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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
輝きの裏にある綻び
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52話 遭遇

ビルの9階、空きテナントばかりの広いフロアでは《約束された盤上》の陸奥裕也の追撃を『メビウスの輪』回避する逃走劇を続けていた。




しかし、さすがに長い間同じフロアをグルグルと回るように走っていたために《約束された盤上》の陸奥はその先を読むような攻撃を子供のような神にやらせ。




逆に『メビウスの輪』はその先の攻撃を誘導するように走りながら少しばかりの迎撃を試みようとする。




ばら撒いた数枚の紙人形。

そこを噴出点にするように、紙が光りだすと今度は青い鱗で翠色の瞳の竜が頭を覗かせる。




けれど次の瞬間には、子供のような神の禍々しい巨大な腕がマントから伸びて竜の頭を鷲掴みにして握り潰す。




この一連の行動と攻防。同じような光景。



けれどお互い攻め方も守り方もすべて違っていた。



竜が握りつぶされた瞬間、『メビウスの輪』はすぐに踵を返すと竜を鷲掴みにしている手に飛び乗る。




当然 陸奥の出した神はそんな目標を殺そうと勢いよく腕ごと使って振り払おうとする。



それを利用した。



彼は振り払われる前に踏み出しており、手から飛び立って子供の頭上を飛び越える。



そして、子供の背後にいた界外術師。陸奥裕也の真上まで移動した。


いきなりのことで少しは動揺したのか、反応が遅れた陸奥が咄嗟に懐から拳銃を取りだして真上にいる『メビウスの輪』に向ける。


対する彼はまた紙を空中でばら撒いて界外させる。


「界外! ゴーレム!」


それだけで紙は瞬く間に光って、そこから大きな土人形の頭のようなものが出てきた。



『メビウスの輪』はその大きな頭の後ろに着地して陸奥の上に落ちていく。

同時に陸奥が放った幾つもの銃弾の発砲音が響いた。



銃弾はすべて土人形の硬い顔に当たると勢いが殺されてしまい、無意味となってしまう。


このままではまずいと思った陸奥は目の前にいる自らが出した神に切羽詰まった様子で命令する。



「私を吹き飛ばせ!」



『メビウスの輪』が乗ったゴーレムの頭が陸奥の頭の上に落ちる寸前、飛び越えた子供のような神が大きな手を地面に打ち付ける。


その衝撃、宙にいた『メビウスの輪』は感じなかったが、床に打ち付けた手から生じた風圧で当の界外術師の陸奥が遠くまで吹き飛ばされる。



「ぐぁッッッ!!」



地面に打ち付けられるように跳ねる陸奥のすぐ側で大きなゴーレムの頭が落ちる。



寸での差。


このような命の削り合いが39回も続いていた。


地面に落ちたゴーレムから離れるように飛び退く『メビウスの輪』の目の前でゴーレムの頭が大きな手で潰された。



一旦距離を置いてお互いに間を空ける。




「……やるじゃん」


「……貴方様こそ、やはり界外術の腕は誰よりも上なのですね」


「ふふ、僕なんてあの 姫様(プリンセス)に比べたら才能なんて下の下だよ。そんなお世辞のような評価は嬉しくないな」


「……本当に余裕ですね。もっとも、戦闘のセンスが一流の貴方様が危機的状況なのはご理解の上での発言でしょうか」



そう言いながら陸奥は拳銃を突きつける。『メビウスの輪』の背後にはいつの間にかあの神が回り込んでいた。



「さて、ここから貴方様に問題です。オカルト武器と現代の兵器、どちらを避けるのが正解でしょうか?」



「では僕からも出題といこうか」




挟み撃ちされるような体制の『メビウスの輪』はさっきの焦りの表情が顔から消え失せていた。

逆に言えば、その顔には安堵感のようなものが張り付いていた。




「界外で呼んだ神と現代兵器、けれどそれより恐ろしい存在を君は知っているかな?」


「何を……」




言っている。と口に出す前に自分の背後に何らかの気配を感じた。


陸奥はそれを確認する前に、自身の本能が危険信号を発していることに気付いて急いで横に飛ぶように移動する。


すると、自分の背後から何かが通り過ぎていった。

陸奥はそれが大きな冷気をまとった氷のつぶてだと気付いたのは通り過ぎてすぐのことだ。




「……まったく、今日はお客さんが異様に多いことで」



避けた陸奥とは対照的に、弾丸のように迫ってくる氷のつぶてを『メビウスの輪』は、用意していたのか足元に落としていた紙人形で界外を行い。とてつもない成長速度のように大きな植物のツタが生えてきて、彼の目の前で壁のように広がる。




その植物の壁に遮られるように氷のつぶてはぶつかり。粉々となって砕け散った。



キラキラと氷の欠片が舞う。


突然の攻撃。

その事実だけが目の前で起きたこと陸奥は少し低めの舌打ちをすると自らの後方に体を向ける。


陸奥の視線を向ける先にいる人物の正体を『メビウスの輪』は知っていた。



それは少女だ。


特徴的なとんがり帽子を被り、ゴスロリ調の服を着て右手をこちらに向けている。




「……あなた達、『メビウスの輪』と『約束された盤上』の人? なら私や師匠の敵で良いの? 始末するけど」




そう言いつつ今度は左手も一緒にこちらに向けて伸ばしだす。



「…答えは第三者という存在。 どんな武器も、兵器も、王も、皇帝も、神も。全ての事象はその場に突然現れる第三者こそが恐ろしい存在なんだよね」




とりあえずは植物の壁。世界樹である『ユグドラシル』の神木の一部を界外したその後ろに隠れながら、陸奥に正解を教える。



けれど、陸奥裕也はそんな言葉には耳を傾けておらず。

自分を殺そうとしてきたその少女を睨んでいた。




「……貴方様のお師匠様にはお話をしております。我々は目的が違うだけで争う理由もない。なぜ私まで巻き込もうとしているのでしょう」


「……なぜ?」



少女は不思議そうに首をかしげると今度は左手を向ける。


さっきとは逆の性質の火の玉が噴き出したのはその直後だ。



しかしその攻撃が予測できていたのか、今度は子供の容姿の神を前に立たせ、その巨大な手で火の玉を受け止め、鷲掴み、握りつぶす。



だがそれだけでは行動は終わらない。

防いだのと同時に、今度は銃を自分の真後ろに構えて躊躇なく引き金を引く。


その銃口の先にいた『メビウスの輪』。彼は少女に気を取られていた陸奥に一撃を見舞おうとし、背後に近づいていた。



彼の方もこの攻撃が予測できていたようで、すぐに銃口の射線から逸れるように体の動きを変えて体制を低くし、弾が自分に当たらないように回避しつつ距離をとった。




火炎の玉を阻止されて若干ながらイラっとした顔を作る少女。



「なぜ? だって界外は悪。神様に頼む人は悪。 みんな幸せにしない。 だから界外術師は全員悪。 罪人には裁きが必要。それがなにか?」



「……了解しました。どうやらお話ができない部下だったようですね。どおりで我々の戦闘員が全滅するわけです」




そう言いながら両側にいる少女と『メビウスの輪』の2人に対して構えを見せる陸奥。



三人がお互いに潰し合う関係。


それでもなお、『メビウスの輪』はくだけた感じに一人呟く。



「さーて、盤面は揃った。あとはクイーンだけだ…………」







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