【短編?】俺を追放した奴らの鼻をへし折り、ざまぁをする会
短編ですが、三万字ほどもある長さです。
お時間にご注意ください。
【2020年追記】二年前の作品なので、正直、今より文がうまいとは言えません。(率直。笑
「お前とはここでお別れだぜ! どっかでのたれ死ねよ! じゃなかった、のたれ死ぬなよ。プッ。お前弱小だからな!」
「もう目の前にこないでねっ、荷物持ちさん」
「はあ……。やっとこんなもっさいのとお別れですわね」
「やだぁ。がっかりしてるのぉ? 髪黒すぎて顔色わかんなぁい」
大きなギルドの広い一階。
耳障りな嗤い声が響く……とまではいかなかった。ここは広い上に冒険者達がたくさんいる。嘲笑は響かず、人ごみに吸収されていた。
その一角でなにやら仲間はずれ、またはいじめをしている者たち。
一人は、楽しそうに下卑た嗤いで別れを告げた男。
一人は、へたくそなウインクをして、荷物呼ばわりした女。
一人は、自分の髪をいじくりながらため息をついている女。
一人は、舌ったらずな話し方の女。
いわゆるハーレムパーティーであった。しかも、感じが悪そうだ。
対する黒髪の男性は、ハーレムパーティーの男に、別れを告げられていた。
彼は道中、服装が貧相と馬鹿にされつつ、荷物もちをさせられていた。
この町に入ってすぐとった宿に、持ってきた荷物を全部置けと命令された。
このギルドに行く際、くすくす笑う四人のあとについていくようきつく言われた。
そして、ギルドに着くやいなや大声で罵られ、別れを宣告されていた。
ハーレムパーティーは、追放相手が追いすがってくるのを期待したのだろうか。だが、放心しているように見えたので、とっていた宿に一度戻ることにしたようだ。
「お前の分の宿はとってないからな! あとはひとりでなんとかしろよ! Gランク!」
「くすくすっ。うちらBランクのパーティーの汚点がやっと消えるねっ」
「ふん。Bランクの私達と、ここにこれただけでも感謝してください」
「もぉ。うけるぅ。底辺は、底辺としてぇ、がんばぁ」
彼らがこのように大きなギルド内で、大声で黒髪の男性を罵ったのは理由がある。
『こいつ、Gランクで使えない冒険者です』
という印象を与えたかったのだろう。
意気揚々でギルドを去る彼ら。
周りの冒険者達は彼らを、奇異な目で見たり、完全無視したり、様子を窺い、疑問に思った。
もうすでに悪目立ちしている。だが、黒髪の男性はそれで構わなかった。
こんな大勢が集まるところで、Bランクにもなった者がGランクを大声で馬鹿にする。この事実が彼には必要だった。
そして別れを告げられた彼は、そろそろここを出ることにした。印象付けはこれくらいでいい。
あのハーレムパーティーが、大声でGランクといっていたから、声はかけづらいだろう。だが、物好きはいるものだ。
「お待ちくださーい」
物好きの行動は早かった。このギルドの受付嬢が引きとめたのだ。
「なんだ? 宿を探したい。手短に願いたいな」
「あ、それでは単刀直入にいいますね。今パーティーから離脱されたようにお見受けします。実は新しいパーティー候補があるのですが、……女性はお好きですか?」
受付嬢から声をかけられ、カウンターに移動したはいいものの。この質問である。
「…………女性を嫌いな男性はいないと思うんだが。いや、頭すっからかんの女は好かんな」
先ほどのケラケラと嗤う馬鹿丸出しの女達のように。と言外に言っている。
「頭と性格は個性的。顔は美人も、かわいいも、きつい系も、癒し系も揃いぶみ。腕は結構たちます。女性五人パーティーです」
最初の『頭と性格は個性的』の部分にひっかかった彼だが、続く女性人数に嫌そうな顔をしていう。
「…………俺は、ハーレムパーティーは遠慮する。さっきの見てわかるだろ。それに、最初に言っておくべきだったな。パーティーを組む気はな……」
「く、黒髪! 男性のきみ。…………お願いします! あんなパーティー忘れてうちにきてください!」
パーティーを組む気はないと言いたかった男性は、一人の女性にさえぎられた。
いやもう一人いた。女性二人組が彼の後ろに目を輝かせて立っていた。
「あ、これから説明するところだったんですよ。邪魔しないでください。ややこしくなります」
「ええぇ! わたしたちのパーティーに紹介するつもりだったんだよね? ね?」
「そうですから。落ち着いて待ってください。……両側からはさまない」
受付嬢が落ち着けといっているそばから、彼の両脇を女性二人が固める。
一人は兎の獣人。長い耳に尻尾がある。元気であわただしい印象だ。彼の左腕を掴むばかりか、二の腕にふくっとしたほっぺまでくっつけている。耳が彼の顔にあたりそうだ。
もう一人は、肌が黒めで髪は銀髪。ダークエルフだった。年上の魅力を前面に押し出しているのだろうか。彼の右腕にぴっとりとくっつき、なかなかなサイズの胸が当たっていた。
一人は必死に、一人はしっとりと。ぜったい離さないぞといわんばかりだ。
「こんなお二方ですが、他の三人も含めて良い方々ですよ。先ほどのパーティーより、きっとあなたに合うでしょう。少し皆さんで話し合ってみるといいと思います。あぁ、宿も紹介してもらうといいですよ」
「ええ、ええ。仲間と一緒にお話させてほしいわ」
ダークエルフが艶やかな笑みをうかべる。
「皆さん。いくら女所帯だからといって、くれぐれも無礼な振る舞いだけはしないように」
気が急いているような女性二人に、きちっと釘をさしておく受付嬢。目は笑っていなかった。
「も、もちろんだよ」
それを聞いて、受付嬢は黒髪の彼に向けていう。
「では。過剰に触られたり、不愉快な思いをしたらすぐ私に言ってくださいね。別のパーティーをご用意しておきますから」
気に入らなければ、ほかのパーティーも紹介できる、遠慮せずに来てほしいと告げる。
「パーティーは組ま……」
「そんなことしないよ!」
彼は、単独の活動を希望したが、先ほど同様に声をかぶせられた。
「では、この紙も持っていってください。加入する際は記入してこちらに持ってきてくださいねー」
そして受付嬢は、兎耳の女性に紙を渡した。なぜなら彼は両側を女性二人に拘束され、両腕ともあいていないからだ。
ついさきほど、馬鹿パーティーの件が終わったと思ったら、今度は女性二人に連行されている。
両手に花の男性は、流れに身を任せることにした。
宿も探してくれるというし……。それに見つからなければ、一日くらい外で寝てもいいだろう。
●○○○○○
「じゃーん。ここがわたし達みんなで借りている家でーす」
兎の獣人娘は、元気よく建物を紹介した。
長く同じ町で活動している冒険者は、仲間内で家を借りていることが多い。
そして、ギルドから歩いてすぐ近くだった。
「どうぞ。入ってー。……カイチョー!」
「なぁんだ……よ…………」
そこにぬぅっとあらわれたランニングシャツに短パンの金髪の女性。金髪は寝癖がついている。
「…………ん?」
「お客さんだよー。待ちに待った黒髪の仲間!」
彼は「まだ仲間じゃない」といったが、またも女性の悲鳴にかき消されてしまう。
「……えっ…………えええええ! 先にいっとけよ!――――こんな格好じゃ恥ずかしいだろ~~!」
女性は廊下を走り去っていく。着替えに戻ったようだ。
「あ、あはは~。どうぞこちらに」
「お茶を淹れてくるわね」
獣人の女性はそのまま彼を案内し、ダークエルフの女性はキッチンであろう場所へ向かった。
獣人の女性に連れて行かれたリビングには、ふたりの先客がいて、お菓子を食べていた。だがこちらが入ってくると、お菓子を持ったまま大慌てで、羽をぱたぱたさせて飛び上がる。ふたりとも妖精族だった。一人はカーテンの陰、一人はソファの後ろへ。
「ちょっと。失礼でしょ!」
怒る兎獣人。それを聞いておずおずと元の場所に戻る二人。妖精族は妖精族でも少女の体型だ。手のひらサイズではない。
しかも顔が似ている。双子だった。ただし見分けは簡単につく。一人は髪が青っぽいのに対し、もう一方は薄い赤だからだ。
「あ、自己紹介まだだったよね! あ、でも、もうちょっと待ってくれるかな? カイチョーが揃ってからでもいい?」
「別にかまわん。が、カイチョーとはリーダーと同義か?」
さきほどから疑問に思っていた単語を聞いた。
「あっ。そう! リーダーのこと。パーティー名に関わるからその点もあとで……」
そこにようやく件のリーダー(カイチョー)がやってきた。先ほどと違って身なりがきちんとしている。お茶を持ってきたダークエルフも一緒だ。
「おい、来るなら来るでもっと前から言えよ。こっちにも準備というものがあるんだ」
「……俺に言われてもな。なんなら一度出よう。後日でもかまわん」
パーティーのリーダーは、黒髪の彼に文句をいったが見当違いだ。来たくて来たわけでもないので、早々にお暇することにした。
「カイチョー! わたしたちが無理をいって来てもらったんだよ。追い出すようなこといわないで。ほかのパーティーに取られちゃうよ!!」
「そうよ。謝ってちょうだい」
兎耳の彼女は、ここで帰ってもらっては困ると退室を阻止。ダークエルフは、自身の淹れたお茶を飲みながら謝罪を求める。
「え。そうなん? ご、ごめんな! いつもと流れが違ってて……。他のパーティーのところに行く前に……えーとそうだ。活動内容を…………」
