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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
輝きの裏にある綻び
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エリっちとアッちゃん

神宮寺は朝の通学路をげっそりとした顔で歩いていた。

その横には、神宮寺の幼馴染下田 アリアが並んで歩いていた。



数十分前、妹の料理で殺されそうになる直前にアリアが家に上がってきてその場面を目撃。


沈黙するリビング。

対峙するようにアリアと詩織は睨み合う。



数秒後、アリアに触手のような腕を向けて攻撃しはじめる詩織。

けれどアリアもそれを全て、いつ出したのか分からない鎧武者の神が斬り落とした。



全てが一瞬で行われていた。

勝負はアリアの勝ちだった。


その戦いで詩織は手を引いて、孝作はアリアに引きずられるように家を出た。


そして、現在に至るわけだった。


「あー、さっきよりは痛み引いたけど、やっぱりまだ痛えぇな…………」


「本当に危険な料理ね。こんなのがノーフィクションで行われていると考えると、彼女が軍隊に入ったら拷問の時にで重宝されるんじゃない?」


「何であんなに料理下手なんだろうなー、昔は確か俺と兄貴にカレーとか作って…………」



そう言いながら、しまったと思う。

アリアの前で兄の話はしてはいけなかった。

横を見ると、アリアの表情に陰りが出てた。



「…………ごめん。今のは口が滑った」


「別に…………、私は気にしてないから」



そう言いつつ、表情は少し暗くなっている。


孝作には10歳も年の離れた兄がいた。

神宮寺 一輪。

かつて小さい頃の孝作やアリアに界外のことについて教えており。今でもアリアは一輪の界外術の技量には達していないと言うほどの実力を持っていた。


そんか一輪だったが、孝作が12歳の頃に亡くなっていた。

しかし、死因は分かっていない。

心筋梗塞や心臓麻痺、様々な説が出たが未だに死因は断定してない。


そして、そんなコト切れる一輪を見つけたのが二人だったのも、場所が廃寺だったのも謎だった。



二人は知っていた。

一輪が死んだ原因を、そして誰にも喋れないわけを。


そんな暗い過去を連想しつつ、二人はいつの間にか学校に着いていた。


「…………あー、今日も頑張ろうぜ」


「そうね……」


そう言いながら二人は下駄箱で別れて違う階段から同じ教室に向かった。








昼休み。

午前の授業を終え、いつも通り屋上にやってきた孝作は、おきまりのベンチに座ると持ってきたマヨコーンパンを頬張る。


モグモグとよく噛みながらトウモロコシの粒粒と甘みを味わっていると、目の前の光景にヒビが入る。



「お、今日はアリアより来るの早いな」


ひび割れた空間が破れるとそこから見知った二人が出てくる。

霧島 弾とヨグ=ソトースだ。


「あれーアリアはまだきてないんだー」


「…………お前またパン食ってんのかよ。アリアに怒られるぞ。俺は忠告したからな」



そんな二人の手はお弁当箱を下げていた。

この関係はもう二週間も続いていた。

昼休みは四人でここで食べるのがお決まりになっていた。

お互いの連絡先を交換するくらいに親密度が上がっており、話題も盛り上がる。


それに影響されて、元々一匹狼の霧島は自分でお弁当を作ってまで来ている。もちろんヨグの分もだ。



「アリアはさっき話があるって、『東條(とうじょう)絵里(えり)』てのとどっかいったぞ。そしてこの俺のパンに対する愛は不変だからな」


「へー『東條(とうじょう)絵里(えり)』か。……お前のパンに対する愛は知らんよ。それで、今日はなんかあんのか?」


そう聞いてくる霧島に、神宮寺は「はぁ? 」と首をかしげる。


「なんだそりゃ、俺はなんも聞いてないぞ」


「あれー?さっきメールで『今日は手伝え』ってきたんだけどな」


「おいそれって仕事かよ……」


「そんな事より、お弁当食べない?」


厄介ごとに巻き込まれる事に頭を悩ませる二人に、ヨグは昼食のお弁当をずいっと前に出してくる。


