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界外の契約者(コール)  作者: 瀬木御ゆうや
最初の騒動
1/88

1話 start@世界が招く異物

始まりはある路地裏のドタバタからだった。


細く狭っ苦しい道を、数名の柄の悪い少年たちが1人の少年を追い駆ける。

追われている少年は、霧島 弾という名前を持ついたって普通の高校生だ。


「あーも! なんでこんな時間にあんな所でたむろってんだよあーゆーのは!」

そんな事を叫びながら目の前に置いてあったポリバケツを走りながら掴み、走るスピードを保ったまま背後に投げる。

柄の悪い少年たちの先頭を走っていたやつの顔にポリバケツが激突する。

ポリバケツの勢いが強すぎたのか、後ろの少年数名も巻き添えに、路上に思いっきり倒れる

ポリバケツが激突した少年は気絶してるのか動かなかったが、一緒に倒れた少年達は、倒れた少年と散らばったゴミを退けながら必死で立とうとしている。

それを好機と見た霧島は、即全速力で狭い路地裏を駆け出す。


読者のみなさんは話の展開についていけないだろう。なので説明する。


それは6分前の事だった。


夜のゲーセンで夜遊びしている女子高生をナンパしたらその女子高生の彼氏(ポリバケツでダウンしたやつ)が怒って手下連れて追いかけてくる。

ここまでは『あるある……ねーよ! 』的な自業自得で可愛くボッコボコな展開だったが。問題はその手下の数だ。


「ゲーセンの客全員あいつの手下って分かるわきゃねーだろ! どーなってんですか、最近の高校生の派発争い的な勢力図ってのは! 武○戦線とかの精鋭じゃない分マシだけどよ!!!!」


背後から追ってくる不良は軽く30人は超す。 それが手下の上限ならまだよかった。だが、ゲームセンターではその2倍は軽くいた。先回りしてこないとは限らない。

霧島はその他のメンバーが先に家に帰っていることを祈りながら路地を曲がった。

曲がった先の目の前の道にわんさか人が詰まってました。


「いらっしゃーい……」


茶髪のお兄さん的な人になんかおもてなしされた霧島だったが、手に持つ鉄パイプが月夜に光って怪しくテカって『それはアレですよね? 人殺さない程度に痛ぶるんですよね?』と言う懇願が頭によぎる。けれども、茶髪のお兄さんの後ろの柄の悪いお兄さんも同じ鉄パイプを持っている。

ある者は壁にガンガン打ち付け、ある者は右手に持った鉄パイプを地面にカンカンと鳴らし、ある者は鉄パイプをグニャリとひん曲げた。

そんな絶望的な状況の中、霧島は顔をキリッと決めて最高のイケ顏で第一声を発した。


「……そこ通っていいっすかね?」


茶髪のお兄さんが無言で霧島の頭に鉄パイプを振り下ろした。

ゴギッ

その音が合図だったように背後にいた不良達も鉄パイプを持つ手に力を込めて、地面に倒れた霧島を叩きのめす。

やがて霧島を追いかけていた他のメンバーも合流して同じように霧島を傷めつける。


惨劇が始まった。



霧島は自分がなんでこんな目に会うのかさっぱり分からなかった。

理由としたらやはり人の彼女にナンパしたからだろうか。

でもそんなのしらねーし。

つーかおれはわる……く……ない……よ……。


不良達は気付かない、霧島が頭から大量の血を流してしまいショック死間近なのを。


人間は死ぬ間際に走馬灯を見る。その走馬灯を霧島 弾は目の当たりにしている。

自分が生まれた頃、3歳の頃の小さい頃の自分、小学校に入学する前の父と母の懐かしい姿、少女、小学4年の時の初恋玉砕時の自分、少女、小学校卒業の、少女…………


………少女?


