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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
輝きの裏にある綻び
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たらいまわし

どうもみなさん。

瀬木御 ゆうやです。


長らく更新していなくてすいません。

ちょっと忙しくてなかなか執筆が出来ずにいました。そしてTwitterの方も一風堂のラーメンの旨さを書いたまま消えていて笑いました。

忙しいと指も動きませんね。

暑いと辛いし。




ビルの最上階である9階の空きテナントのフロアでは、『メビウスの輪』と呼ばれる男が何もない部屋を必死にかけていた。




そして、その後ろからはフードを被った下半身がない子供のような者が宙を浮きながら追いかける。





すると、下についてしまうくらいぶかぶかのコートの中から大きくて禍々しい爪を携えた巨大な腕が突き出て、走っていた『メビウスの輪』に襲いかかる。




けれど、『メビウスの輪』は振り返らずに大量の紙人形を撒き散らした後に何かを呟くと、ぽけっとから駄菓子を紙の中に投げ入れる。



「界外!」



大きな声でそう言った。

すると、突然紙の人形が光ってその光の中から赤い竜のようなものが顔を覗かせる。



肌は真紅のウロコで覆われており一目で硬質であることが伺える。目は金色に輝いており、そこから光を鈍く照らす。



だがそこまでだ。

竜の頭を大きな手が鷲掴みにし、グシャリ、とその竜の頭を握りつぶしてしまった。



赤い鎧のようなウロコは1枚1枚にヒビが入り、金色の瞳はその赤いウロコに混ざって唯一輝く。


無残にも床に飛び散るそれらは、まるで色を無くしたように赤色、金色が失われてい無色になった途端、風もないのにサラサラと粉塵となって消えてしまった。



しかし、そんな場面も気にした様子もなく走り続ける『メビウスの輪』。


彼は後ろをちらりと見ただけだった。



「まったく、【魔法師】の次は【約束された盤上】の幹部か。どれだけの数の組織に狙われているんですか大鷲さんは!」



そう言いつつも逃げる『メビウスの輪』は、走りながら考えをめぐらせていた。





彼は大鷲誠治から『バス爆破事件』での詳細を聞いたあと、そのまま倉庫に隠れるように指示してビルの中をシズクと共に掛けていた。



同時に、最大の協力者で実力のある下田アリアにこの襲撃のカギを握る過去の出来事を教えるべく、シズクに手紙を渡して別れた。


そして『メビウスの輪』は雇われた仲間の界外術師の身を案じ、ひとり階上に向かった。



しかし、その途中であったのは『メビウスの輪』も予想していた敵の姿だった。


もっとも、タイミングは好ましくないものだったが。



パートナーのシズクがいない今、『架空の生き物を神話の神として扱って、神格化して界外する』ことを得意とする『メビウスの輪』。



対する追ってくる大きな手を繰り出す子供は、おそらく神話の中でも主神級の力を持った神。



実力は違っている。

だから『メビウスの輪』は逃げながら戦うことにした。


(もっとも、これが長く続くとは到底思わないけど……!)



そう思いつつも、次の攻撃が来る。

さっきと同じように紙をばらまいて神話の生物を界外する『メビウスの輪』。


パートナーであるシズクが戻ってくるのを期待して。











謎の女魔法使いの襲撃をシズクの介入によって難なく逃げれた神宮寺とアリアは通常の階段を使って一階まで降りた。


一階はほとんど広いロビーのようになっており、逃げた招待客がチラホラとそこに佇んでいた。


見渡しても東條とへべの姿はなかった。




「おかしいな。非常階段を使って先に逃げていると思ったんだけど……」




神宮寺が不思議そうに首を傾げて考えていたが、お姫様抱っこ状態の下田アリアが「早く下ろして!」とバンバン顔を殴るので仕方無く従う。



アリアは赤らめた顔でドレスをと整えながらフロアの端に神宮寺を連れて行く。



「おいおいなんだよ」


「さっきあの女から何か貰ったでしょ。紙みたいなの」


「あぁ、あの紙か。そういやなにが書いているんだろうな」




そう言って神宮寺ポケットから丸まった紙を取り出すと、クシャクシャとした紙のシワを伸ばすように広げる。


それは折り紙程度の紙のようだ。


そして、シワになった紙の表面には、ヨレヨレの文字が書かれていた。



「この手紙ってあの『メビウスの輪』ってヤツが書いたもんか?」


「さぁね。でもあの場面で彼のパートナーである彼女が出てきたってことはこれはメッセージってところかしら。しかも重要なモノ」




そう言いながらアリアは書いてある文面を読む。


そこには。



「『1年前のバス爆破事件が今回の襲撃の発端。人質交渉に失敗した大鷲誠治に対する復讐だ。爆破したバスで唯一生き残った人物【陸奥(むつ)裕也(ゆうや)】は稀な界外術を使う【約束された盤上】…………』」


「おいまさか今回の襲撃ってあいつらが!」


「ちょっと待って」


アリアが驚く神宮寺の続きの言葉を制し、続きを読む。



「『彼は今回数名の部下と襲撃するという情報を僕の方でもつかんでいた。だからそのための人員を集めたつもりだった。けれど、ここにイレギュラーが発生した。【魔法師】デルモンド・キルギスが私怨で【東條(とうじょう)絵里(えり)】を襲撃するという事態だ。僕はその前から日本に来ていた彼と手合わせしたが、僕たちではあの男には勝てない。そこで君たちにお願いがある』」



アリアはそこで区切って、息を整えて次の言葉を言う。


「『今回の件、僕は大鷲さんの護衛という立場で【約束された盤上】を相手するので、デルモンドの方は君たちに任せる。 東條君を守ってみせたまえ。健闘を祈る』…………、いや、なんのヒントにもなってないような気がすんだけどさ」



アリアが怒りのあまりまた紙をクシャリとにぎりつぶす。

そんなアリアに同じく同情する神宮寺も、とりあえず今後の行動について考える。



「『メビウスの輪』の人達は【約束された盤上】と、俺たちはあの……魔法? を使う奴らから東條を護ることで良いんだよな」


「結局は貧乏くじ引いたのは私たちだけどね。あいつらが予想していなかった相手を相手しろってことでしょ。釈然としないけど、護衛は護衛、とにかくえりっちを探しましょう」



そう言うとアリアはまたも神宮寺の手を引いて、ホールをかける。



ここには東條がいないことを知らないまま。













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