製図と学食
「製図は暫くの間は教室でやります。理由は書き方、読み方を知らないとダメなのでね」
「と、その前に製図で使う"字"の書き方を覚えよう。練習帳を出して。忘れた人はいないかい?」
宮川先生は教科書、ではなく製図用文字練習帳というものを出した。
私たちも机に練習帳を用意する。
「ここに、お手本にのっとり、"字"を書いていこう」
「君たちが書くのは"文字ではなく"、"図形"。誰が見ても間違いなく同じ。そういう意識で書く」
練習帳は小学生でやったひらがな練習や漢字練習と同様のものだ。
それに数字やアルファベットもある感じ。
「今は全部パソコンやタブレットでできるから必要ない、な~んて意見もありますけど、授業なんでねぇ」
「とりあえず今日の1時間はひたすら"字"を書く!」
私たちは言われるがままに、ひたすらに書き取りを行った。
「1学期終わりに書き取りテストもやるので、この字体を日常的に使うのもいいぞ」
ゆったり書いているうちに1コマが終わった。
「丸文字、せっかく可愛く書けるようになったのに~」
きっとこの先の授業で完膚なきまでに叩きなおされるのであろう。
横の席の三滝さん。
たしかサッカー部、が頭を抱えて机に突っ伏した。
(ここが学食かぁ~)
お昼休み。
40分ある昼食時間だ。
今日は珍しく母が寝坊をしたため、急遽学食を利用してみることになった。
学食の場所はB棟の1階。
(食券を買えばいいのかな?)
ちょうどいい感じに券売機が空いていた。
ポケットから財布を取り出して、券売機の画面にタッチ。
券売機の画面には上から、ごはん物、麺類、サラダ、デザートの順でずらっと並んでいる。
ごはんや麺の量も普通に大盛、小盛りも選択できるみたいだ。
値段のほうも、豪華海鮮盛の1000円が最高額で、一番安いものは素うどん180円だった。
(今日は・・・・・・カレー、カレーにしよう。あ、お肉追加っていうのがある)
ただのカレーではなく、焼肉カレーを押す。
チケットと600円のお釣りがでてくる。
お値段400円だった。
カウンターで半券をちぎってもらい、残りの券に書かれた番号で呼ばれるのを待った。
(貰ってから席を取るのでいいよね?)
食堂の席の埋まり具合はまばらだった。
それもそのはず、まだ全校生徒は1年生分しかいない。
既に3年生の分まで席を作っているようで、現在の使う生徒数に対しては過剰なのだろう。
「18番~、はい、焼肉カレーお待ちどう」
呼ばれたので手元の半券を渡し、お盆に乗った焼肉カレーを受け取る。
(お~。お昼にカレーって、イイネ!)
私の家は、カレーを食べるとしても大概夕食。もしくは残りを朝だ。
中学生の頃は毎日お弁当を持って行っていたが、流石に汁の出るカレーを持っていくことはなく、学校でカレーを食べるのは小学生以来だった。
空いている4人掛けのテーブル席に1人で座り、食べ始める。
(・・・・・・甘口かな? そんなに辛くない)
具材が柔らかく煮込まれ、甘め、濃いめのドロリとしたポークカレーライスだった。
(あ、水もとってこなきゃだ)
濃い味に喉が渇くので目を走らせると、カウンターの横に給水機があった。
席を立ち、給水機からコップに水を入れて席へと持ち帰る。
(美味しい。お昼カレー、ハマッたかも)
(そういえば、購買もあるんだよね)
翌日。
C棟一階にある購買に行ってみた。
(コンビニみたいのが丸々入ってるんだ)
なんとカップ麺なども売っている。
電子レンジもあるし、学食で食べている余裕がないときに重宝しそうだ。
(飲み物買って戻ろう)
教室に戻るための時間を考えると、何を買うか決めてこないといけないくらいギリギリの時間だ。
(紙パック・・・・・・いや、ペットボトルの紅茶)
私の席からだと後ろが見えないので暫く気づかなかったが、けっこうみんなは紙パックのジュースを飲んでいた。
もちろん授業中は床に置いて、飲むことはないようだった。
火曜日の5、6コマ。製図の授業。
ついに製図室へと行くことになった。
これまでは記号の説明や図面の読み方、3面図の書き方などなど、1カ月ほど座学を受けた。
今日からはドラフターという製図台と用紙を使って図面を書く授業だった。
「え~、現代ではCADといってコンピュータで製図するのがポピュラーになっています。しかし、結局のところ基礎は手書き。1年生では、この製図室で図面を書いてもらいます」
マイクを使って、全員に声が伝わるように喋る宮川先生。
「まずは椅子の調整からかな? 高さが足りない人は別の椅子も用意できますんで」
ドラフター。
L字型に定規が配置され、定規の端は丸い留め具のようなものにつけられている。
「このように・・・・・・上下左右に定規を動かせます。斜めの角度も、ボタンを押して、動かせるのでつけられます」
分度器を使わずとも、定規を一定の角度にあわせる機能が付いていた。
いちいち分度器を使っていた今までの苦労はいったい・・・・・・。
「"旋盤"の授業を受けた人は、やったことの想像してもらえばわかるけども、今日の課題は"段付き丸棒"だ」
先生が実物を持って、各人の席まで見せに来てくれた。
「はい。見ましたね。今から黒板にフリーハンドでなんとな~くを描くから、君たちはちゃんと測って描いてください」
(えっと、太いほうが24㎝・・・・・・じゃなくって240mmっと)
製図の世界、というか工業系全般の話だそうなのだが、基本的に長さの単位はミリメートル、もしくはメートルだ。
小中で習ったセンチメートルという単位は一般的に使わないそう。
なので、寸法を言うときも、"100"と言われたら、100㎜か100m。
流石に100ミリメートルと100メートル、どちらが正しいかは話を聞いていればわかるだろう。
「絵ならなぁ。簡単なんだけどなぁ」
そう言いながらさっとラフを書いているのは藤川さん。
「いや、うまいけども。でも製図の授業だからね。わかるように図面を描いてくれないと」
先生にツッコまれる。
慣れないドラフターに悪戦苦闘しながら、なんとか図面を完成させ、提出した。