「自己紹介が先だよ」
他のパーティーに取られてはたまらんと焦るリーダー。そこに突っ込みをいれる兎耳。
「え~。ウホンっ。私が『黒髪を愛でる会』カイチョーのジャスミン・フルールだ。主に近接戦闘担当。あと治癒魔法が使える」
まず自己紹介したのは、カイチョーであるエルフ。パーティー名が『~会』だからリーダーをカイチョーといっているらしい。
「……一度聞いていいか。『黒髪を愛でる会』がパーティー名ということか」
「おお。そうだぞ!」
黒髪の彼は、『黒髪を愛でる会』という名前に疑問をもった。だが、彼女達は誰一人として不思議に思っていないようだった。むしろパーティー名に反応してくれた! と目を輝かせ、感激しているように見える。
「……そうか。いや続けてくれ」
文化の違いかもしれないと思い立ち、先を続けさせた。
「次はわたしね。わたしはミミ! 弓使いだよ。」
先ほどから彼が逃げないよう、引っ付いていた兎の獣人。弓は現在もっていないが、弓を引く動作をする。
「私はカレン・リュシー。攻撃魔法が得意よ。火魔法、氷魔法、土魔法が使えるわ」
そういったのは、ミミと一緒にギルドからここへきたダークエルフ。彼女の銀髪はゆるいウェーブになっている。
「キーカ・オリン。おどる」「ラーレ・オリン。おどる」
最初に発言したのは髪が青いほう。次に発言したのは髪が薄赤いほう。妖精族の双子だった。
「おどりは敵を弱らせる」「おどりは味方を元気にさせる」
踊りを極めたものは、敵には能力を下げる効果、味方には能力を上げる効果が期待できるという。彼女らはそうとうな踊り子らしい。
「私たちは全員Aランクなんだ。主に魔物の討伐をしている」
リーダーがランクをいうと、皆自身の登録者カードを出した。全員きんぴかだった。
「ふ。なるほど。確かにやつらよりは、ずっと腕がたって俺に合っている……な」
次に自己紹介する男性の様子を、全員が見ている。視線がいたいはずだが、当人はあまり気にせず自身の名前をいう。
「ラクネオだ。ラクネオ・コンジュシ」
「ラクネオさんか。よろしく…………ん? ラクネオ……コンジュシ…………?」
リーダーエルフは何かにきづいたらしい。
「ま、まさか……あ、あのラクネオ・コンジュシ、さん?」
「え、カイチョー知ってるの? Gランクの人だよ」
「はぁ?! Gランク? ――そんなバカな!」
兎獣人はまだ気づかなかったが、他のメンバーは今のでわかったようだ。代表してダークエルフが聞いた。
「あ、あの……。冒険者カードを見せてもらってもよろしいかしら……?もしかして、本当は……Gランクで……」
「ほれ」
「Gランクではないのでは?」といおうとした矢先。彼が見せたのはきんぴかのカード……いや。彼女らが持っているものより少し色が違う。しかもカードの表面にランクが記されている。
――――冒険者ギルド Sランク登録者 ラクネオ・コンジュシ――――
「え、え、Sランクぅぅ!?」
ミミが盛大に驚き。
「やっぱり」「Sランク……」
双子妖精は目を釘付けにしていた。
Sランクの人数は少ないほうだ。自分達はAランクで、Sランクはその次に上のランク。だが、AランクとSランクの壁は厚いといわれている。GランクがFランクに、CランクがBランクになるのとでは大違い。自分達もAランクになって数年経っているがまだSランクに到達できそうにない。
「やっぱり……きみは……いや、あなたは……。西の、カパダ・ダンジョン踏破者だな。……ですね」
相手が自分達より上の、Sランク冒険者と認識して、敬語が混じるリーダーのエルフ。彼が有名なのはSランクに加えて、一人でダンジョンを踏破した者だからだ。この町よりずっと西の、いくつも国を越えた先にあるダンジョン。そこの最少人数攻略者として記録に残っている。
「で、でもなぜ……? それならどうしてパーティーから追い出されたの……? Sランクを手放すなんておかしいわ。それにあの人たちGランクって……」
カレンとミミは、あのギルドで大げさな追放劇を見ていた。黒髪だったから声をかけようとしたけれど、Gランクだからどうしようかと二人で話していたのだ。受付嬢が話しかけているあいだに、ランクで決めるのではなく、彼の黒髪を重視しようと声をかけた。
「え? 何かあったのか」
ジャスミンから聞かれたカレンは、話しづらそうにした。本人を目の前にして、いう話ではない。
「俺はさきほど、この町に五人で入ってな。来た早々、そのアホなハーレムパーティーに追い出されたわけだ。もっというと――――」
ラクネオが自身から説明する。ミミとカレンはうなずき、たまに補足する。
「感じ悪かったよ。あいつら、黒髪もバカにしていたような雰囲気だった」
「そして、やたらとBランクを強調してたわね」
そもそもギルドに追放劇場だけをしにきたようだったのだ。
「……え、いろいろと……どういうことだ? ……ですか?」
まず、この町では普通といわれているBランクを鼻にかけている点。
現在この町の冒険者ギルドはCからAランクの人数が多い。居丈高にBを主張しても、「はいそうですか。頑張ってね」くらいだ。アーリズの町のBランクたちは、Bランクを一つのステップと認識している。次のAランクが本命なのだ。だから目標のため日々精進している。決して鼻高々に言うことではない。
「あ。わかったわ。あのギルドでのことは、演技だったのではないかしら? なにかの調査で、犯人のあぶりだしをしていたとか…………彼らはあなたの協力者ね?」
ひらめいたという様子のカレン。
それなら納得できる。Sランクの彼は、どこかの機関から密命をおびて来ていたのだ。該当者を見つけ出すために、大げさな演技をした。
――――しかしそれなら、自分達は邪魔をしたことになる……。
「はは! あいつらがそんな演技派に見えたか? どうみても本気でいってただろ。それにあんな馬鹿は俺の協力者にしたくない。そんな裏を読まなくてもいい。あいつらは本気でBランク最強! と思い、俺を愚弄し、罵倒してさよならといったのだ。……そうだな、あの時どう思った? あいつらの印象だ。おそらく不快だっただろ」
「それは……確かに不愉快ね。私たちの町はGランクもいるもの。それに皆Gランクから始めるのよ。私たちだけでなく、他の皆も同じく不快だったのではないかしら」
「ああ。そうだろう、そうだろう。…………俺は目的を持ってここへ、このアーリズの町へやってきたんだ。……そう、俺の目的は…………」
女性五人は彼の言葉を聞き逃さないようにした。Sランク冒険者の真の目的……。ごくりと喉が鳴る。
「俺は…………。あのハーレムパーティーが、ざまぁされるところをじっくり見るために一緒に来たんだ…………! 俺を『弱い、ださい』となじっていた自己中のバカども! そいつらが都会の冷たい風に当たって、プライドがへし折られるところを見たい!」
およそSランクと思えないあくどい顔であった。
「………………」
ラクネオの吐露した目的を聞いて、一斉にぽかーんとしている五人の女性達。
この町のダンジョンに挑戦するでもなく、この町近辺の魔物で修行するでもなく。
自身より格下ランクの者たちが、落ちていく一部始終をみたいという……。
――――Sランクらしくない目標だった。
「…………ええっと。よくわからないんだけど、あのパーティーって本人達の言ったことが本当なら、Bランクなんだよね? ラクネオ……さんはSでしょ。ギルドにいたときにそのカード見せたらよかったんじゃ……。いやもっと前にその機会はあったような。そしたらすぐその人達はへこむと思うけど……」
わざわざこの町に来てまですることだろうか。と、ミミは疑問を投げかけた。
「あの、なぜ向こうはGランクだと思っているのかしら? 弱いと思っているのも不思議だわ。ここへ来るまでに魔物と当たることはあったと思うの」
カレンは頬に手を当てて、ランクや勘違いについて不思議に思う。
「あんたは腕がたつんだろ? ひとりでダンジョン踏破したんだし。一人ずつ頭かち割ればすむことではないか?」
ジャスミンは一番簡単な、しかしそれでは冒険者規約違反になる意見をいった。
「よくわからない」「説明求む」
最後はキーカとラーレが、丸ごと聞いた。
「ふふん。そんなに聞きたいか。しかし、俺は宿をとらねばならん。紹介してくれるのだろう」
「…………いや。すでに私のほうであてがある。……嘘ではないぞ。……Sランクに喧嘩は売らん」
ジャスミンの言葉によって、宿の懸念は解消したラクネオ。持っていた小さめの鞄の中から金貨袋を出した。
「そうか。それならば、ここから聞いたら引き返せないぞ。他言無用だ。……ほれ。金貨三十枚だ。これで口止めさせてもらう」
「金貨三十……」「やっぱり大容量収納鞄……」
金貨三十枚はA~Sランクの依頼内容の価格。
金貨が三十枚らくらく入り、きっとまだまだ日用品も入っているだろう鞄。
一人でダンジョン踏破できた理由が少しわかった。ダンジョンでは長期にわたって滞在する。荷物がかさばるのがネックだが、大容量収納鞄があるならそれは解消される。
「そうだな。どこから話そうか」
彼は自分が生まれた村でのことをかいつまんで説明した。
○●○○○○
