きっかけと友達
クッソ!なんで俺がイジメられんだよっ!
そりゃオタクで冴えない奴って自覚はあるし、スクールカーストで下の方だってのも解るけどさ!中学からの友達が別クラスになって孤立しただけでDQNのターゲットになるだなんて酷いだろっ!しかも物を隠したりする頭を使った陰湿なやつならまだしも殴る蹴るの直接ダメージがあるイジメとか昭和かっ!
「ゲッホゲッゴボエエエエぇぇぇッ…」
うえぇ、周りの声が遠くに聞こえるよ、また吐かされた。この腐れDQN共は俺が腹パン何回で吐くか賭けてやがる。んで賭けに負けたDQNにリンチされるというパターンになるわけだ。顔に傷を付けないようにやる小賢しさを勉強に向けろよ蛆虫共っ!
ん?何時もの高笑いと蹴りが来ないな?俺の吐いたゲロに押し付けるように踏んだりして来るのに?
顔を上げて見てみると、熱くなった耳の穴が冷えてきて口の酸っぱさと喉に絡む胃液に意識が行った。と、周りの声が聞こえてきて、視界に信じられない光景が映った。ハハ、今日俺の命日かも。何せ学校側も腫れ物扱いする大伴大治郎と蔵門阿郎が居るんだもん。二人共二メートル近い巨漢な上に二月に起きた事件のせいで部活に入れず常にイライラを撒き散らす、言わば爆弾みたいな二人だ。幸い暴力をふるったりはして無いし、最近はトゲも取れてきた感じがしたんだけど、そうですか。俺でストレス発散ですか。せめて遺書をしたためる時間を下さい。
「お、大伴と蔵門っ!何のつもりだよっ!」
?DQNが慌てていらっしゃる。どういうコトだ?てっきりスクールカースト番外の二人が俺のイジメに加わると思ったんだけど。あ、実は優しい二人が俺に遺書を書く時間を設けようとして言い争ってるのかな?よ〜しそれじゃあ調子に乗って家族にバレると不味いデータを消去させてくれるように頼んでみようかな?
「なぁーに、イジメの現場を見過ごす程俺たちは腐っちゃいねぇってコトだよ。」
ニヤリと悪役顔で笑いながら言う大伴さん。俺にとっては嬉しい展開なハズなのに鳥肌が立つくらいの恐怖を感じてるよ。
「自分は大の字が言う程殊勝では無いが、胸糞悪いのは変わらんな。」
へー、蔵門さんは一人称自分なんだ。しかもよく見ると中々のイケメンだな。あ、何か踏みつけた。視線を下に向けると、うわぁ、ゲロ吐いた俺が同情する位悲惨な状態のDQNが一人居た。鼻は折れ曲がってとめど無く血を吹き出して居るし、口からは俺と同じくゲロが出てる。あ、しかも下顎が斜めになってるから顎が折れたか外れたかしたんだろうな、あれ。
そこからの展開は言うまでも無く、逆ギレしたDQN共を筋肉の塊二人が一方的に蹴散らして終わった。でもね、DQN共だって頑張ったんだよ。途中からナイフとか特殊警棒振り回して一矢報いようとしてたんだよ?自転車のチェーンを鞭みたいに使ったりしたんだよ?どれもこれも俺のイジメに使われた物だったから変な思い入れがある物ばかりだったけどさ。うん。
大伴さんは柔道部らしくコンクリの壁にDQNを叩きつけたり武器持ちに非常なる関節技を決めて腕をへし折ったりしてたね。
蔵門さんの方はラグビー部だからマウント取るのかなとか思ってたけど、違ったね。肘や膝を容赦無く打ち込んでミドルキックでトドメを刺すというムエタイスタイルだったよ。しかも試合とかじゃ使わないような関節に打撃を叩き込んで潰すっていうエグい技を使うという。DQNの叫び声が響いて、マジに阿鼻叫喚の様を見てしまい意識が遠くなったわ。
もう俺は意識飛んでたね。だって気付いたら校長室でコトの顛末を先生に話してるんだもん。んでその日は家に帰されて、仕事を急遽キャンセルして戻って来た両親と話し合い。年甲斐も無く泣きながら親に謝ったよ。父親も母親も泣きながら許してくれたし、泣きながら気付いてあげられなくてゴメンと謝ってきて余計に泣いてしまったわ。
その後は大伴さんの家と蔵門さんの家にお礼の電話をして、VRMMOの知り合い達にメッセージを送って寝た。明日を気にしなくて良い、久しぶりの安眠だった。
翌日、両親と共に学校を訪れて事後処理の手続きをした。大伴さんと蔵門さんもそれぞれ両親と来ていた。結果としてDQN達は全員学校を辞めることになり、裁判もするコトになったようだ。おぉ、父と母の本気を見たね。んで俺を助けてくれた二人は特にお咎め無しだった。やり過ぎな様に見えてDQN達が武器を持っていた事や俺に対してそれらを使って酷いリンチをしていたためだ。後味が悪くならなくて良かった。きっと我が家の両親が本気を出した結果だろう。
この日はこのまま解散となった。明日から普通に授業が始まる。
そして次の日、俺は二人に声を掛けた。