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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
輝きの裏にある綻び
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第62話 決着

話の顛末を語るティアレ、それを静かに聞いていた血まみれのデルモンド・キルギス。



しかし、殺意だけは黙っておらず、先ほどからティアレに対して本能が逃げろと言っていた。


でもティアレは逃げなかった。



目の前にいる恩人を助けたいと思っていたから。



「…………ティアレ、貴様が私の過去を知ったのはわかった。だがどうして止めようとする。これが完遂すれば世界はまた新しい意識を持つというのに……」


虚ろげな目で、デルモンドはティアレを見ながらそう言う。



「……確かに、師匠が望んだ世界にはなるはずです」


「なら」


「でも師匠が救われない」



ピクリと眉を動かして反応するデルモンド。



「……師匠が魔法で世界を変えようと必死なのは知っています。でも、それじゃ貴方が惨めになってしまう。世界の恨みを一身に背負って本当に誰かが救われるんですか! あなたを大切に思う人だっているんです!だからもうやめましょう、もうあなたが傷つく姿を見たくないんです!」



ティアレは胸の内の言葉を出し尽くすと黙り込む。




分かっている。

こんな説教でこの人が変わらないのは。


あくまで抵抗するはずだ。

彼の最強の魔法で。


だから、彼女は後ずさった。

ここから先を、譲るように。





「……師匠を……助けて……」




その泣きそうな一言に、『神格者』、『不死身』、二つの称号を持ったいたって普通のスーツを着た高校生が返事する。




「任せろ」




そう言った神宮寺 孝作は、その場に転がっていた瓦礫を手に持ってデルモンド目掛けて投げつける。


それを一切の挙動無しで床に撃ち落とすデルモンド。



「……なるほど、いきなり野蛮な解決方法を実践するか。けれど、私は『魔法師』だ。相手が誰であろうと負けはしない」



「そー言うわりには自分の過去に負けてんじゃねーか!」


怒号とともに言い返す神宮寺。


それを聞いて怒ったのか、彼の周りから氷の礫が発生し、神宮寺めがけて弾丸の速度で飛ばす。



しかし。



「その攻撃は『知っている』!」



神宮寺はあらかじめ弾道が読めていたように、ひらりと身を翻して躱した。

だが、一撃ではない。


その礫はドンドン精製され、何百もの礫が襲いかかる。


神宮寺は、その精製が始まる前に近くで倒れている東條とへべ、霧島たちを無理やり遠くに投げ飛ばし、攻撃の範囲外に移す。


霧島が床に頭をぶつけて「うげぇ」と呻いたのと同時に、神宮寺に雨のような礫が襲いかかる。



アリアに苦しくもキャッチされて衝撃をあまり受けずにいた絵里は、その光景を目の当たりにして衝撃を受けた。


「じ、神宮寺くんーーーッッ!!」



弾丸のような礫によって瓦礫の粉塵に飲まれ、姿が見えなくなった神宮寺。

粉塵が晴れたその後の予想に、絵里はもう耐えられなかった。



「いや、いや……」


そう呟く絵里だったが、傍にいたアリアはちっとも驚かず。まるでこの後の出来事が分かっているように彼女に言った。



「へーきへーき、あいつが死ぬ時はもっと強いやつが相手の時だけだから」


「……あーちゃん?あなた何言って……」



言いかけた時粉塵が一気に晴れ、そこから疾風の如く神宮寺が飛び出す。


一切の無傷で


「なに!?」


デルモンドは飛び出したことと無傷である2つの事実に驚き、判断が遅れた。



一気にデルモンドの懐まで距離を縮めた神宮寺は、握りしめたその拳でデルモンドの腹に2発ほどパンチを繰り出す。


それだけでデルモンドの体は神宮寺から離れ、遠くの壁まで飛んでいき激突する。



強く身体を壁に打たれ、吐血するデルモンドだったが。それでも彼は気を失わなかった。


今度は周りから炎の玉、電撃の玉、さっきの氷の礫を大量に精製させ、四方八方から神宮寺目掛けて飛ばす。


神宮寺はそれら回避不可能の攻撃を見据えながらも、ボロボロの床を数歩動いて移動した。それだけだ。



ズガガガガガガッガガガガガ!


床をを抉るように攻撃が神宮寺の居る場所に降り注ぎ、さっきと同じように粉塵が舞う。


そしてさっきと同じように無傷で粉塵から出てくる神宮寺。



「……ッ!? ありえない……!!」



デルモンドは2度も起きたそれにもう目を疑わざるを得なかった。

だが、彼も今度は対策済みだった。

向かってくる神宮寺の足元に、突如としてぽっかりと大きな穴が空いた。


落とし穴。


デルモンドが予測し、即興でフロアの床に穴を開けただけのモノだが、これだけでも時間稼ぎにはなる。


そう考えて、今度こそ仕留める魔法を編み出そうとした。

神宮寺が穴が開く直前に飛躍していたのをその両目で確認するまでは。


(嘘だろ!?)


頭の中でそう呟きながら、飛躍しつつそのままこちらに迫る神宮寺。


「オラァァ!」


右の拳を振りかぶり、信じられないモノを見るデルモンドの顔に思い切り叩きつける。




その時、デルモンドは鼻っ柱の骨が完全に折れた音を聞きながら持ち前の才能を使って、神宮寺が如何にして自分の攻撃を予測したのかを推測した。



(…予測…予知……)



そして思い出す、ある神の名を。


都市伝説『怪人アンサー』。



さっきティアレが言った『どんな質問にも答える怪人』


その神を神宮寺がその身の宿して出力を最大限にしている状態なら、おそらくは答えられない答えはないはずだ。


(…………ボクの攻撃を、事前に知っていたのか……)



それで謎は解けた。

そして目の前にいるただの少年に、どうやっても勝てないことも悟った。


デルモンドは頭の中にある疑問を解消し、ドスンと背中から床に勢いよく叩きつけられた。



そこからは、もう動く気力すらなくなった。


もはや、彼の中で絶望が広がるのみだった。



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