ラクネオの村は、アーリズの町からずっと西の、人族しかいない村だった。薄い色の髪の色が多く、髪が黒いというだけでも目立っていた。
「その村では、俺はよくいじめられていた。同じ年頃の子供がいなくてな。近いのがあのあほ四人だ。俺より四歳年上だ」
ラクネオが六歳までは、彼らはしょっちゅう、弱い、細いと罵っていた。四歳離れているのだから当たり前だが、そのうちの男のほうは村の村長の息子で、何をしても許されていた。
「暗くて気味悪い」
「黒髪で気持ち悪い」
「単純にださい」
「女の子に勝てないのは弱すぎ」
言葉の暴力、普通の暴力。こどもだからと許されていいのだろうか。
たしかにラクネオは、黒髪で村では異質だ。
だから村人も、年下に優しくしなさいとはいわない。村長の息子とそのとりまき女子達が、彼をいじめていても注意しなかった。
そして、ラクネオ六歳のとき、村長の息子たち十歳。
十歳から冒険者ギルドに登録できるので、彼らもすぐ登録した。大人からちやほやされ、自分達は強い、冒険者向き! そう思ったようだ。
ギルドはこの村になく、やや遠い町にあった。だからラクネオは、やつらと顔を合わせる時間が少なくなって喜んだ。ただ、それだけでは終わらない。
これを好機と思ったラクネオ。
自身も四年後の冒険者登録のために腕を磨いた。
それを見た親は、どんどん強くなる息子を隠した。……というより、『脳ある鷹は爪を隠す』と教えだした。
『本当に強い奴は、弱い村人にわざわざ喧嘩を仕掛けない。今より大きく、強くなって、ぐうの音も出ない状態になってから、堂々と村を歩けばいい』
黒髪のこどもは目立ってしまう。田舎の村だから。早々に喧嘩をしたら、出る杭は打たれるかもしれない。両親はそう懸念したのか、元々村はずれにあった家のさらに奥で、こっそり鍛えさせた。
あの四人が村に帰ってきても、さらに顔を合わせる時間がなくなって、自分のことに集中できた。
そして十歳のギルド登録時、別の国のギルドで登録した。彼が将来、踏破するダンジョン。それが近くにあるギルドで。
さらに黒髪だと変に絡まれるかもしれないと、髪を隠し、全体を覆うローブを着て、厚底ブーツまで履いて変装した。
「――――そう。これがよかったんだろうな」
ラクネオは十年後、ダンジョン踏破を終えて、住んでいた村を訪れていた。両親に言われたことを思いだして、堂々と闊歩してやろうと思ったからだ。“堂々”といってもあまり身なりのいい服を着て目立ちすぎてはいけない。
村にSランクであると知られれば、『この村でSランク輩出!』と喧伝しかねないと思えたからだ。
それは気持ち悪いので、手持ちで一番質素に見える服を来て村に入った。
「そして俺はとても良い機会に恵まれた。あのバカどもが村を出てアーリズに向かうと聞いたんだ」
ハーレムパーティーは会ってまず、ラクネオの服装が大変みすぼらしいと大爆笑した。性格は十年経って全く変わっていなかった。むしろより悪化し、より傲慢になっていた。
「そ、そんなにボロボロな服を着ていたの?」
「いや、今ちょうど着ている服だ」
「え」
兎獣人の問いに、彼は自身の服装を指差した。
「……上のシャツも下のズボンも」「ダンジョン産……」
いい当てる双子妖精。彼が、ダンジョン攻略者という情報があればすぐわかる。両方薄い生地なのに高価な服。おそらく着るだけで身が軽くなったり、防御によい効果があらわれる服。Sランク冒険者が着るのにふさわしいものだ。
「冒険者はあからさまな防具やらローブを着ているという先入観だろ。俺が身軽なものだから勘違いした。……ついで奴らはこういった」
『ちまたでは、お前と似たような名前の冒険者が、ダンジョンを踏破したっていうぜ。お前は何してたんだよ。どうせまだGランクとかじゃねえの。俺らはBランクだぜ!』
「…………うん……??」
女性五人全員が首をかしげる。先に聞いたのはエルフだった。
「なぜだ。――服のことは仕方ない。勉強不足だな。だが、名前でなぜわからない?」
「ふははは。それはだな。村ではラクネオと名乗っていたが、ギルド登録時はちゃんと、ラクネオ・コンジュシと本名を登録したからだ」
ラクネオの国では、家名を名乗るのは貴族のみというのが常識。
実はラクネオの先祖は、大昔この村にたどりつき、そのまま村人となったという経緯がある。その先祖は家名を持っていた。かなりの年月がたったが、ラクネオは家名をきちんと受け継いでいる。だが村で名乗っていたら目立つ。この村では、本名を伝えないと罰則があるというわけではない。だから目立たないよう先祖代々隠してきた。だが、冒険者ギルドの登録の際は、偽名を使ってはいけない、省略しても駄目。発覚すれば登録資格剥奪だ。だから規約どおり本名をカードに刻んだ。
「それに、おそらく十年間、変装してギルドに顔を出していたのよね。ということは、ダンジョンを踏破した人物は、今の姿のラクネオさんではない。そういう認識ね」
「そうだ。……やはり、あいつらより話しやすいな。全部言わなくてもわかるというのはいい。まあ、ろくにしゃべってもいないがな」
とりあえずそのときは村人もいる中だし、うつむいて、胸元から適当な銅板をひっそり出した。G~Eはブロンズのカードだ。パーティーのリーダーが嘲笑し、「本当にGだった」とあっさり勘違いをしてからかった。
そのときすでに彼らへの「ざまぁ」を考えていたラクネオ。
ハーレムパーティーに、こっそりついていくことにした。
だが、そのハーレムパーティーは、またも自分達の首を絞めることを提案する。自分の優越感を満たすためだろう。
「お前も一緒に行こうぜ! 俺達が道すがら鍛えてやるよ! ははは」
そういったのだ。
「え……。なんで断らなかったんだ? それこそこっそりついて行くだけでいいだろ? または先について待ち構えていればいい」
ラクネオの性格の悪さに、すでに敬語がとれたリーダー・ジャスミン。
「あいつらの優越感を増大させてやろうと思ってな。Gランクが近くにいたほうが、自分達のほうが偉いと思うだろ。そして後々自分達と一緒にいたGランクが本当はSランクだった。と気づく。……そのときのあいつらの顔がみたいんだ。それに一緒に行ったからこそ、あの馬鹿馬鹿しい追放劇までやってくれたのだ。ははは!」
「………………」
およそ有名冒険者に見えない顔つきだ。それを見て、女性全員黙りこくる。
「荷物持ちとしてついていったが、俺にはあの程度の荷物なんの問題もない。全く疲れなかった。それに荷物を見れば、そいつの性格がおのずとわかるというものだ。まぁ、武器も預け出したときは、さすがにどうかしていると思ったがな」
それに近くにいてよかったこともある。……あの四人は相当弱かった。
ハーレムパーティーの村長の息子は、力だけが頼りの戦い方で、足は遅いし、すぐへたる。力任せでぶんぶん振っても、敵が動いているから当然当たらない。
斥候だと思われる女は、正直どこが斥候かというくらい雑。魔物が視認できる位置にいるのに気づかない。ドタドタとやかましく走り回る。
回復役だろう女は、自分の足が疲れたといってすぐ自分を回復。魔物と遭遇したときには、すでに魔力が足りず使い物にならない。
魔法使いにみえる女は、呪文をいって発動させるはずが、舌っ足らずなせいで二回に一回は不発する。
「正直こんな俺でも、ざまぁは考えようと思ったな……。しかし旅をしていると、やはり日々むかつくものだ。アーリズで盛大にかますことをあきらめなかった」
そして『アーリズに着く前に死んでは、大きなざまぁにならない』と考えたラクネオ。
ハーレムパーティーが、死なない程度に手伝う。
バカリーダーが当たりやすいように魔物を転ばせた。
「もちろん何度も当たらない様を見てからな」
やかましい音を立てられる前に、指をさして「あ、あそこ」といってあげた。
「当然何回かは無視して、魔物に襲われるのを見たとも」
休憩中のお茶に、魔力回復ポーションを混ぜた。
「お茶は俺が淹れた。下手くそを装って淹れたから、苦味とえぐみが出てたな」
舌っ足らずは直らないので、当たるまで魔物の動きをとめた。
「ファイアーアローが『パイ・アーン・アホー』に聞こえたときは吹きそうだった」
そうした助けがあるにも関わらず、すこしもおかしいと思わないようだ。
「すべての成功が、全部自分達の実力の賜物だと思ったようだった」
ますます図に乗るハーレムパーティー。そしてやっとアーリズに着く。
「あ、ちょっと待って。ここに来る前にたくさんの町に寄るでしょ。門番に身分確認を見せるときすぐバレるよね」
「入国のときは、お腹痛いとか、疲れたとかいって、先に行かせるんだ。いなくなってから、門番に普通に登録カードを見せる。そのあとが重要だ。『俺のことは誰にもいうな、密命により調査中だ』と、金貨を押し付けるんだ。しゃべって、ヤツを逃したら責任はお前が取ることになる、とな」
さきほどのダークエルフが予想した、調査隊を装ったようだ。
「なぜアーリズ?」「ほかの町でもいい」
ラクネオのいた村(国)からこの町まではかなり遠く、大きな町も二、三通っているはずだ。
