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そして少年は魔王となった  作者: 中盛りご飯
1/1

そして少年は少女と出会う

初めての投票です。拙い文章ではありますが、足りない脳みそを捻って書いた小説です。

見込みアリ、と思う方は最後まで読んでいただければ幸いです。

貧民街で僕は生まれた。


両親は僕がいい年頃になったときには既に亡くなっていた。


頼れる親戚や知人はいない。地域が地域なだけあり、近所の人間は少しでも己が得をしようとする狡い奴ばかりだ。


「この生活、もう面倒くさくなってきたな」


今日も街の外へ出て、食糧を確保し、食って、寝る。


単純な行程を繰り返している。


ボロボロの空き家に一人で暮らすようになってから、どれくらい経つのか忘れるほど、長く住んでいる。


「貧民街ってのはどうしてこうも損しかないのかね」


雇われたい一心で王都に足を運んでも、貧民街出身という肩書きにより門前払い。


仕方なく大変な狩りや採取を続けても度々、帰宅途中に近所の連中に集られ脅され殴られて、成果の半分を持っていかれる。


家は手入れをしないからみるみるうちに老朽化していく。


食っていくのに精一杯で、何か新しい事に手を出してみようという気力は微塵もない。


「神様ってのは本当に酷いな。僕みたいな奴の一人や二人、助けてくれてもいいじゃないか」


ぶっきらぼうに言葉を吐き捨て、ベッドに横たわる。


「もうこんな人生嫌だな」


眠りにつくことにした。



目が覚めたら、見慣れない天井がそこに広がっていた。


寝ぼけているのだろうか、それとも疲れが蓄積しすぎたのか。


とりあえず体を起こそうとする。


が、僕の体は全く動かない。


もしかしてもう死ぬのだろうか?


それならそれでいいな、疲れきってたし、もう人生に終止符を打ってもいいだろう。


「あーあ、目覚めちまったじゃねーか、お前魔法手抜いただろ?」


「いくら痛覚操作の魔法を施してるとはいえ、こんだけ長時間やってたら目も覚めるのは当然よ…」


突然聞きなれない声、見慣れない男女二人組の姿を確認したと同時に、全身に経験したことのない激痛が走った。


しかし、だ。


痛くて痛くて叫びたい程の激痛なのに、声が全く出ない。


「しょうがねぇなぁ。俺が薬注入してる間に、催眠魔法か痛覚操作の魔法をかけといてくれ」


「嫌よ、あの魔法詠唱長くて唱えるの面倒なんだから。それに口封じの魔法はまだ効いてて、うるさく騒がれないんだからそれでいいでしょ?」


女が魔法使い、男は科学者か何かだろうか、僕にひたすら魔法や薬を施しているらしい。


痛みはどんどん増してくる。


あぁ、神様、あんまりじゃないか。


僕は頑張ってるから、他の奴らとは違って加護を授かってると思ってたのに。


どうして僕がこんな酷い仕打ちを受けなきゃいけないんだ。


最後まで貧民街出身として、苦しめって言うのか?


……憎い。


神様を心底恨みながら、痛みに苦しみながら、ゆっくりと気が遠くなっていった。



気がつくと、全身を巡っていた痛みは引いていた。


男女二人組の姿は見えず、声も聞こえない。


実験が終わったのか、それとも一時休止してるのか。


ともあれ、今が抜け出すチャンスなのではないか。


体は動く、が四肢を鎖で繋がれている。


うーん、どうやら実験により筋肉量は増えているようなのだが、力技では抜け出すのは不可能らしく、力を振り絞っても抜け出せない。


魔法はどうだろうか。


素質のない僕だが、今なら使えるのでは……


と、思ったが、いくら魔法を施されても、使える様にはならないようだ。


ま、実験体が逃げ出せるくらい強くする馬鹿な科学者はいないか。


目を閉じ、力を抜いて、考える。


これからどうなるのか、とか、別のやり方があるんじゃないか、なんて事は今考えても仕方がないし一度やめる。


問題なのはこの腐った世の中だ。


まず国王だが、民の安全を常に考える、人望厚き人物だと王都の人間は言っていた。


だがどうだ?


少なくとも僕らのような貧民には手を差し伸べず見殺しにしているではないか。


王都の人間も僕ら貧民を見て、それを知ってるにも関わらず、見て見ぬ振りだ。


見捨てられた貧民は、皆が皆狡い訳ではない。


僕や一部の人間は街を出て食糧を確保している。


しかし、食糧を確保する能力がない者は奪うという手段しか残らない。


加えて、貧民街の人間を攫って、こうやって人体実験として使う者、奴隷にして売り捌く者と、悪業を働かせる奴もいる。


次に国の魔物に対する対応。


王が過去に必要以上に魔物を刺激したせいで、主に三つの問題が問題視された。


一つは魔物の凶暴化。


二つは凶暴化した魔物が町を襲撃。


三つはそれにより経済が不安定になり、盗みや殺しを働かせる者が大量に現れた。


負の連鎖だ。


「こんな所さっさと抜け出して、この腐った世の中を創り直さなければ」


あ、声も戻って……


「面白い奴だ。私と手を組まないか?」


女の声が聞こえた。


しかし、魔法使いの女とは違う声だ。


「私と一緒に来るというのなら、その鎖を解いてやっても構わないぞ」


「何で俺をスカウトするのかは知らんが、まず名を名乗れよお前」


突如、僕の全身に激痛が走る。


「口の利き方には気をつけろよ。しかしその態度の大きさ、気に入った」


激痛が収まるとともに、四肢を繋いでいた鎖が一斉に解ける。


体を起こし、声のする方を見ると、そこには綺麗な人間の少女が佇んでいた。


「私は魔王の娘、リサだ。あんたを魔王にしたくてスカウトしに来た。さ、名乗ったからお前も名乗れ」



「僕は名前なんてとうの昔に捨てた。よって名乗る名なんてない。んで、質問したいことが山ほどあるんだが」


「名無しか…ますます気に入った。なぁ、後で詳しく説明するから、まずは私についてきてくれないか?」


うわ、なんか面倒くさそうなタイプだ…てか綺麗な容姿に反して口悪いなおい。


「納得する説明を頼むぞ」


リサと名乗る少女の後に続き、僕は部屋の出口へ向かった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしよろしければ、ご意見やご感想お聞かせください。

投稿ペースは遅めだと思います、すいません。

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