ふと気がつくと走馬灯は消えていた(消えているのは表現がおかしいが本当だ)。

気づくと辺り一面真っ白な世界に立っていた。


「なんだ……? まさかここがあの世ってやつか」

「正解とも不正解とも言えないわねー」


突如自分の耳許で誰かが話しかけてきた。気づくと後ろに少女がいた。

金髪のショートヘアーで帽子のようなシュシュを付けており、服装は青いTシャツにヒラヒラなパーカーを羽織り、下はジーパン。

霧島には全く身に覚えがない人物だ。


「誰だよお前?」

「あ?お前ただの人間のくせに生意気に神様

をだれ呼ばわりダァ?」

「神様? 」

「何その『憐れな子供を見る親の顔』は」

「だって子供じゃん」


少女は確かに子供だった。正確には背丈的に。


「子供じゃねーよ憐れで愚かしい人間。私の名前はヨグ=ソトース。この空間の神様だよー?」

「神様?」

「そう」


ヨグ=ソトースと名乗る少女は霧島の額に人差し指を突きつける。

すると霧島の脳裏にある映像が流れ込んできた。

大勢の人相の悪い男たちが、手に鉄パイプやら角材を持ち、それらを倒れている血まみれの男に振り下ろしている。

倒れている男はうつ伏せで顔が見えないが、男の後ろ姿や茶髪に染めた髪が見覚えある事に霧島はきづく。


「……もしかして、俺は殺されたの?」

「いーや、その一歩手前ってところかな」


自称神様のヨグ=ソトースは涼しい顔で霧島の額から指を下ろす。

そして、それに呼応するように霧島は頭を抱えてしゃがみこむ。


「マジかよ………。俺のたくさんのねーちゃんとキャッキャウフフする夢が終わったっていうのかーー!!」

「……やっぱりコイツ、やめようかな」


本気で涙を流す霧島弾。その涙を流す理由に呆れるヨグ。


「まぁ、いいか。ところで、あんたはまだ死にたくないでしょ?」

「なんだよガキンチョ、お前が神様だったとしたら俺を生き返らせてくれんのか?」

「……神だっての。それにお前を生き返らせるためにこの世界に呼んだんだし」

「?」


神と名乗る少女は、ヒラヒラなパーカーに包まれた腕を前に出しニヤリと笑う。霧島はその気味の悪い笑顔に一瞬ゾッとした。


「私の『界外』の術者になってくれない? そしたら助けてあげる」




不良達は意気揚々としていた。いや、正確には興奮していた。

実は彼らは【フラッグ】と言う不良グループのメンバーだ。

【フラッグ】は数年前に東京を中心とした高校生の間で結成され、創立者なる人物のカリスマ性に人気を集め、小規模な不良集団を次々と取り込んでいき出来上がった巨大な不良集団組織だ。

【フラッグ】では幹部への忠誠心が高ければ高いほど、次の幹部に選ばれるシステムになっている。

そして今、一番下の幹部であり、ここらの路地裏を仕切っている自分たちのボスが、先ほどこの男に倒されてしまった(鉄パイプ組は知らない模様)ため、今ここで自分たちのボスを倒した男を倒せばボスに恩を着せられる。

低脳ながらにそう考えた下っ端達は、我先にと男を傷めつける。

たとえ、この男が死んでもこの人数だ。自分が殺したとは限りなく無い。

それにこの路地裏には監視カメラの無い抜け道がたくさんある。そこを通っていけば大丈夫なはず。

しかし、そこまで考えが及んでいるのかは彼ら自身分からない。

もはや幹部になりたいのかい、サドになりたいのか、ワケもわからずやっているのか。彼らは興奮のあまりその理由すら忘れていた。


だが次第に鉄パイプで叩いても何の反応もしなくなり、男が死んだのだと悟って数名が冷静になろうとしていた。そんな時だった。



突如、倒れた男の体から純白の光が迸った。



不良達はあまりの出来事に思わず目を閉じる。

数秒後、まぶたの裏で閃光が収まったのを確認し不良達が目を開ける。

すると、数秒前までそこにいなかった何者かがいた。その人物は、女の子であった。


「……いやー久しぶりに『こっち』に来れたんだね私。うん、やっぱり空気が汚い」


少女は自分の周りをズラリと取り囲む不良達を一瞥してため息を吐く。


「………取り敢えずお前ら半殺しね」


少女はだらりと下げていた両腕を上げる。ぶかぶかの裾から何かが蠢く。

不良達はそれが何かを確認する前に、全員がその何かに倒された。

そしてこの夜、路地裏を理不尽な暴力が支配する。



大勢の人間が倒れた暗い路地裏の小道に二本の足で立っている者が2人いる。

1人は服が汚い赤一色に染まってる男で、もう一人は服装に汚れすらない少女。

赤一色の人物は、フゥとため息をつき少女の真正面に立つ。


「……神様ね。で、俺はあの世で神様と『契約』して今ここにいるんだよな。具体的に俺は何すりゃいーわけ?」


男は面倒くさそうに髪を弄りながら少女に尋ねる。少女の方は、ニヤリと悪意の籠った笑顔を浮かべる。


「そうねぇ、『こっち』側でやる事は色々あるし、まだ『絶対のその先』も不十分ってところだしぃ」


そして少女は一区切り切って右の人差し指を自分のほっぺに押し当てる仕草をする。口から続きの言葉を紡ぐ。


「取り敢えず、先にあんたの願い叶えちゃおうかな? 契約内容じゃ、仮扱いだけどあんたが私の界外術者だし。それに面白そうだし!」


少女は倒れてる不良の頭をグリグリと踏んづけながら楽しそうに語る。

そして、『界外術者』と言う言葉を初めて聞いてこの少女が何者なのか、契約というものがよく分かっていない男、霧島 弾は、その少女の言う『願いを叶える』事に心躍らせていた。