「……ま、アリアならここに来るしそん時に聞ければいいか。話によっては全力で逃げりゃいいし」


「お前、逃げれると思ってんのか?」


「幼馴染だからヤツの追いかけるパターンはわかっている」


とそう言いながら二人は弁当箱を開けて広げる。二つとも彩りは綺麗だが調理は少し焦げてたりしている。


「もう少し勉強しなきゃな」


「んー別にあたしは気にしないけどね。あんたの弁当の成長を見ているのも面白いし」


「そうは言うけど、俺の親もこの俺が料理作ってる姿に度肝を抜いているんだ。さっさとマスターしなきゃしめしがつかない」


「まー、頑張ればいいんじゃない? 神様としてあんたの努力が報われるのを見守っているよ」



二人の会話は弾んでおり、その会話風景になぜか安心を覚える神宮寺。

平和だな。そう思いながら再度パンを咀嚼しようとした。

ちょうどその時だ。


屋上の鉄の扉が、ギィと開く。

扉から二人の少女が出てくる。

1人は見知った顔で強気な気が出ている少女。もう1人は…………。


二人はこちらに歩いてくる。お弁当を食べている三人のもとに。


「よう、遅かったな。そんでそこにいるのが例の『東條絵里』さんか?」


目線を少しだけそちらに移す。

『東條絵里』は…………。



「あれ? ねぇエリっち、あんた注目外し解いてる?」


「えっと………、ごめんねアッちゃん。この力って一度マネージャーに話を通さないと外させてもらえないの。それに今回頼む内容もだし……」



『東條絵里』は…………。


お互い中が良いのかあだ名で呼び合っている。これには神宮寺の目にも珍しかった。教室では殆どのクラスメイトを苗字で呼ぶのに対して、この『東條絵里』とはあだ名で呼び合う仲ということに。よほど仲がイイのだろう。

『東條絵里』は少し(困った顔)で(オドオド)し、しばらく考えてからポケットから取り出したスマートフォンでどこかに電話をかける。


しばらくして、着信相手が出たのかスマホを持つ手が変わる。両手でしっかりと持っており、落とさないように丁寧な仕草をしている。



「あ、ごめんね。今会議中だった?ごめん!! それでさ…………一旦力解ける?……うん、今アッちゃんとお友達といるの…………わかった。20分だけお願いね……ありがとう」



会話が終わったのか、スマホから耳を離して通話を終える『東條絵里』

しかし、そんな通話もお構いなく神宮寺と霧島は。無視して会話を続けていた。

正確には、霧島のお弁当のおかずを食べてその評価をしている。




「この揚げ物酸っぱいな。梅でも入れてんの?」


「よく分かったな。鳥のささみを二つに割って間にシソと梅肉を挟んだものだ。こいつは自信作だぜ、なにせ風味があるんだから」


「それにしても梅がキツイな。もう少し抑えたほうが上手くなるぞ」


「そいつはいい参考になる」



『東條絵里』の事などもはや眼中にもない感じで話しをしていた二人。


急に空気が変わったような気がするのを神宮寺は肌で感じた。まるで、人が一人増えたようなそんか曖昧とした感覚を。



「えーと、じ、神宮寺くん。……こんにちは」



声を掛けられる。そのこえはか細くて大人しい少女の声だったのだが、その声をかけた少女を見てドキリとした。



「…………えーと、まさかだけど、東條絵里さん?」


「う、うん!」


「テレビに出てるあの人気アイドルの?」


「ま、まあね! 」



瞬間、目の前にある情報が許容できずに止まっていた神宮寺。おそらく隣にいる霧島も口を開けているだろうか。ヨグは知らないが。



「え、なに!? もしかして東條絵里ってうちの学校の生徒だったの!?」


「そうよ」


「アリアは何でそんな平気な顔ができるんだよ!! つーか、人気アイドルとアダ名で呼び合うとか羨ましいなガラパゴス!!」


「おーけー、昼食の前にちょっと運動しちゃおっか」



2分後、アリアにパンチ12発を顔面に浴びて腹パンを6回やられた神宮寺はそのまま屋上の地面に転がり、ビクンビクンと痙攣していた。



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