「そうだな。やはり最終目的地のアーリズが一番村から遠いのが理由だな。近ければ知り合いがいるかもしれないし、尻尾を巻いて逃げ出しやすい。その点この町は、味方が誰もいないし、恥を掻いたからといって村に帰りにくい。プライドが高いから、成果が実るまでこの町で頑張ろうと思うだろう。だが上手くいかない! という魔のサイクル!」
「……でも、Bランクよね。うまくいかないといえる?」
この町はBランクなら普通に倒せる魔物がたくさんいる。意外とうまくやれるのでは、とカレンは計画破綻を指摘する。
「それがな。やつらは実際Bランクではある。が、実力はよくてD。頑張ってもCランクといったところだ。話を聞くに四人で村を出る前は、村長の息がかかった強めの者二名と組んでいて、おんぶに抱っこだったようだ」
「それでも四人で頑張っているということは、何とかなる力があるということでは?」
ジャスミン達は、冒険者だ。六名が四名になる大変さを知っている。
「他の二人を追い出した理由の大元は、村長の息子が女の子三人とだけで旅をしたかったからだぞ」
「………………」
実力もない、二人減る意味もわからないパーティーだということだ。
「えっと、最終目的はどのへんなのかな。ラクネオさんの予想だと村にはなかなか帰らないってことだよね。その間、延々と見ているってこと? せっかくアーリズにきたのに……時間の無駄じゃない?」
「ふむ。そうだな。まず最初のざまぁを見てどの程度、やつらがやらかしてくれるか……。ここまでの旅で、やつらの言動や行動原理、弱点を見るに、最初のざまぁは近い。…………一回鼻っ柱が折れれば、見ても同じパターンで飽きるかもしれないな。ふむ……俺の気が済めば、ダンジョンに入るのもいいな」
「おお!」
やっとダンジョン踏破者らしい言葉を聞けて安心する五人。
「いや、踏破を考えるほど無謀ではないが……」
アーリズの町の南東にあるダンジョンは、巨大にして高難易度、複数パーティーで挑んで、やっと踏破できるとされているダンジョンだった。
「ねぇ! じゃあさ、じゃあさ。ラクネオさんのその……『ざまぁ?』に付き合うから、わたしたちのパーティーに入ってよ!」
「え! おいおい、こんなのに付き合うってか」
ミミの発言にとまどうリーダー。さっきから聞いていて、性格の悪さに頭を抱えていた。
「いいじゃん! ラクネオさんをバカにするってことは、黒髪をバカにしたってことだよ! カイチョーはくだらなそうにいうけど、こっちだって黒髪の男性をメンバーに入れる動機は、似たようなものだよ」
「う……」
そういわれると返せない、といった顔だ。
「そういえば、お前達はなぜ黒髪にこだわる?」
「………………」
全員で目配せをする五人。咳払いをしてからジャスミンがリーダーとして話す。
「私ら『黒髪を愛でる会』は、黒髪男性をパーティーに招きいれ、一緒に活動することを目的としている! この国に大昔いた王様は、黒髪の男性だったんだ。その方と似た人と、いっしょに冒険したいのだ!」
目的について熱く語るジャスミン。
「ん? この国の王様は、ハーレムパーティーでも作ってたのか」
「違うよ。そうじゃなくて……その王様のような外見の人と、一緒にパーティー組みたいんだよ。わたしたちその方のファンなんだ!」
この場にいる女性陣全員が、コクコクとうなづく。
件の王は、冒険者としていろいろな場所やダンジョンを巡っていた時期がある。彼女達はそういった資料を調べて、かの王が歩いた地を自分達も見て回った。そしていつの日にか自分達も、黒髪の男性を招いて、一緒に魔物を倒したり、ダンジョンに行ってみたい――――。そう思うようになった。
つまりただのミーハーである。
「俺も大概だが、お前達もよくいえたものだな。そういうことなら俺はお役御免だ。その王様とやらがどのような人物かは知らんが、ここまでひねくれてはいないだろ」
(ひねくれている自覚はあったんだ……)
皆が思う間に、今度こそじゃあなと席を立つラクネオ。
「わあ! まってえ! わたしたちだって知らないよ。ずうっと前に亡くなってるんだから! ……ただ、物語で知っているだけなんだ。だから、外見が似ていればいいというか……。黒髪であればいいというか。あ、失礼なこといってるよね。ごめん……」
しゃべればしゃべるほど、失礼に失礼を重ねているミミ。しかし、しおらしい態度をとりつつ、逃してなるものかと腕を引き、ラクネオをのけぞらせる。
「んふふ。そうね。私達の理由も他の男性から見ればささいで馬鹿馬鹿しいかもしれないわね。…………ね、ラクネオさん。そのパーティーにぎゃふん? ざまあ? をしたいのであれば、私達はおあつらえ向きだと思わない? あちらは女性三人だけど、こちらは五人もいるのよ」
カレンもメンバー入りに乗り気だ。ラクネオがのけぞっているせいで、彼女の胸だって彼の胸板に乗っている。顔が近い。
「手伝うのいいと思う」「一緒に戦ってみたい」
キーカとラーレは、やっと黒髪男性が仲間になるというチャンスを逃したくなかった。こちらは彼の足に片方ずつ、腕も足も巻きつかせる。
「弱いものいじめはどうかと思うが、黒髪を愛でる会として捨て置けん。……しかし、あからさまなものはよくないと思うぞ……?」
まさか袋叩きではあるまいな、と聞くジャスミン。残念ながら囲まれたラクネオには、もう空いている場所がなく、彼女は正面から聞くのみ。
「あからさまにやっては、こちらがランク落ちになるじゃないか。だからな、いろいろ考えてきた」
これだけの女性に絡まれるも、次々に引き剥がすラクネオ。
冒険者ギルドの規約には、冒険者同士の暴力沙汰を禁止した項目が多々ある。だから、それに引っかからないよう、やらなければならないと伝える。
両手が空いた彼は、自分の鞄からいろいろな『ざまぁ』の方法について記されたものを出した。何十個もあって、五人全員げんなりした。
○○●○○○
彼らは町にきたばかりで、まだ調子に乗っていた。
「Bランクの俺様たちなら、あっという間に名声が広まるぞ!」
「まーたどこかのお家で、ごちそうになったりしてねっ」
「贈り物ももらえるかもしれないですね」
「あたしたちぃ、Bランクですぅ。よろしくぅ」
なんたってBランク。押しも押されもせぬBランク!
以前活動していた地域では、Bランクが一番上で偉かった。Aランク以上がいなくて、他はCランク以下。ここアーリズの町だって、Bランクは特出していると思っている。
そして彼らのいう、ごちそうや贈り物は、このパーティーのリーダーが、村長の息子だということに由来する。
つまり、今まで村の息がかかっているところにしか、行ったことがない。それはとても狭い行動範囲だった。
そもそも彼らは、なぜこの町に来ることにしたのだろう。
それは彼らがある日、生家のある村でこんな情報を聞いたからだ。
『ラクネオ・コンジュシなるSランク冒険者が、カパダ・ダンジョンを一人で攻略した。単独踏破は新記録!』
「…………これさ。むかーしいた、よっわいヤツと同じ名前じゃね」
「似てるけど違うよっ。しかもSランクになれるわけないじゃんっ」
「家名があるから、貴族ですね。あんなちびっこが踏破なんて無理です」
「今ぁ、なにやってんのかなぁ? 冒険者やっててもぉ、Gランクから抜け出せなかったりしてぇ」
そういって、四人で下品に嗤った。
しかし、似たような名前でも気に食わなかったらしい。リーダーは無謀な旅に出ることに決めた。
「じゃあ、俺様たちはもっと巨大で踏破が難しいダンジョン行こうぜ!」
そして周りの女性達も止めればいいのに、皆乗り気になった。
「んじゃさっ。アーリズってところのダンジョン行こう!」
「賛成(です)(ぇ)!」
村長の息子とそれにくっつく女性たちは一斉に賛成した。
それを聞いて、年上二人は止めた。そのときはまだ、彼らの仲間として仕方なくついていた二人だった。
明らかに実力不足であることを言ったが、リーダーはそれに腹をたてて、二人をパーティーからはずした。
「俺様たちBランクだから大丈夫なのにな! これだからおっさんは臆病で困る。これで心置きなく、本当の仲間だけで冒険できるぜ!」
そう、本当の仲間だけで。
しかも自分たちだけなら、旅の間は好きにキャッキャッうふふができると考えていいた。
年上二人はその後一度も、彼にも、彼の父親にも「危ないから思いとどまるべきだ」とは伝えなかった。心ある大人なら、せめてあと一回は注意したかもしれない。しかし面倒だったのか、話を聞く耳を持っていないのを知っていたからか、以降一切口を出さなかった。
当日村人や近隣の皆が、彼らの見送りに来ていた。晴れやかに、とても喜んで。
いつも宿代を半額にさせられている、隣村のおかみさんはこういった。
「次この町に帰ってきたときには、誰もがたたえるような武勇伝にあふれているだろうね。いや、そういった活躍がないかぎり、帰ってこないつもりなんだね」
しょっちゅう贈り物を要求されている、店の主人はこういう。
「今よりずっと上のランクに上りつめるまで、帰ってこないって聞いたよ。俺は見たことないが、どこかにはSSランクという存在も、いるらしいじゃあないか」
なにかあると、すぐおごれと圧力をかけられている、料理屋の店主はいった。
「アーリズの町のダンジョンに行くとはのぉ。一パーティーだけで踏破したことはないらしいぞ。君達だけでいけば記録に残るのぉ」
期待されている!!