そして


「いいぜ、なんか良くわかんねーけど、お前が神で俺がその『界外術者』ってヤツの契約者で、化け物みたいなお前と対等の立場ならなんでも良いぜ。俺はこんな世界に退屈してたんだ。おい神様、俺の願いを叶えてくれよ」


霧島の顔は、ヨグなる神と同じくらい、いや、もはや対等。気味の悪い笑顔で神に願い事をお願いする。


「--------------」


ヨグはそのドロドロとした願いを聞き入れ、この男が自分の契約者で本当に良かったと感心した。

やがて二人の男女は大勢の人間が倒れる路地裏を後にする。



この時、世界は違う世界の、異なる異物を自らの世界に招き入れ、危機に陥っている事に、そこに倒れる不良達ははおろか、誰も気が付かない。



















そして、あれから一週間後。

場面は変わりある高校の校舎裏に移る。


校舎裏では6人もの少年が、1人の少年を囲んでいる。


「おい神宮寺、テメー調子に乗ってねーか?」

6人の中で特にガタイが良い強面の少年がイライラ気に囲んでいる同い年の少年に詰め寄る。

しかし少年はそのような事を気にした様子もなく。

「いやいや、弱いくせに強がって調子に乗るバカ達よりは全然調子には乗ってないよ」


瞬間、詰め寄って来た強面の少年が右拳を下から上に突き上げるように目の前にいる少年に浴びせる。

ハズだった。

「大体さ、1人vs13人で負けるってなんなの? しかも年上が8人もいて……。【フラッグ】も廃れたねぇ」


アッパーカットを右横に移動して避ける。

単純な作業のように見えるが、強面の少年以外の少年達はそれを見ていた。

目を閉じながら喋っている最中でアッパーカットを避けているのを。

あり得ない。曲芸の類だと思わざるを得ない。

しかも、ただ横に移動したわけではない。

ちょうど右横で囲んでいた強面の仲間がその不幸の矛先となった。

「よけんな! ふざけやがって!!」

強面が自分の左腕を右横に避けた少年に向けてストレートパンチを繰り出す。体勢的に無理矢理だが、当たれば痛いはずだ。

けれど、その左ストレートパンチが少年に当たることはなかった。その反対に

「うげぁ!!!」

少年の後ろにいた強面仲間の顔に拳がメリ込んだ。

少年はこれを待っていた。

すぐさま後ろに仰向けに倒れる強面の仲間を乗り越える。そして校舎裏から出ようと全力疾走で駆ける。

「てっめぇ! 待てや神宮寺ィ!!」

背後からは少年に向けての罵声と駆け足が聞こえる。だが、そんなものは関係ない。


「ただの人様が、俺を追えるわけねーだろ!」


神宮寺は目の前にそびえる校舎の二階の窓を目標にする。

目の前に広がる校舎の真っ白な壁の直前。全力疾走で駆けていた足に思いっきり力を入れ、垂直にジャンプする。

そしてジャンプする際に上に挙げていた両腕を使って、二階の窓辺にしっかりと掴まる。さらに腕に力を込めて自らの身体を内側に入れる。

ふと、神宮寺は背後をチラリと見る。

見ると強面の男が顎をあんぐりと開けながらこちらを見上げている。

ざまみろ………!


内心でそう嘯いたが。窓の外、強面は本当に小さい声で、後から来た仲間達に呟く。

「……なぁ、あいつが今入った窓って女子更衣室じゃねえ?」


……さて、この物語の主人公でもあり、序章で天才的な逃げ足を披露した高校2年生の神宮寺 孝作。入った二階の窓の部屋である更衣室、目の前に広がる更衣途中の女子生徒たちにボコボコにされて、部屋にいた女子全員に窓から投げ落とされる。







これは神と人間の歪な関係を正す物語。



その物語が今、幕を切って落とされる。







【あとがき】


小説とか初めて書いたとか嘘をついてみようか考えたのだが、めんどくさそうなのでやめる。

どうも、瀬木後 裕也です。

今回も思いつきで書いたんだけど続けるか検討中の作品です。

自分は人より発想力が乏しい点があり、この後の展開をどうするかまだ未確定なのです。

でも「書いちゃったし連載頑張っちゃおう」となんか心の中で納得して連載頑張ろうと思います。


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