テストとラーメン
「では、始めてください」
みんな一斉に用紙を裏返す。
4月も終わる、ゴールデンウィーク前。基礎学力試験が始まった。
試験科目は国語、数学、英語の3教科。
間に10分の休憩をしつつ、3教科を通しでやる。
(・・・・・・まあまあかな)
試験が終わって4限目、一応は体育の授業。
デザイン科のA組と合同授業。
体育館で自由に遊んでいいそうだ。
3対3の変則バレーボールとかが行われていた。
そんな中、私は体育館の隅で座って、頭の中でテストの振り返りをしていた。
ひとまずはすべての解答欄に記入ができていた。正解かどうかは別にして。
今、全速力で先生たちが答案のチェックをしているところだろう。
このあと、今日の6限目に返却されるらしいから。
(2000円くらい欲しいよなぁ)
なんの2000円かというと、私の家では、中学生から共通テストや中間テスト、期末テストなどで良い点数を取るとお小遣いが増える。
要は勉強のモチベーションを上げるために吊るされたニンジンだ。
各教科につき、100点満点中70点以上で1000円、80点以上で2000円、満点なら5000円という具合。
ちなみに期末試験だけは特別ルールがあって、全教科70点以上で3万円というものだった。
もっとも中学3年間、1度もそれは達成できていない。
そして平時のお小遣いは月5000円なので、今回、1教科満点を取れば倍になる。
(ゴールデンウィーク、日帰り温泉行けるかなぁ・・・・・・)
来月、中学の時の友人たちと日帰り温泉旅行を計画しているのだったが、どうにも懐具合が心もとない。
湯上りに食べるアイスくらい豪華にしたかったので、テストを頑張るつもりではいた。
・・・・・・いたのだが、怠けてしまった。
なぜだかやる気が出なかった。
(あぁ。おいしい抹茶アイス・・・・・・)
ぼんやりとした時間を過ごし、昼食後、テスト返却の時間。
「テストを返却し、回答だけやって、あとの時間はホームルームだ。次の各教科時間にそのテストの解説をするそうなので忘れずに」
順番に名前を呼ばれ、3枚のテスト用紙が返却されていく。
「柴咲」
呼ばれたので、目の前の教卓へと向かう。
向かうというか立ち上がるだけなのだが。
「・・・・・・」
先生は特になんの言葉も言わず、用紙を渡してくる。
数歩で自分の机に戻って、用紙に目をやる。
(英語、やっぱり全然だめ)
まずは英語、37点という残念な結果。
(数学、普通)
数学は61点。もうちょっとだ。
(国語は78点!)
国語だけはそこそこできる自信があったので、ひとまず追加のお小遣いがゲットできることに安堵した。
「柴咲さん!」
「何?」
今日は部活の会合もなし。
やけに裏返った声で放課後に声を掛けてきた鮎原さん。
「えっと、その・・・・・・」
なんだろう? そんな緊張することって?
「ら・・・・・・」
「ら?」
「ラーメン食べに行きませんか!?」
ということで。
もちろん私は二つ返事で承諾し、学校にほど近いラーメン屋『大桜』にいる。
一緒にいるのは、声を掛けてきた鮎原さんと、彼女といつも仲良しの吉元さんだった。
「けっこうガッツリ系らしいけど、春花は大丈夫そ?」
「どうなんだろ? あんまり外でラーメン食べないからわかんないかも」
「わたしは、大体アリシアに2割くらい麺をあげてます」
小柄な鮎原さんは、体型通りに小食らしかった。
「味のお好みなどはございますか?」
「はい? ん~と普通で!」
「あ、アタシの味噌は濃いめ、硬め、少なめで」
「普通でお願いします」
ということで注文を終えた。
「春花はさぁ、どっから来てるん?」
「鶴見のほう。こっから京急で10分くらい」
「わたしたちは上大岡からです」
「二人はずっと仲いいの?」
「小学生からずっと同じクラスだねぇ」
お互いの小中学生時代の話をしていると、ラーメンが運ばれてきた。
チャーシュー、のり、ほうれん草の乗った豚骨ラーメンだ。
「よしっ」
吉元さんはヘアゴムで長い銀の髪の毛を後ろにまとめ、麺をすすり始める。
「ラーメンは伸びないうちに食うのが一番なんだから。ほれ食べよ」
しばし無言でラーメンを美味しく食べた。
(あ、夕食なしって連絡しなきゃ)
スマホを取り出し、母へと連絡を入れる。
「ついでに連絡先ちょうだい」
鮎原さんと吉元さんと連絡先を交換、しばらく雑談し、その日は解散した。