おめでたい彼らは、いい意味にしか捉えられなかった。
そして、忍び寄る黒髪の青年。パーティー全員、彼が誰だかすぐにわかった。
四人は旅にでる動機となった彼を見て、笑いが止まらなかった。久々に見たが、背は当然伸びているけれど、腕っ節があるようには見えない。着ている服もペラペラで、お金もなさそう。
かわいそうになったし、自分達Bランクの素晴らしさを教えてやる、いい機会だと思った。一緒に来るよう誘ったら、ほいほいついてきた。
――――対する青年は当然、先ほどの村人や近隣住民の話を聞いていた。言葉の裏もよく理解している。別に彼らを助けるつもりはない。だが、この会話でいろいろ計画を練れた。黒髪の青年は、運が味方していることに喜んだ。
そしてとうとうこの日より、彼念願の『ざまぁ』が始動する。
次の日、『黒髪を愛でる会』はギルドに来ていた。
結局、ラクネオは仮でこのパーティーに入ることにした。
彼は彼女達が『ざまぁ』を手伝う様子を見る。彼女達は『ざまぁ』をする間に彼の実力を見せてもらうことになった。正式に入るかはその結果から決めることにした。
ちなみに、あの時テーブルに置いた金貨三十枚は、ラクネオの元に戻った。仲間の秘密を守るのは当たり前だからお金はいらない。それでも気になるのなら、パーティーのお金として、ラクネオが預かったらいい。という流れにしたのだ。
昨日、彼女らのパーティーを紹介した受付嬢に、用紙を渡す。
「よかったです。加入ですね。――カードお預かりします」
登録者カードと、カウンターにある魔道具と、書いた用紙を見比べているようだ。
「パーティー名も変更ですね。ええと……『俺を追放した奴らの鼻をへし折り、ざまぁをする会』…………」
受付嬢が不思議な言語をいうように、長いパーティー名をいう。
「え、なんだそれ! 聞いてないぞ! てか、あからさまなことはしないって言ってただろ! モロだよモロ!」
エルフは驚いて怒鳴った。
「なぜ俺が黒髪を愛でねばならん。こんなパーティー名では誤解される」
「パーティー名に不服があるなら皆で決めようよ……。――――ごめんね、パーティー名は前のままでお願いできる?……もしかしてもう上書きされちゃったとか?」
兎獣人は、ラクネオの行動の早さに呆れた。受付嬢に変更を無しにするよう伝える。
「大丈夫ですよ。文字数オーバーなので、新しいパーティー名にはなりません。したがってそのままです。今度変えるときは、短くお願いしますね」
受付嬢として、不思議なパーティー名を何度も見てきているのだろう。特別驚きもせず、不審に思いもせず、変更する際の規定の文字数をいっただけで終わった。
「はい。カードお返しします」
返却されたカードをしまうと、後ろから声が聞こえた。
「はあ、なぜもっさいのがここに? 邪魔ですわ」
「おい、受付嬢。この依頼受けるぞ。どけよ弱者が」
例のあほどもが、割り込んでくる。ミミは何かいってやろうとしたが、ラクネオにまだ早いと諭された。
結果、ラクネオたちが追い出されたのかというと……。
「いえ、あなた達のほうがお邪魔です。こちらのカウンターは横入り禁止です。列にお並びください」
そういって、列の後ろへ行くよう注意したのは、受付嬢のほうだった。確かに列ができている。
「おいおい。どんなに並んでいても、俺様達が優先なのが常識だろう?」
「もぅ。はやくぅ」
自分達独自の常識を振りかざすばかの集まり。
「どこの常識かは知りませんが、うちはうち、よそはよそです。もう一度いいますね。――横入りは、ここのギルドでは、禁止と、なっております」
最後はよく聞こえるようにゆっくりと染みこむようにいっていた。
あほどもはそれでも続けようとした。
だが、後ろから舌打ちが聞こえ、別方向から「早くどけろやボケェ!」と罵声が響く。列に並んでいた次の応対者に、通りすがりざまに肩をぶつけられ、カウンターからはじき出された。
ばかども集団のリーダーはそれでもいい返そうとして、体格のいい冒険者と気づき、悪態をついて去っていった。
その光景を見たミミは、隣にいる人物の顔を見て――。
「顔」
と嫌そうにいった。幸運なことに、仲間全員で死角を作っていたようで、彼女達にしか見えなかった。
――――さて、ここは草原である。風の音しかしない、静かな草原だった。
先ほど、ばかの集団が横入りしてきたときに、依頼書を盗み見て、それがいそうなところにやってきたのだ。その依頼書は、魔物討伐依頼の内容だった。
ちなみに、ただ来たわけではない。パーティー加入のとき、討伐依頼もついでに受けていたのだ。そして対象の魔物は違えども、たまたま生息地が同じだった。ちょうどいいと思い、草原で待つラクネオ達。だが――――。
「おいおい、どこにいるんだ。まさか違う依頼を受けたのか? それとも、生息地を勘違いしているのか?」
いくら探してもあのパーティーはいなかった。今度は見張りなり、後ろから尾けるほうがよさそうだ。
「上から見たけどいない」「ラーレたちの獲物もいない」
双子妖精が、飛んで全方位を探したがいない。
「いないんなら、わたしたちは先に、この依頼の魔物倒しに行こうよ。って、ん? いないの? わたしたちのも?」
「いない」「静か」
「なんだろう。依頼書のミスかな。それともどこかのパーティーが先に倒しちゃったとか?」
ここは草原だ。影になるものなどあまりない。
「これは…………。いるな」
え、何が? そうミミがいおうとしたところで、遠くから何かが吼える声。
――――グゥオオオオォォ!!
「も、森からだよ! なんだろ聞いたことない声だ!」
ミミが自慢の耳を縦にぴんっと立たせて、仲間に聞こえるように大声でいう。
「近くまでいってみるぞ」
ジャスミンがただ事でないかもしれないと、現場に近づくことを指示する。
「まだバカを見つけてない。お前達で行け」
「……っ。あっちこそ今の声で来てくれるかもよ?」
ラクネオが非常事態のくせにまだこだわる。とりあえず適当にいって、引っ張った。声がしたほうへ皆で行くと、近づくにつれて足音が大きくなる。
「発見!」「大変だ!」
飛んで偵察に行っていたキーカとラーレ。羽どころか、手足もバタバタさせて大慌てで帰ってきた。二人の声が合わさった。
「「キングトロール!!」」
○○○●○○
「……なっ。キングトロールだと! 急いで町に戻るぞ! 進行方向的に町に向かっている」
急ぎ町へ戻り、ほかの冒険者達と合流して、魔物を倒す算段をしようというエルフ。
「そのキングトロールが近づいてきたから、他の魔物が逃げたということか。――よし。俺は逆に町から離れて、あのばかどもを見つけに行こう。追い立てられた魔物を追って、すでに遠くにいるかもしれん」
しかし、単独であの集団を見つけるというラクネオ。
「え、そ、そんな。気づいたからには私たちも戦うべきだわ」
キングトロールは、城壁さえも壊せる凶悪な魔物だ。拠点の町の平和を脅かす魔物は放っておけない。ラクネオも一緒にくるよう諭すダークエルフ
「さっき町の警戒の鐘が鳴っていただろ。向こうで倒すはずだ」
だとしても人数が多ければ、その分被害は少なくすむ。だから戻りたい。
「あ、そうだ! ラクネオの何個か目の『ざまぁ案』にあったじゃん。例のパーティーでは絶対倒せない魔物を倒して、町で称賛される。それを見せ付けるってやつ! キングトロールを倒したらそれに近いよ。現に今、城壁周辺は人が集まっているはず!」
仲間(仮)になってから、名前に『さん』は入らないといわれていた兎獣人。必死にラクネオの意識を、キングトロールに向かわせようとして、頭をめぐらせた。仲間から賛嘆のまなざしをもらう。
「おお。それはいい。では十六番目の『ざまぁ案』を取り消し、五番目の『ざまぁ案』を進めよう」
「よ、よし! では一旦町に戻るぞ」
何番目の『ざまぁ案』だろうが、どうでもいい! ミミ、ありがとう! ――――そう、顔にありありとかいてあるジャスミン。次の言葉に絶句する。
「何を言っている。このまま直でキングトロールへ向かうぞ」
「は、はああぁ?」
女性全員の声が合わさる中、ラクネオが続ける。
「今から戻ったら町全員でキングトロール狩りになるだろ。そうなるとあのアホどもに見せ付けるどころか、ちょっとの働きにしか見えん。よって俺たちだけで倒す」
「無理よ。少なくとも、Aランクパーティー三組がかりで倒すのがセオリーよ」
ラクネオの無茶ぶりに、常識を教えるカレン。
「はぁ……。お前達。そんなことでは、極上のざまぁを見ることはできないぞ」
ため息をつきたいのは彼女達のほうで、『極上のざまぁ』というのがさっぱりわからない。
「大体なんだ。まるで自分たちでは、キングトロール一匹倒せないみたいではないか。さっき見せてもらったが、この六人であれば問題なく倒せるぞ」
さっきというのは、自分達の依頼の獲物を探す際に遭遇した、別の魔物を倒したときのこと。彼女達の実力を見せてもらったのだ。
「ほら。早くたどりつかんと、町からの弓攻撃の射程に入るぞ。最悪味方の弓が頭に当たる。急げ」
「あ、あのさ。わたしたちだけで倒せるってのは? わたしら普通のAランクなんだよ?」
しょうがなく一緒に走る六名(内二名は空中飛行)。Aランクでも十分、十二分にすごいのだが、いかんせんキングトロールだ。不安しかないので質問する。
「まず、Aランクパーティー三組で倒すという理由。それは、三方向に分かれて戦うことで、魔物が不用意に動かないようにするのが目的だ。町に向かわないようにおさえるためな」
「おぉ、そうだな」
「そして、なるべく早く倒したいから複数パーティーで倒す。そうでないと、町にやつが向かうのを、そうそう押さえていられない。だが、その場から動かなければ、時間をかけて戦えばいい。時間をかけられるのであれば、この六人だけで何も問題はない」
『何も問題はない』――――。事もなげにいうラクネオ。頼もしく見えるのが不思議だ。
「だけど……おさえるってどうやる?」「まるで戦ったことがあるみたい……」
トロール種自体大きい魔物なのだ。名前の上に『キング』がつくと、さらに大きい上に力が強い。動きは鈍いが、普通の種類より速いので注意が必要だ。
そして、さきほどの説明から一度戦ったことがあるようだった。
「アーリズの町では、あまり知られてないのか。キングトロールはカパダ・ダンジョンにボスで出てくる。そして、おさえるのは簡単だ」
そういって、自身の鞄から上に着るものと、武器を取り出した。武器は彼の性格がよくあらわれているものだった。
○○○○●○
アーリズは城壁で囲まれている町だ。
城壁上には急遽、弓など遠距離攻撃ができる者達が並んでいた。城外には五パーティーが、それぞれの仲間と固まっている。まだ遠目に見える巨体が、一定距離まで来て、射程内に入るのを待っていた。その後ろには騎士が町を守るように並んでいる。
「どうにか間に合ったな。いまから仕掛けるぞ」
「ほ、本当にやるんだな」
さっきまではラクネオの装備を見て、勝てるかも! と思ったエルフ。しかし、巨大な魔物を間近に見てやっぱり人数が少ないのではと尻込みしている。
「何も問題ない。さっき流れを伝えただろ。しかもキーカとラーレの踊りで全員能力が底上げされている。――――感覚でわかる。やるな二人とも」
説明時には真面目な顔をしていた双子だが、最後の一言で二人ともほっぺをすこぉし赤くした。
ここに来るまでに全員、心の準備と戦闘準備をし、双子の能力上昇をうけていた。二人で、皆が暖かくなるような踊りを披露。強くなる効果を付与した。
「よし、ミミ。お前のするどい弓を味わわせてやれ。ただし狙いすぎて目を駄目にするなよ。売れば高いんだからな」
「わかったよ! じゃあまずは手!」
仲間が握りつぶされる心配を、取り除いておきたいから。そして、大きな岩や木を町に飛ばされないようにしたいから。
びゅっ、ビュシィッッ――――!!
