付嬢に渡し教えてもらった部屋で待っているとノックがした返事をするとギルマスが部屋に入ってきた。


「すまない、助かったよ。ありがとう。」

「気にしないでいい。何も俺じゃなくてもギルマスでも討伐出来ただろ?俺よりも強そうだしな。」

「確かに私が出れれば、良かったのだかこれでもギルマスとしての仕事が在るからそうそうギルドを留守に出来ないんだよ」

「そうか、ギルマスも大変だな。ギルマスになる前はなにランクだったんだ?」

「なにしがないAランクだよ。」

「すごいじゃないか!Aランクは中々見ないぞ。まだ現役でも行けるんじゃないのか?」

「冒険者は続けられるが少し疲れてね。辞めようかどうか迷っている時にここの元ギルマスに冒険者やめるんなら、ギルマスになってほしいと、お願いされてね。気が付いたらギルマスになっていたよ。」


ソルシャと喋っているとドアをノックされたので返事をするとさっきの受付嬢が来て手続きが完了したとの事。ギルド証と報酬の金貨五枚を受け取りソルシャには丁寧にお礼をされまた顔を出してほしいと言うのでまた顔出すと約束をしギルドを後にする。


日の入り迄後二時間位か。門が閉まるまでは四時間、行きと同じスピードで帰れれば今日中に帰れるな。


「悪いが帰りもよろしく頼むな。」馬を撫でながら言うとブルルルっと返事を返す様に鳴く。



帰りも行きと同じ位でラグラに着き門の前で馬から降りて並ぶと直ぐに自分の番が来た。


「あれ、ライル?今日は帰って来れないんじゃなかったのか?」

「上手く要ったんでな、今日中に帰ってきたんだよ。」

「そうか、良かったな。お前さんの婚約者も喜ぶだろうよ。」

「そうだな。」


ギルド証を出して街に入りギルドに報告をしに行く。

ギルドに入ると受付嬢が気が付いて此方に近寄って訊ねて来る。


「あれ?ライルさん何かありましたか?」

「クエストを達成したんでな、報告に来たんだ。」

「ほぇ~もう終わったんですか?流石ライルさんですね。」

「今回は運が良かっただけさ。」

「いやいや、運だけじゃあこの仕事はやっていけないですよ。ではギルド証を出してください。手続きしますから。」

「いや、手続きは向こうで終わらせたから、報告をしに来ただけだ。」

「分かりました。またお願いしますね。」



ギルドを後にし家を目指す。

辺りは暗くなり人々が行き交い、活気がある。

真っ直ぐに家に戻ろうとしたが、何かエリーに買っていこうと思い付き雑貨屋に寄る事にした。


「いらっしゃい。おや、ライル珍しいもんだね。あんたがウチの店に来るなんて!」

「エリーに何か買っていこうと思ってね。何か在るかい?」

「エリーにね。ならこの首飾りなんかどうだい?昨日仕入れたばかりの代物さ。」


出された首飾りをよく見てエリーに似合うか考えると、よく似合っている気がする。


「じゃあそれを貰おかな。幾らなんだ?」

「そうさね、銀貨4枚たがライルには世話になったから、銀貨3枚でいいよ。」

「いいのか?別に銀貨4枚でもいいぞ?」

「いいんだよ。早く帰ってエリーを喜ばせてやんな。」

「あぁ、ありがとう。エリーも喜んでくれるだろ。」



雑貨屋を出てエリーが待つ家に帰る。

家の前まで帰ってくると部屋に灯りが着いた居なかった。


「おかしいな?いつもなら晩飯時間ぐらいの筈なんだが。何処かに出掛けているのか?」


家に入ってみると人の気配を感じたので気配を辿って行くとそこは寝室だった。


「エリー具合でも悪いのか?」


ドアを開けようとすると中から声が聞こえる。


「あっあ、あん………」


それはエリーの声だった。なんだ何が起こっているんだ?頭の中は???

混乱してる俺、まだ声が聞こえてくる。


「ケ、ケビン」

「エリー」


えっ?ケ……………ビ……………ン?頭の中が真っ白になる。エリーの声が………

ケビンの名前を呼ぶ、なぜ、なぜケビンが?

エリーの為に買った首飾りが手から落ちる。ゴトッ、音がして我に帰ると部屋に居る二人が物音に気付く。


「なに?なんの音?」「なんだ?」


二人の声が聞こえた瞬間に家から飛び出す。

街に居たくなくて森を目指して走り続ける。途中に門番に声を掛けられるが無視して街を出る。



森の中迄走ってきて足が止まる。



「ハァ、ハァ、くそ。なんで?なんでアイツなんかと。」












一応ザマァを予定していますが私自身もどんな風になるかわかりませんが楽しんでもらえるように書いていこうと思います。誤字、脱字があれば指摘してもらえると助かります。

感想など有ればよろしくお願いします。

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