旋盤
「みんなは既にフライス盤の授業を受けている。すると話が早いわけだ」
今日から始まるのは"旋盤"の実習。
「"旋盤"というのは、フライス盤と違い、"品物を回して"、"固定した刃"をそこに当てて削る」
まず座学を受ける。
一通りの基礎知識を頭に入れた上で、実際に品物を加工する時間になった。
「ここのハンドルを回してギアを300に入れる。そうして、レバーをこっちに倒すと、チャックが回転する」
「削るときは仕上げ用に10㎜残して加工しろ。200㎜で物を仕上げるなら210㎜だ」
「自動送りという機能もある。これを使うと自動でゆっくりと台が動き均一に仕上がる。ネジを切るときなどに使うこともある」
実際に機械の前に立って、指を指し、動かしながら指導をしてもらう。
今回、旋盤を教えてくれるのは笠原という年配の先生だ。
ちなみに、新米の栄田先生も私たちと同様に教室の隅に立って、メモを取りながら聞いていた。
「今日は黄銅の丸棒を加工してもらう。段差を作って、最後にヤスリがけをして仕上げをする」
説明を聞き終わり、材料の丸棒を受け取って機械にセットした。
更にバイトと呼ばれる金属の刃を刃物台に取り付ける。
「では、レバーを倒してチャックを回して!」
レバーを動かすと、丸棒がセットされたチャックが回転を始める。
目では追えないくらい早い回転だ。
「ハンドルを回して、刃物台を動かす! 品物の端に当たったら、そこを0に合わせて!」
刃物台を動かし、回転する丸棒へと刃物をゆっくりと近づけ、当てた。
細い切粉と呼ばれる金属屑がぴゅるぴゅると削りだされる。
(ハンドルの目盛りを0に合わせて・・・・・・)
「そこから10㎜だね」
様子を見守ってくれていた栄田先生が声を掛けてくれる。
「はい」
返事をして、10mm分ハンドルを回して棒を削る。
削った後はピカピカの端面となっていた。
「オーケー! 刃物台を少し戻してから、いったん回転を止めて、次の指示を受けてね」
「わかりました」
機械を止めて、一息つく。
そのあとの作業も特にミスすることなく実習を終えることができた。
「いやぁ、緊張したねぇ。ネイル禁止っていうのもよくわかる」
「確かにね」
「まぁ、パソコンいじるから僕はしたことないけどねぇ」
声を掛けてきたのは後ろの席の鈴木さん。
「あ、スーちゃんって呼んでね。ずっとそうだから」
「家では? 鈴木のスーちゃんでしょ?」
「それは摩耶って呼ばれるけども。そっちもルカとかでしょ?」
春花の下をとってルカらしい。
というか、ちゃんと私の名前を憶えているらしかった。
「う・・・・・・」
図星だった。
私はネットでの名前はルカ。
物心ついてから、色々するときにこの名前を使うようにしたのだった。
「あ、なんかマズかった? じゃあ、"はるるん"にしよう。可愛いし」
「じゃあそれで・・・・・・」
私の呼び名、はるるんになる。




