P.1_目覚めたのはひねくれ勇者。
取り敢えず書きたくなったので書いてみた感じです。
見切り発車なので、話がグダグダするかもしれません……。
モチベが持つ限り更新続けます!
ですので、これからよろしくお願いしますm(__)m
親指と人差し指、そして中指の三本で摘む、一つの宝石。
限りなく純度の高く、割れたガラスのように不規則な形の黄金石。
名前を【叶願の宝石】。
俺ーー尚柳 悠久だけが唯一知れる、微弱ながらも絶えず発光するソレは、神話や伝説上にも存在しない、類を見ないイレギュラーな物だった。
一個につき一つの願い叶える魔法の道具。元の世界の言葉を借りるならーーまさに聖杯だ。
そんな代物を代償無しで、幾らでも。無限に創る俺の能力は、まさに反則。
反則だった。
「大丈夫」
コインを飛ばす容量で、俺は宝石を親指で勢いよく弾く。クルクルと回転し、宙を舞う石に願いを込めて。
「俺って、結構悪運が強い方だったりするからな」
宝石から発せられた眩い光が視界を支配する中、俺は振り返って彼女にそう告げた。
^Y^Y^
ぐわんぐわんと、激しい波に揺られるように頭の中で渦が巻く。
気持ち、悪い。
そう思える程に思考が回り続けた時、俺は思い切り瞼を開けた後に膝を立てた。
「はあ……はあ、っ……っはっ……!」
息が荒い。
尋常じゃない量の汗で、肌に薄い生地のカッターシャツが貼り付いている。
それだけじゃなく、今も額を伝い続けていた。
流石に煩わしく思い、俺は拭おうと腕を上げようとしたーーが。
「……は?」
途中、筋肉が硬直したのを感じる。
同時に顔を上げると、初めて周りの風景が眼に飛び込んできたからだ。
「あ、ああ……あぁ! 良かった……。お気付きになられましたっ! 召喚……成功です!!」
聴こえてくる高揚の声。
自分より低い位置の、金色に透き通る長い髪からリボンを垂らした、やけに華やかな桃色ドレスに身を包んだ紅眼の女性とばっちり目が合う。
歳は随分若く、自分と同じくらいだろうか。汗だくで、無垢に笑う彼女の丸く大きな瞳には安堵が宿り、背後からは「おおおぉっー!」と感嘆の声が上げられた。
見ると、剣を携えた全身甲冑姿の男と思わしき人達や、教会関連なのか本や杖を持ち、緑色の礼装を着た老人達が行列を作っている。
よく見ると、少女の隣にはこれまた豪華な赤いマントを羽織り、金の王冠を被り……そして、威厳を感じる白い髭を伸ばした中年の男性が立っていた。
……見た所、中世ヨーロッパと言った感じだ。しかもあの女の人は召喚と言っていた。これじゃあまるでRPGゲームの展開だ。……じゃあ呼ばれたのって……もしかして、俺一人なのか?
意味不明な事態を前に考えると、逆に冷静になれる。いつの間にか、息も整っていた。
「ーー君は……。あなたは、誰なんだ」
……どうやら、ここに居るのは俺だけじゃなかったようで。
俺が動く前に、突然背後から妙に落ち着いた男の声が発せられる。
「……っあ! 申し遅れました。私の名は、ナナリエ=アス=グランテア。この国のーー……第一王女です」
「……え!? え、じゃ……じゃあもしかして、お姫様ってことなの!?」
「はい。そう思って頂いても構いません」
今度は女子の驚く声。
姫様はその言葉をそのまま肯定すると、すぐに何やら長そうな説明をし出したが、気になって俺は隙を見て振り返ると、数えるまでもなく他に三人居ることが分かる。
全員クラスメイトだから一応顔は知ってるが、一度足りとも会話した事はない。
「……へぇ」
ただ、メンツが興味深かった。
酷い組み合わせだ。
悪意すら感じる。
それもそのはずーー
何故ならそれは、イケメンと持て囃される男と、美少女が三人。そして、虐められている訳では無くともあからさまな不遇な扱いを受けていた男子と俺の六人構成だったからだ。
「ーー今も離れ離れとなった人々は階の扉が開くのを今か今かと待ち望んでいるはずです」
これは酷い。あまりにも酷すぎる。
「勇者様を呼んだのは他でもなく、ここより下の階層に囚われた人々を助ける為なのですっ! だから、だから……っ。どうかお願いします!! 私達にお力をお貸しては頂けないでしょうか!」
正直、こんな所には居たくない。
俺はそう思うが、ナナリエは涙声で腰を折って頭を下げる。
「もちろんだ! 俺達には特別な力があるんだから。簡単に皆を救える力があるのに、それが出来るのに……それをしないなんてふざけたこと……俺は許せない……っ! だから俺は力を貸すよ! いくらでも!!」
