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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
輝きの裏にある綻び
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60話 怪人アンサー100%

神宮寺とアリアの2人は『メビウスの輪』の相方であるシズクに出会う。



さっき、彼女に助けられたこともありお礼を言いたいのだが、見下すように冷たい視線を放つ彼女に、神宮寺はおろかあのアリアでさえたじろいでいた。



「……えーーと、さっきはありがとうございます」


とりあえずは先を急いでいいるので神宮寺はさっきのお礼と共に頭をぺこりと下げる。


対するシズクは無表情で何も喋ろうともしない。



もう気まずくなってきた。


そんな時だった。




「……う、ん? あら…………私はさきほど死んだはずでは…………」



シズクが抱えていた少女が、寝ぼけた顔を浮かべて顔を上げた。



その顔に、神宮寺達はさっきの魔法使いだと気付いた。


向こうも同じようで、こちらの顔をボケーッと眺めてハッとしたように目を見開く。



「あら!何なんですのこの状況は!? もしや私を人質にして師匠を脅す気ですのね! させませんわ!今この場で全員殺して……」




言い切ると手や足をジタバタさせ始めた。



「あら? 魔法が使え…………」




不思議そうに、焦りながらキョロキョロと辺りを見るが、それをシズクが空いている方の手でポケットから携帯を取り出して打ち込む。


それをティアレに見せる。



「えーと、何ですの…………『あなたの魔法は今は使えないゾ! 何故なら私が抱えながらそーゆう秘孔をついているからねー!世紀末でも使えるこの技術すごくない?』そんなバカなことがあるんですの!? あと、最後ウザ!!」





ティアレは怒りながらバタバタと手足を動かすが、そんなの御構い無しにシズクはこちらに近づき、再度片手で器用に文字を打って神宮寺に見せる。



『ごめんねなんか面倒な感じで、あたしむっかし凄惨な拷問にあってしゃべれなくなっちゃったんだ! いやー人に歴史ありってね(笑)そんなわけだからこれで会話するけどいいかなお姫様?』




無表情で、だがスマホの文面には明るい感じに接してくるシズク。


神宮寺は最初罠だと思ったが、この状況からして騙すなどという行為に出るはずもない。


それに、薄々感じていたが、あの『メビウスの輪』と同様に社交性があり、助けた際の行動の時ですらこちらを配慮したものだった。



その点を踏まえ、少し怖気付くアリアの前に出て神宮寺は、己に神を宿すことができる同じ体質の『神格者』として、彼女に話しかける。



「喋れないのは分かった、けど、何でまた俺たちの前に出たんだ? さっきの紙切れ同様に、何か用があるんだろ」



そう問いただすと、すぐにスマホを弄って文字を打つ。

早い。


指の動きが残像にも見える。


すぐに文字を打ち終えると見せる。




『盤面は揃った、あとは女王がチェックの一手を打つだけ……って葉月君からメールきたから、その一手となる子をお連れしました!』


「……まさか、その女が」


『イエーッス!!大正解ですよヒャッフー』




無表情にハイテンションな文字を打ち終えると、抱えていたティアレを離して下ろす。



「え? な、なんで急に解放するんですの……」



そう呟きながらティアレはほうけていたが、やがて表情を変えるとすぐに駆け出そうとした。

だがその肩をシズクは掴んで放さない。




「邪魔をするんじゃないですの!! 師匠の為に私は! 私は!」



そう言いながら振りほどこうと暴れていたが。




パチン、と

シズクが掴んでいた肩を離してティアレの頬を叩いた。



それにはいきなりの事でどうするか迷っていた神宮寺達も驚くが、それ以上にティアレが驚いているようだった。



「……っ! 何なんですの!? なんで、なんでいっつも、いっっっつも!!! 私がやろうとする行為は誰かに邪魔されるんですの!? 何であの人以外は理解してくれないんですの!! あの人は世界を変えようとしているんですのよ! それを、なんで!」




そう叫びながら握り拳を作るとシズクの顔面を殴ろうとする。


だがそれをシズクは軽くよけて、今度はその腕を掴む。

悔しいのか、さっきの意味深げなセリフを口走ったせいか、ティアレの瞳から涙が溢れてそのままキッとシズクを睨む。


しかしシズクは無表情で、手早く文字を打ち神宮寺達に見せる。



『葉月くんの言った通りなら、あなた達はこの子を救う神を界外しているはず。その100%の出力を持ってすればできない事はない』



ティアレに見えないように、しかしシズクが彼女の頬をひっぱたいた事にはまるで理由があるように、神宮寺に向ける瞳には明確な強さがあった。




「……分かった、ならやれば良いんだろ」



心配そうにするアリアを片手で制して、神宮寺は前に出る。

そしてティアレの前に立つと、彼女に語る。



「俺は神格者……なのは知ってるよな?」


「えぇ、たしか『神を内に宿す事ができる』んでしょ?だからなんだって言うの、全知全能の神でもあんたの中に居るとでも?」


「そこまでじゃないけど、それに対するほどの智慧者なら今宿してる」


「はぁ?」



「君は『怪人アンサー』と云う神を知っているかい?」



そう呟き、神宮寺は内で「怪人アンサー』と入れ替わる。



『どうも……怪人アンサーです。今からあなたの質問に9個まで全て完答して答えてあげます。しかし、最後の10個目の質問はこちらから問いかけますのでご了承ください』



明らかに人格が変わり纏う雰囲気もガラリと変わる。



「……怪人アンサー……質問に答える……」



それを見て、耳にして、ティアレはただその現象が口にした言葉を反芻する。

それをアンサーは『えぇ』と答え、神宮寺の目を虚ろに変えて質問を待つ。



ゴクリ



ティアレは、何が何だか分からなかった。

魔法使いでありながら、自分が『神格者』に宿ったすべての質問に答えるといった『怪人アンサー』なる者が本当かもわからなかった。


そもそも、なぜ私にこのような事をとも思った。



それでも、何故か胸の内では知りたいと思った。


あの人の過去についてを。



ティアレは言った。



「……なら、私の師匠が、過去で何が起きたのかを答えて。あの人が、この世界を変えたいと思う根本を……」



そう言いながらも、敵にこのようなことを口走らせる自分を恥じて恨んだ。




そんなことを知って何になる。


あの人が望んだ計画だ。


あの光を浴びるアイドルを殺せば、今度は他の人を。それを殺ったら今度は違うのを。


聞いた限りでは大雑把な計画だが、それでも私達は異論は唱えなかった。


あの人が望むならその世界を作るのが私たち弟子の仕事と恩返しでもある。




それれでも、こんな敵に捕まっている状況だからだろう。胸の内に隠した疑問を晒しても、理由が脅迫されたと言い訳ができる。


いや、もしかしたら……。




あの人を、本当の意味で助けられるかもしれない。



自らの考えで一直線に血みどろの道を進もうとしているあの人を。



だから聞いた。


救いを求めて。



『…………わかりましたよ、デルモンド・キルギスのこの顛末の根本の出来事を……』


そう言いながら、怪人アンサーはティアレの胸元に人指し指を突きつける。



すると、ティアレの脳内に一つの映像と共に心の声が響き始める。


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