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1.2 潮見美月:日常からの違和感
(優斗の隣は、いつも私なのに)
美月は、自宅の窓から、優斗と古川がバイト先に向かうのを見送った。遠くには、赤い中の島大橋が見える。あの橋は、美月にとって**「夢の象徴」であり、「優斗と二人で描く未来」**の象徴でもあった。
優斗がバイトを始めたことは、美月にとって小さな、しかし無視できないショックだった。優斗はいつも美月の隣にいた。何か困れば、美月が笑って「大丈夫だよ」と言って、優斗の頭を撫でてやれば解決した。優斗が目標を持てないことすら、「いつか私が導いてあげればいい」という美月の支配的な優しさに繋がっていた。
しかし、優斗は突然、美月の知らない**「新しい世界」**へ飛び出した。
「なんで私に相談してくれないんだろう」
優斗を変えるきっかけ。それは美月自身が与えるべきものだと、美月は信じていた。優斗が自分ではない誰かから影響を受け、美月の知らない**「大人」になってしまうのではないかという微かな違和感と不安が、美月の胸を締め付けていた。その不安は、まだ名前のない感情だが、美月の「日常」**を脅かし始めていた。