1.1 佐倉優斗:年上の先輩の焦燥
初めての投稿なので緊張してます。反応が多いととてもうれしいです!
東京湾に面した工業都市、木更津。潮風と、平日でもアウトレットモールに向かう車の渋滞が、俺、佐倉優斗の日常だ。
高校二年生。学校では一応、年下の後輩たちから「佐倉先輩」と呼ばれる立場にある。だが、その言葉に、俺はいつも薄っぺらさを感じていた。先輩としての権威も、将来への夢も、何一つ持てていない。ただ惰性で学校に通い、友達と騒いでいるだけ。
「優斗、またぼーっとしてる」
自転車の隣を走る親友の古川颯太が、軽いノリで俺の肩を叩いた。
「おい、颯太。そんな大きな声出すなよ。バイト行くんだから」
「マジで緊張するわー、じゃなくて?つーか、なんで今更バイト?優斗は潮見がいれば人生安泰だろ」
古川の言う潮見は、俺の幼馴染、潮見美月のことだ。美月は俺とは対照的だ。あいつは昔から、**「将来、中の島大橋が見えるところに、自分のカフェを開く」**という明確な夢を持っている。その夢に向かって、彼女はいつもキラキラしている。
「安泰じゃねえよ。アイツは目標持ってんのに、俺は何もねえんだ。『お前、何のために生きてんの?』って言われた気がしてさ。金稼ぐのもそうだけど、自分を変えるきっかけが欲しかったんだ」
古川はニヤニヤするばかりだ。「ふーん。ま、いいんじゃね?バイトの先輩に年上の美人でもいれば、人生の目標も捗るだろ。優斗も一応、学校じゃ先輩なんだし、堂々としとけよ」
俺は「恋愛目的じゃねえ」と否定しつつも、心のどこかで、自分より立派な年上の誰かから影響を受けたいと願っていることを自覚していた。俺たちが目指すのは、木更津の観光客が集まるアウトレットモールにあるファミレス、『メリー・デイズ』。高校生活の後半戦に向けた、俺の**「非日常」**への第一歩だった。