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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
最初の騒動
29/88

白い手///やだかっこいい!!

儀式の根本を纏めていた界外術師と神が倒れたその顛末の映像を、スマホから流してニアに見せつける神宮寺。



「……他にも協力者がいたってわけ?それで儀式が失敗したのなら理解した。でも、それじゃああの神もどきが言ったことは………… まさか他の大勢の界外術師も協力をしているの?」


「お前は本物って意味を理解した方がいい。良いか、この東京が一つの結界になっていてお前がその中心人物なんだろ」


「だからなんだって……」





そこでニアは初めてさっきの映像で言ったセリフを理解し、同時にビルの外側に目線を移す。

そして、今下で起きていることを、そのまま口に出していた。




「まさか…………」


「そう、俺も信じらんねーけどこれが今起きているんだ」





それは、こんな事だ。





雷門前の広場、そこは通常なら夜でもひっそりと賑やかな場所だが、今は警察のパトカーや車両が周囲を囲っている。

そして通常なら拳銃を抜いてはいけない日本の警察官達が、みんな拳銃を取り出して構えている。


その銃口の先には、ピエロの格好をした大きな人間のようなものがナイフを片手に子供を二人抱えていた。

そして、その側にはフードの怪しげな男が佇んでいる。



『君達! もう包囲されているんだ。大人しく投降しなさい!!』



警察官の1人がパトカーの向こう側から拡声器を使って宥め、自首を呼びかける。

しかし……。


「ニア様の計画の邪魔をするな! このガキの命が惜しいなら、大人しくしているんだ!」


フードの男が興奮気味にそう怒鳴ると、それに同調するようにピエロの方も、子供達により一層ナイフを近づける。


警察官達は焦っていた。

このような事件自体が初めてではない。

しかし、思うように動けなかった。



「どうだった!」


「ダメです、応援は無理です! 東京タワーの化け物に警視庁や他の区警の大半が行ってしまい。こちらに人員が回せないと」


「他の場所の化け物は片付いたのか!?」


「えぇ、外部の介入で退治したそうなんですけど……。なんか赤いコートでマスクをつけた女が鎌で切り倒しているようです。信憑性のない情報だと、突然簡易トイレが現れてそこに引きずり込んで消えたとか……。ウチを舐めてるんですかね?」


「知るか!! とりあえずあの子供達を……」



東京中に現れた化け物の対処に、警視庁側の人員不足と命令系統に支障が出てしまって迂闊に行動できなくなっていた。

今彼らが出来る事は、犯人を宥めると。無線機を錯綜する嘘のような情報の中から本当を探し出す作業がやっとだ。


そうして子供達の解放に、どうするか悩んでもう一度犯人の方を見たその時。


「…………おい、俺は浅草に10年はいるんだが。パトロールの時にちゃんと確認しているんだ」


「なんの話ししてるんです?」


「いや、犯人の足元にいつの間にかマンホールがあるんだ」


そう10年以上勤務している先輩の言葉に従って、新米の後輩は見てみる。


確かにあった。 しかも珍しい長方形のマンホールだ。

そんな謎のマンホールの出現に目を向けていた2人。だが、フードの男は気付かないようで。今度は自分の懐からナイフを取り出して子供に突きつける。


「あはははは!! おいおいおい! 早くニア様の計画がかなわねーのかよ!! なら仕方ねぇ、こうなったらガキを今から殺す。俺たちの本気を見せてやるよぉ!」


興奮が昂ぶっているのか意味不明な事を警察に投げつけるように言うと、そのナイフでピエロが抱えている子供のウチ、男の子の方の顔にナイフを近づける。


警察が息を飲んでゾッとした。その刹那。



男の足元にあったマンホールが勢いよく開き、そこから長くて白い手が男とピエロに向かってたくさん伸びてきた。


「な!?」


男はとっさの事に行動が遅れてしまい、腕や手、さらには顔や頭までがっしりと掴まれてしまい。そのままマンホールの中に引きずり込まれていく。

ピエロに対しては、すごい速さで伸びた手がピエロの体を貫き、残りの腕で子供達を優しく掴んで保護するように慎重に扱う。


子供達をゆっくりと地面に置くと、白く長い手たちはピエロの巨体をすごい力で引っ張る。必死で抵抗することも無意味とするように、その巨体が入らないマンホールの中に形が変わるように詰め込まれ、ようやく入った。


あまりの展開に口を開けて唖然とし、何も言葉を発せずにいる警察官。

だが、マンホールの蓋を掴んで今にも閉めようとしている白い手たちに向かって、助けられた子供達は元気よく腕を振ってお礼を言った。



「ありがとうねお手手ちゃん!」


「わるいひとには、はんせいのおせっきょうしてね!」



笑顔で、しかも曇りなく心のそこから感謝の言葉を言われた『都市伝説』の《マンホールの向こう側から》達は、照れ臭そうに手を小さく振り、何事もないように蓋を閉めてマンホールごと消えた。


それを見ていた後輩警察官は、無線機に驚きのあまり棒読みの声で報告した。


「……えと、こちらに浅草雷門前。事件解決。人質は保護。犯人は………………」



少し考え、間を取った後にちゃんと言い切る。


「……善良なマンホールの白い腕が連れて行ってしまい現行犯逮捕できませんでした」


そう答えたすぐ後に、本部から無線で詳細を言えと怒鳴り口調で言われてしまったが。どう説明すればいいかわからず、沈黙してしまった。



同じく、藁人形のような化け物を日本刀で切り裂いた鎧武者がいた。


違う場所で、全身包帯の巨人を鎌を持った婆、素早く走る婆が巨人を圧倒し、足を一刀で断ち切った婆がいた。


空中で、背中に翼が生えた藁人形の群れを、旧日本兵の格好の軍人達が撃ち落としていた。


それぞれの場所で、『約束された盤上』の構成員と戦闘を行い、鎮圧する謎の勢力。



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