――グオオオォォォォゥ――――――!
見事命中。粘ついた泥の色をした魔物が、大声で鳴き、巨体が歩きづらくなってふらついた。
「いいぞ! 二本とも実に正確だ。ちょうど側面と手が交差したところを狙ったな。縫い付けられているぞ」
トロールは人型なので歩くときは、腕を振って歩く。のそのそとゆっくり。トロールが横を通過するのを狙った兎獣人。手と太ももが交差する瞬間をねらって打った。手のところと腕の部分に一本ずつ。腕は骨に当たると貫通しにくいが、見事縫い付けていた。
この奇襲が始まったら、本当に自分たちだけで戦うことになる。ミミは先陣をきることに不安があったが、ラクネオの一言で、すこし気を明るく持とうと思えた。
「次。カレン。周りの木に引火しなければ、盛大に胴体を燃やしてかまわんぞ! 肉は食えんからな」
「ふふふ。そぉれっ」
ゴオオォォ――――!
火魔法。火でできた矢。
あの舌っ足らず魔法使いの魔法と、比べ物にならない。あのヘロヘロの火の矢と比べるのは失礼だ。火の矢というより炎の槍。胴体にぶちあたった。
「おお。すごい勢いではないか! しかも木に燃え移らないとはな」
「この距離なら炎の調節は簡単よ」
ダークエルフの得意な魔法であり、調節しやすい魔法。火の粉が木に飛び散りそうになれば、飛び散った火だけを消すことなどたやすいもの。
火を浴びてうずくまるキングトロール。このチャンスを生かして、飛び掛るエルフ。
「よしっ! もらった!」
サシュッ。
腰を曲げて苦しがり、首が届きそうな位置にきたので、迷わず首を狙った。だが避けられて胴体にあたり、しかも傷が浅かった。そこに、縫いとめられていないほうの腕が、ジャスミンをぶん殴ろうと振りかぶる。
「しま……っ」
後ろに後退して避けよう。しかし、それでも間に合わないと考えがよぎった瞬間。
ひゅっ――、ビシィィッッ。
鞭が風を切った音を出して、キングトロールの腕を捕まえる。
「いきなり首を狙うのは別に悪くない。だが、こいつも追い詰められているから、必死に抵抗する。注意しろ」
この太い鞭はラクネオの武器だ。最初これを見た女性陣は、彼の人格にとてもよく似た武器だな、と変に感心した。
「すまない……」
鞭で魔物を固定している様子を見てジャスミンは謝るが、ラクネオはそれほど気にしていないようだ。
「戦闘前にいったはずだ。時間をかけると。キーカ、ラーレ。このデカブツを弱らせろ」
彼の持つ鞭は、ギリギリと音をたてている。キングトロールの腕力はかなりのものだ。だが声を詰まらせることもなく、涼しい顔をしてキングトロールをおさえている。魔物の足が動かせないのは、兎獣人が足の甲にも矢をありったけ射たからだ。矢が貫通して地面に縫い付けている。
「わかった」「おどる」
ラクネオの指示によりまたも踊るキーカとラーレ。羽を動かし、キングトロールの周りを飛び回る。
くるくる回る。まわる。マワル……。
次第にキングトロールの抵抗が弱くなってくる。
グゥッ、ォォオオオ――――!!
しかし、やはりキングとつくだけある。まだまだ余力が残っているようだ。または劣勢を感じて、より本気になったか。
腕を縫いとめていた矢が折れて、片方の腕が自由になってしまった。
「…………片腕を切り落とすところからだな」
そこからが長かった。踊りで味方の能力上昇を再度かけ、弓、魔法で隙をつくり、剣で牽制する。魔物は片方の腕で鞭を掴もうとする。そのときラクネオは、時にすばやく逃げ、時に鞭を腕からはずして、逆に背中を滅多打ちにした。
風を切る音と、魔物を打ったときの音が重い。キングトロールもこのときばかりは、苦しげな唸り声を出していた。
女性陣はこの長めの戦いで、だんだん目を輝かせていた。
“この状態こそ、私達の長年の夢だったのではないか。念願の黒髪男性と一緒に戦っている……!”