感極まって、と言った所か。
見事なまでの正義感だ。
「そうだろ、皆ッ!?」
龍樹 隼人。例の男の、やけに力強い声が部屋の中に響いた。
「もっちろんよ!!」
「うん、全くその通りだね」
満ち溢れたやる気を表すように梨木 メグがバチンと両手の拳を合わせ、河合 沙耶が首を縦に振る。
「わ、わたしは……」
「……大丈夫だよ千夏さん。無理しなくても大丈夫だから。俺も、皆も、ちゃんと分かってるからさ」
だが、若菜 千夏だけは頷かない。
「安田、お前もそう思ってくれるよな?」
というか、何を分かっているのだろう。
龍樹は勝手な解釈で済ませると、すぐに安田 康介に話を振る。
「う、うーー『尚柳、君もそう思うだろ?』
「……」
これには黙るしかない。
俯きながらも返事した安田が言い終わる前に、次は俺に。
「み、皆さん……! 本当にーー」
それをナナリエは肯定の意で酌んだ。
「すまん」
「……は?」
残念ながら、違うんだなコレが。
龍樹が豆鉄砲を食らったような顔で口を開く。
だってさ。
「今の話で俺に何かメリットが一つでもあったか?」
「……え、えと、その……っ」
……ああ、やっぱり隠し通すつもりでいたのか。
これに、ナナリエは戸惑う。
「何を言ってるんだ尚柳! メリットとか、そんな事を言ってる場合じゃないだろ!? この世界の命運が掛かってるんだ! 僕達がやらなくて誰がやるんだよっ!!」
「……」
呆れた。
「皆の喜ぶ顔が見れれば、それでいい筈だ!」
それはお前らだけだと思うが?
文句に不服。その一言が喉を迫り上がってくるが、俺はグッと堪え、別の言葉を出す。
「……俺は何も感謝されたいとは思ってない。そんな人がこっちの都合無視した上に付き合わされて、はいそうですかと手伝うか? 俺はボランティアじゃない。こっちは生活滅茶苦茶にされてるんだ。責任取るどころか、良いように使われるなんて俺はゴメンだ」
「そんな……使われるなんて……っ!! ふざけーー」
龍樹は声を荒らげたまま、俺の制服の襟首を掴む。
「ふざけてなんてない。俺らがどうにかした所で世界が終わる訳でもないんだし、これは遅かれ早かれの問題だ。違うか? ……ともかく、そういうのはお前らだけで勝手にやってくれ」
つまりは、俺を巻き込むな。
俺はただ、それだけ言い放つと龍樹の手を振り解き、王女の配下の間を通り抜け、奥の大扉を開けた。
騎士は見るからに殺気立ち、兜の奥から不満気な眼で睨まれる。国の大臣達は、両目で手を覆っていた。
王女も顔を歪ませている。
ーーただ。
ただ一人。最後まで口を開かず、無表情を貫いている者がいる。それは国王。
ただただ冷たい瞳だけを俺に向けていた。
それだけ確認すると、俺は扉を潜り抜けていく。
「……勇者だから、やっぱり下手に手出しできないのか」
白い、大理石の廊下の真ん中で呟き、思い返す。
状況を飲み込む為の説明で、一つだけ。聞いていない情報があったのだ。俺たちにとって、一番大事な筈の情報を聞かされなかった。
それは、元の世界への返し方。そして、その約束。
ナナリエは、一言も言っていなかったのだ。
本当はとっとと城から出て行きたい所だが、現状この世界の事を知らな過ぎて逆に危ない。
それよりかは……。
「バレない限り、ここに居る内は安全だろうな」
流石に、あっち側も六人いた勇者の一人を失うのは避けたいと思う筈だ。
そう思った俺は、誰も居なそうで、尚且つ落ち着く場所を探そうと足を運んだのだった。
説明にあったスキル【ステータス】。録に確認されなかったその透き通った盤面の下に記された称号【勇者の巻き添え】。
俺は勇者じゃないという事実を。
俺以外、誰も知らないのだから。
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《ステータス》
名前:尚柳 悠久
性別:男
年齢:17
体力:C
魔力:F
筋力:C
俊敏:C
運力:E
〈スキル〉
【叶願の宝石 Lv.1】
【ステータス Lv.-】
【言語自動翻訳 Lv.-】
〈称号〉
【異世界人】
【勇者の巻き添え】
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読んで頂き、ありがとうございました(´∇`)