表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/13

Ep.7 断火の顎(アギト)

十勇士の集結という奇跡的な光景を切り裂く、たった一つの怒号。


「ええぃ、しゃらくせぇッ!! 十勇士だか何だか知らねえが、てめえら全殺しだぁ、コノヤローーーーッ!!」


吠え猛る五家領「闘神」ランドー。 アイルへ向かってイノシシのように突進するが、その暴威が届くことはない。


影のように割り込んだ「無頼」アグロヴァルによる、挨拶代わりの掌底。


大気が破裂したかのような乾いた衝撃音。 巨漢のランドーがボールのように吹き飛んでいく。


「無粋であろう、小僧。場をわきまえよ」


ランドーが血走った目で起き上がる隙を突き、今度は死角から襲いかかる「戦神」スコールズ。 愛用の大戦斧『天蓋崩し』が、アグロヴァルの後頭部へ向けて、渾身の力で振り下ろされる。


「はっ、馬鹿め! 貰ったぜッ!! 戦技、『天落轟籟てんらくごうらい』ーーーッ!!」


戦場をつんざく、硬質な金属同士の甲高い残響。


だが、砕けてなどいない頭蓋。 それどころか、直撃を受けたはずの彼は、首をコキリと鳴らして振り返る。


「なにぃ~~ッ!?」 「いや、確かに技は喰らった。……だが、俺の魔円盾(イヴァリスの加護)が衝撃を十分の一まで減衰させただけだ」


呆然とするスコールズを尻目に、背後の竜王へ視線を向けるアグロヴァル。


「おい、トカゲ殿。図体が邪魔だ。人化してくれんか」 「あぁん? 誰に口聞いてやがる」


こめかみに青筋を立てるヴェロンだったが、「賢者」ガレスベルクに「味方を踏み潰しますよ」と冷静に諭され、渋々その巨体を収縮させる。 光の中から現れたのは、歴戦の傷跡が刻まれた強面の男。 彼は不機嫌そうに獲物を探して視線を彷徨わせ――スコールズで止める。


「おい、クソガキ。さっき付けたこの傷の礼、キッチリ返させてもらうぜッ!」


ヴェロンが右手をかざす。 詠唱など不要。彼の言葉そのものが、世界を書き換える「竜語魔法」。


「『竜呪ドラゴンスペル』――断火だんかアギトッ!!」


裂ける空間。スコールズを飲み込む漆黒の炎。 それは炎の形をした竜のあぎと。回避も防御も許さぬ、絶対的な捕食行動だ。


「うぎゃぁーーーッ!!」


黒煙と共に空へ消える、断末魔の悲鳴。


十勇士の圧倒的な武力。 誰もが勝利を確信した。 そう、この瞬間までは。


東の空から舞い降りる、四つの影。 クロスロード最強の「四聖帝」。 その一人、「断罪のクシャルカン」が、ゴミ屑のように無造作に放り投げた「何か」。


「こ奴は、貴様らのお仲間であろう?」


ドサリ。 重苦しい音を立てて転がるむくろ。 見た瞬間、凍りつくアイルの思考。


「……嘘、だろ?」


そこに転がっていたのは、十勇士最強の一角にして、不死鳥の力を宿す「炎帝」エリオン。 だが、氷塊のように冷たいその体。完全に消え失せた命の灯火。


「何だとッ!!」 「ありえない……っ!」


震えるガレスベルクの声。 不死身とさえ謳われた男の、あまりにもあっけない死。 ノートレッド軍の心臓を鷲掴みにする、絶望という冷たい手。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