この頃には、城壁外にいた冒険者と騎士達が、様子を見に来ていた。ラクネオは、相変わらずキングトロールの身動きを止めつつ、集まった者たちに手を出さないよう注意する。
冒険者たちの簡単なきまりごととして、以下の事柄がある。
『戦闘時、先に仕掛けたパーティーや個人に、その魔物と戦闘する権利がある。戦利品の所有権も、それと戦った者にある。』
アーリズの冒険者達も当然わかっている。
危なそうなら、手を貸そうか聞くのが先。だが、今のところ六人ともピンピンしている。だから、周辺にほかの魔物がいないか、警戒するのに散った。騎士達は、馬車などがこの道に入ってこないよう誘導している。それでも残った者たちは、ただの見学者となっていた。
その証拠に。
ジャスミンが魔物の腕を切り落としたときには、皆で喜んでくれた。
「このまま倒してしまえー」
「あと少しだ!」
そう応援してもくれた。
「ジャスミン。今の一撃は素晴らしかった。さらにこいつが床ペロしたら、顔は傷つけず、首をばっさり掻っ切れ」
「ゆ、床ペロ……? あ、倒れたらってことだな。うっし」
剣を一言でもほめられるのは、いい気分だ。とどめも譲ってくれるようなので張り切る。
ラクネオが再度鞭で固定した腕を、キングトロールの真後ろに向かって引く。もうすでに片方の腕がないから、鞭を振り払えない。カレンがそれを助けるように、魔物の正面からどてっぱらに火魔法をお見舞いする。ミミも膝を弱らせるべく、ラクネオの斜め後ろから膝裏に当たるよう矢を放つ。
とうとう踏ん張れなくなったキングトロールは、後ろに倒れた。
どさあっ。
土煙が舞う。
倒れた瞬間ジャスミンが、キングトロールの首を今度こそかっさばくために剣を振り下ろす。
首が離れるまで、逆光でエルフの顔が見えづらかっただろうキングトロール。見やすくなった頃には、もう首と胴体は離れていた――――。
「………………」
とめどなく血が流れているさまを、見ている六人パーティーと他の冒険者達。
先に声をだしたのは六人ではなく、見学者達だった。
「うおおおお!」
「まじかよ」
「やりやがった!!」
大絶賛の中。パーティー内でも、とうとう声をもらす。
「やった…………やったんだね……!!」
「ええ……。ええ。……そうよ……!」
「やった! やった!」「たおした! たおした!」
「…………うおおおおおぉぉぉ!!」
最後の雄たけびは、止めを刺したジャスミンだった。
それを皮切りに、ぴょんぴょんと跳ねるミミ。
リーダーの肩を抱くカレン。
二人、上空で喜びの舞を踊るキーカとラーレ。
城壁の上で見守っていた者たちも、大歓声をあげていた。
いっこうに起き上がらないキングトロール。その付近で喜びを表している者たち。
この戦闘が勝利に終わったと確信するには十分だった。
町全体の喜びが、彼女達にまで聞こえる。
「ありがとう! ラクネオのおかげだな。私達だけではこんなに上手くはいかなかった」
正直。ほんの少し本音をいうと。こんな根に持つ細かい性格の人物が、本当にダンジョンを攻略した強者なのか? と疑問を持っていた五人。
キングトロールを六人で倒すなんて無謀だ。本当は、キングトロールの強さを知らないのではないか。そう軽く失望した。
しかし、向かう途中で、彼が着だしたポンチョを見て光明がさした。
そのポンチョは、『カパダ・ダンジョン踏破者だけが、着ることを許される』といわれている装備品だからだ。
踏破者以外が着ようとしても、手から滑り落ちていき、着せようとしても肩から滑り落ちるといわれている。
反対に踏破者が着ると、全体的に能力が上がるらしい。全属性の攻撃ダメージも受けにくいとされている。
自分達は当然持っていないが、冒険者として知っている知識だ。
そのポンチョを着て、平気で走っている彼をみた彼女たち。全員同時にやる気が湧いて、士気が高まった。
感動している女性達を前にラクネオは、倒したキングトロールを自身の鞄に入れた。不思議なことに、鞄の口が小さいのにしゅるんと入る。
「やっぱりラクネオは、ダンジョン踏破したすごい人だったんだね!」
つい本音がポロリと出たミミ。
「……おい」
「あ! ごめん。信じてなかったわけじゃないんだよ?」
「いや。そうではない。……いたぞ」
またまた続く失言。しかしラクネオはそこに怒っているわけではなく、何かを見つけたようだ。
「ん、え? まさか……? 例のパーティー……」
まさかこの期に及んでまだ、彼らを追い掛け回すというのか。キングトロールを見せびらかして、終わりでいいじゃないか。証人はこれだけいる。
「いや。そっちではない。俺達の依頼書の獲物だ」
「あら。よかったわ…………え。まさか?」
カレンはさすがに今、相手にするわけないよね、とほっとした。だが続く言葉で、先ほどの戦闘とは関係のない汗を一瞬でかいた。
「そうだ。キングトロールも倒したし、本来の仕事に戻るぞ」
行くぞ! と突然移動するラクネオに、見学していた冒険者達が不思議そうに、または、まだ戦えるのかと感嘆して彼らを見送った。
ジャスミンは、移動しつつ提案する。
「いやいや! キングトロール倒したばかりだぞ! その依頼なら、別に明日でもいいじゃないか」
「だめだ。さっきのトロールは肉が食えないんだぞ。今日の晩飯は肉が食いたい」
まさかの肉を主張しだしたラクネオ。連戦は勘弁したいので、メンバー全員で思いとどまらせる。
「お肉なら帰ればまだ残っているよ!」
「あ、もしかしたら、誰かおごってくれるかもしれないわ」
「疲れたぁぁ……うわぁぁん」「一度帰ろぅぅ……しくしく」
「カイチョー……いや、リーダーとして帰ると決めたぞ!」
それに対しての彼の反応は――――。
「せっかく目に付いた肉を持ち帰らずに何が冒険者か」と説教。
「そんな確約していないものは信じられない」と一蹴。
女の子必殺泣き落とし(普段やらないが、なりふり構っていられなかった)も、彼にはまったく通用せず、向かうスピードは緩まない。
リーダーには、「帰るなら帰れ。俺ひとりで狩ってくる」と単独行動を主張。
しかしそれはできない。
さきほどの件で、町では本日の英雄を、今か今かと待っているはずだ。
あの戦いで止めを刺したのはジャスミンだが、戦闘指揮していたのはラクネオ。さらに彼はキングトロールに力負けしない人物であり、ダンジョン産の装備品に包まれていた。
近くで見学していた冒険者は、それが誰を示しているのかもう気づいているはず。
きっと冒険者ギルドも、これ幸いにと喧伝しているに違いない。
――――町にSランク冒険者が来ている。倒したのは本日パーティーにSランクを入れた『黒髪を愛でる会』だ! ――――と。
そんななか彼をおいて先に帰れば、「功労者を置いて先に帰るメンバー」という冷たい視線が待っている。
だから彼と一緒に帰りたい。いや、帰らなければならない。
それに、もしかしたら――。次の魔物は、彼ひとりではさすがに倒せないかもしれない…………。
だから、彼女達は必死についていった。ぜーはーと疲れはてた顔をして。治癒魔法をかけつつ。だいぶ遅くに彼に追いついた。そのときにはもう、一人で倒してしまっていた。目にも留まらぬ華麗な鞭さばきで、本当に一人で倒してしまった。
○○○○○●
アーリズの町は、沸きに沸いていた。
なんでも普通は数パーティーで倒す魔物に、たった一パーティーで挑んだとというのだ。その者たちが帰ってきた。
それに対するBランク四人のパーティーは、かなり疲れた顔をして町に帰ってきていた。
理由は簡単。「この依頼はまだ早い」と受けさせてくれなかった討伐依頼を、「俺たちはできる!」と何度も豪語して受注。
たぶん森だろうと、ろくに生態を調べず探していた。草原を中心に生息しているのだから、当然見つかるわけがない(ラクネオの予想通り)。
なんとか探し出すも、自分達からどんどん離れていくので、必死に追いかけた。体力が尽きる頃、結局魔物に逃げられ、自分達もどこにいるかわからなくなる始末。
警報の鐘の音が聞こえて、そちらに向かい、次に大歓声が聞こえて町にたどりついた。
彼らはギルドにいた。魔物と戦う実力がないのを棚にあげて、ギルドのせいで討伐できなかった、と文句をいいにきたためだ。
パーティーのリーダーが、大声を張り上げようとした瞬間。
――――おおおおぉぉ!!
本日の英雄達のお帰りだ!
町を救ってくれてありがとう!
感謝感激の声が響く。
リーダーは自分が何かをやっている最中に、中断されるのが大嫌いだった。だから、称賛を浴びている人物に目を向けてしまった。
それは自分達のパーティーの感覚では、絶対に称賛を受けるはずがない人物。
「な、なぜお前が感謝されているんだ。女性ばかり侍らせて! Gランクのくせに」
「そうよっ! Gランクならっ、Gランクらしくしててよねっ!」
「いかさまでしょう。恥ずかしいですわね」
「もっさいくせにぃ。あたしらよりぃ、目だたないでよぅ!」
「…………」
それを聞いた周りの冒険者、ギルド職員、近くを通っていた商人、町の人。
一瞬止まるも、間髪いれず大爆笑がおこった。とんちんかんな物言いをする者たちへの笑いだった。
エルフの予想通り、ギルドや冒険者、騎士までも、ラクネオの件を触れまわっており、もう街中では知らない人はいない。
「あははっ。あなたたち何か勘違いしてない? こちらはラクネオ・コンジュシさん。有名なあのダンジョン『カパダ・ダンジョン』を一人で踏破した冒険者なんだよっ」
大げさな身振りで、本日入った仲間を自慢する兎獣人。
「しかもSランクなのよ。キングトロールを前にしてもひるまないの。ふふふ」
ランクを強調し、ラクネオの腕に自身の腕を巻きつけるダークエルフ。ついでに胸も色気も強調する。
「もちろん、実力も申し分ない! ダンジョンを踏破した豪胆さに加え、戦術も素晴らしかった! 皆も見ていたよな!」
傍から見れば興奮しているように見えるエルフ。仲間にとっては、ヤケクソにしか見えない。
「トロール倒して、すぐ私達の依頼も完遂させた」「しかもひとりで」
少し飛んで彼のそれぞれの肩に手を乗せる双子妖精。こちらはにこにこと笑っておいた。
全員すらすらといっている。
そのせいで、周囲に集まっている人たちは、何も不思議に感じていないだろう。青年の仲間入りを、心から喜んでいるように見えた。
しかし、この流れは彼に叩き込まれた演出であり、演技だった。
いや、嘘は一切言っていないので、演出の要素が強い。
昨晩仲間に入ることが決まってから、指導が始まったのだ。なぜなら、彼は宿ではなく彼女達の家の客室に泊まったから。時間が作れる、これは好都合と流れを教えられた……。
町に入る前も軽くリハーサルをした。その成果がこれである。
「いやいや。疲れただろうからね。彼女達には休んでもらったのです。俺を拾ってくれた恩もあるから」
「……………………」
ラクネオが始めた、さわやか青年の演技と笑顔に、関係者一同なんともいえない気持ちになった。普段の彼は、本当にSランクかと思うほどねちっこいくせに、演技だとなぜこうも輝かしくなるのか。
それとも、『黒髪を愛でる会』だからだろうか。やはり黒髪の青年が優しげに笑うとキュンとしてしまう。
それに町の皆に称賛されるなど、まるで本当に王のパーティーのようではないか――――!
「お前ぇ達の活躍は、俺達がよぉく見ていた! 特等席でな。誰も文句をつけられない、つける必要がない、素晴らしい戦いだった!」
キングトロールとの戦闘を、間近で見学していた冒険者が証言する。
「依頼の魔物退治も見ておった。なにせ見晴らしの良い草原で戦っていたのだからな。城壁の上からよく見えた。あのように余力があるとはあっぱれだ」
騎士団代表として、ギルドに礼をいいに来た騎士が褒め称える。
「――いえいえ。たまたまあのダンジョンで、よく出ていた魔物だったからですよ。あの魔物だからなんとかなったのです。彼女達と力をあわせたからこその、この結果です」
謙遜も仲間を称えることも忘れない。広い懐の持ち主という印象付けはばっちりだ。
「あらあら。その上着はダンジョン攻略したものだけが、着れるというものではなくて?」
「よく見たら全部あそこのダンジョン産ではないですか! カパダ・ダンジョンのコーデとか。我々もやってみたいものですね」
別の冒険者達が気づき、ラクネオの服装に興味を示す。
それを凝視しているあのパーティーは、そういえばあのポンチョも、何度も見ていたことに気づいた。そしていつも「また布の少ない安そうなの着てるー」と馬鹿にしていた。
「それにしてもよかったね。ずっと黒髪男性を待っていたかいがあったじゃないか。こんな素敵なオトコが入ってくるなんて。そうそうないよ。」
ある冒険者は、彼女達がずっと五人メンバーだった理由を知っていたので、よかったねといった。
「えへへ。そうなんだよね~」
当の彼女達は、性格は素敵ではない! と思うものの、さわやかな演技中の男性に寄り添う。目を見開いている集団に、見せ付けるため仕方なく。しかし――――。
「なあにが黒髪だ! そんな気味の悪い色の髪! そんなやつが入ったからって、どうだってんだ! 黒髪は不吉だ。弱者の色だ!」
そこでのけ者にされているパーティーのリーダーが、いってはならないことをいった。
他の人の前だとしても、この差別発言は窘められるものだった。それに加えて彼は、一番聞かせてはならない人達に聞かせ、敵に回してしまった。
「…………なぁにが気味悪いってえ?! あんたたちの先入観が気持ち悪いっての!」
「弱者はあなた達だわ。Bランクが生意気よ。図に乗らないで」
「この国では幸運の色と覚えとけ」「全員ぼうずにするよ」
「そうだな。全員そこから動くなよ? ん~? 面倒だから首から一気にいっていいな? さっきあのデカブツぶった切った、この・剣・で!」
さっきまで、性格のねちっこい男に狙われて多少かわいそうかもしれない、と思っていた五人。一瞬で考えを改め、『黒髪を愛でる会』の敵対集団という位置づけにした。
あまりの威圧感に、ばかものパーティーもたじろぐ。
「まあ待て」と、止めるもの。
悪口をいったほうに、「ひがみをいうならどっか行け」と、いうもの。
「おめえら終わったな」と、この展開を面白がるもの。
一触即発だった。
そんな中、ギルドの外から声がした。
「お~い、君達! 今夜はウチで食べていきなよ。もちろんタダさ」
ギルドへは人ごみで入れなかった、料理屋の店の主人。ギルド内の雰囲気がわかるはずもなく。窓から手を振って大声で夕飯に誘う。
「よろしいのですか。ありがとうございます」
演技継続中のラクネオが、笑顔で答える。すると周りの女性達の怒りの炎が縮んだ。
「あんた達~。このアクセサリーをもらってくれ。何十年前にもキングトロールが襲ってきたことがあってね。そのときは大変な被害だったんだ。今回も覚悟したけど……、あんた達のおかげだ。だから、これをもらってほしい」
アクセサリー屋の女主人が、人ごみをかき分けてやってきた。六人に全員にそれを渡す。
「そんな高いものは受け取れませんよ」
さわやかにラクネオがいうと、もらってくれないと困るとそれぞれに手渡す。いいパーティーだねえ、といって帰っていった。
女性達は気を落ち着けた。
そして、女性五人にびびっていたこちらの集団は――――。
あのラクネオが……。もっさくて、村では異質といわれる黒髪で、自分達が弱い弱いといっていたあのラクネオが…………。
本当は、村で噂になったダンジョン踏破者で。
それもSランクで。
こんなに大きな町の人たちに褒め称えられて。
お店の人におごられて。
贈り物をされて。
生意気にも女性に、それも五人に囲まれている。
ずっと、ずっっと騙されていたのだ!
ラクネオを見る四人の目は、怒りが混じり、自分達が馬鹿にされてくやしいといった目つきだ。顔だって真っ赤。
そのとき、ギルドにいた一人が聞いた。
「――まだアーリズにいてくれるんだよな」
しばらくはこの町を拠点に頑張るのかを聞かれたとき、ラクネオはとびきりの笑顔でこういった。
「ええ。しばらくここを拠点に活動します。まだ見たいものや、やりたいことがあるので」
笑顔であの集団に目を向ける。
――俺はここに残るけど、お前らどうすんの? 尻尾巻いて逃げるの? てか、どんな気持ち? ねえねえ、今どんな気持ちぃ?――
そんな語りかけのように、あの連中は感じたのだろうか。それはわからないが、彼らはギルドから勢いよく飛び出した。罵詈雑言をまき散らしたが、当然人ごみによって声は吸われた。それに皆、彼らより本日の英雄のほうに興味があった。
★★★★★★
あの賞賛の日から大分たったある日。
ラクネオたちはある用事でギルドに来ていた。
「リーダー変更と、パーティー名変更ですね」
あれからラクネオは、時間があれば彼らをこっそりつけ回し「ざまぁ」とつぶやきつつも、依頼をこなした。
概ね満足したので、正式にパーティーを組もうということになったのだ。ラクネオとしては、女性五人の実力は特に不満がなかった。だから、そのままパーティーを組むことに問題はない。
女性達としては、ラクネオの性格にやや難があるものの、悔しいことに黒髪を手放したくなかった。そしてやっぱり強かった。自分達の活動範囲が広がることは嬉しい。
だからこのまま続けていこうという話になった。そして、リーダーはラクネオに変更にすることにした。
理由の一つは一番ランクが高いから。普通の冒険者パーティーは、基本ランクが一番高い人がリーダーになることが多い。
二つ目は、やはり戦闘指揮ができるからだ。キングトロール戦もそうだったが、他の魔物討伐のときもその才を発揮した。
三つ目は、面の皮が厚いから。今のところさわやか青年で通っている。おかげで依頼人の覚えも良い。
そして、一番重要視したのは四つ目。
やっぱり黒髪の彼がリーダーだと、テンションが上がるからだ。まるであの王のパ(以下略)…………。ただ、彼は一人で突っ走りやすいので、そのときは皆で押さえ込もうと一致団結した。
彼らが和気藹々と変更処理待ちをしていたとき――。
――――こおおんの!! ばっかどもがあああ!!!――――
熊が襲いかかってきたかのような声が、ギルドの二階から響いた。天井からも埃がぱらぱらと落ちている。
「えっ。なに? 今のギルドマスターの声?」
ぽかぽかの昼時に、突然雷が落ちたかのようだ。ギルド内のほかの冒険者も、なんだなんだといっている。
「お、おまえら知ってっか? なんでも、自分達の依頼の前に、別の強い魔物倒そうとしたんだとよ。で、返り討ちにあったってわけ。結局、依頼完遂できなくて、しまいには逆ギレだとさ。ありゃ、ランク落ちだな」
最近顔なじみになった冒険者の一人が、ラクネオ達に二階のほうを指差して教えた。そして、じゃあなといって去っていく。
「完遂させられる力があれば、別にいいんですよ。どの魔物から先に倒しても。でも、依頼人まで怒らせるのは…………。あ、すみません」
口を滑らせてしまった受付嬢は、気を取り直して事務に集中する。
女性陣は「いえいえ~」と、特に気にもとめない素振りを醸し出す。
しかし、当然ラクネオたちは知っていた。彼らの行動をこっそり覗いていたから。
グレートグレイラビットという、草原にいる魔物を討伐する予定だったあの集団。だが、なぜか途中で進行方向を変えて森へ。そこでふらふらと森を散策し、大きな蛇の魔物を見つけ出した。必死に戦うも、一人が魔力の使いすぎでバタンと倒れ、辛くも逃げ帰る。
森を出て子供数人に見つかり、「おっさんとおばさん。生きてるかー」と聞かれる始末。その聞かれた男の鼻は折れていた。
ラクネオはその様子を「ああ、面白かった」といって、皆で森に入り、その蛇を退治してきたのだ。
やはり、キングトロール戦からの依頼完遂は、大変効果があった。
『ざまぁ案』のひとつ“ラクネオができるんだから、俺たちも本依頼の前に一狩りしようぜ”と思わせる作戦がきいたようだ。
「今日は良い日、良い門出だな」
彼の顔は誰が見ても、さわやかな笑顔であった――――。
このような長い短編を、お読みくださりありがとうございました。
今回の短編は、連載小説『転生した受付嬢のギルド日誌』の
“何となく第二部開始、皆さん読んでくれてありがとう企画”(名称適当)として書いてみました。
もちろん、この短編単体で読んでも問題ないつくりにしています。
今回、ざまぁをされたパーティーの後日談として、
連載『転生した受付嬢のギルド日誌』の30~31、40話にて登場。
(かわいそうなほどチョイ役です。こちらでは『ざまぁ』成分が大変薄いです。ざまぁの余韻が残っている方はご注意ください)
32話に今回の件が話題になっています。
そう、彼らはこの後も、ギリギリ町に残っています。意外としぶとかったんですね。
そしてその頃のラクネオのパーティーは王都に滞在中。
個人名は出していないけど、何をしているかは、23と24話にかいてあります(この部分だけ読むと、わかりづらいかもしれませんが)。
ちなみに、連載『転生した受付嬢のギルド日誌』は、今回出演した受付嬢が主人公の話です。
今回の小説の雰囲気とは違って穏やかな話です。
↓にリンクも貼っておきます。
ご興味ありましたら、どうぞご覧ください。