フライス盤
「出席番号若い順にそちらの旧型に2人、新型に3人に分かれて実際に切削してみましょう」
3コマある工業技術基礎の後半。
私へあてがわれたのは旧型のフライス盤だった。
「柴咲さん、鈴木さん、まずはこの"刃"を取り付けます」
梶川先生は上が長いUFOみたいな形をしたもの?
タコさんウインナーみたいな形のものを指さす。
「フェイスミルと言います。そちらの細いのがエンドミル」
棒状の、らせんのような形状のあるほうがエンドミルと言われた。
「こちらから差し込んで、利き手とは逆で支持。そして利き手で固定します」
フェイスミルの取り付け方は簡単だった。
差し込んで、固定具をまわして固定。
「フェイスミルは少々重たいので、2人で協力してもらって構いません。では柴咲さん、やってみてください」
外して渡されたフェイスミルは意外と重かった。
(片手で持つと、重さで手がプルプルする!)
「下から差し込んで・・・・・・右手で回して固定。・・・・・・回らなくなりました? ではオーケーです」
ひとまずできたようだ。
一度外して、同様に鈴木さんも行った。
「次に、このハンドルを回して台を手前に持ってきます。そうしたら加工するものを固定します」
先生は正面にあるハンドルを左にぐるぐる回す。
すると台が手前へと移動してきた。
「Y軸ハンドルと言います。右斜めについているのはZ軸ハンドル。こちらは上下に動きます」
先生は次々と指差しで説明する。
「ハンドル手元には動く幅が刻んであります。1㎜分動かせば台も1㎜動く。つまり1㎜削ることができます」
(目盛り細かっ)
「品物を台に固定しましょう。バイス、万力ですね、これに固定します」
万力を締めて、アルミの角材の端を少し出して固定する。
ハンドルをぎゅうっと締めてガタつかないように締めた。
「それでは刃を回転させます。見える位置へ少し下がって。帽子とゴーグルも装着してください」
先生が赤いボタンを押すと、"フウン"という音と共に刃が回り始めたようだ。
(見ても回ってるのかわからない?)
ぼんやり残像のようなものが見える気がするけど、停まっているようにも見える。
「刃が回ってるかどうか、必ずボタンのほうで確認してください。高速回転している刃を見ても確実にはわかりません。触れる場合、必ず停止した状態で行ってください。でないと指がとびます」
先生はハンドルを色々操って、品物を削っていく。
「今回は簡単な"端面出し(たんめんだし)"、これをみなさんにはやってもらいます。わざわざ端面ガタガタのやつ作ったんでねぇ」
先生と場所を交代し、万力に品物を固定するところからやる。
「・・・・・・固定できましたか? そのボタンを押して。・・・・・・では、ゆっくりとハンドルを回して端に・・・・・・」
指示されるとおりに回転しているフェイスミルを品物に沿わせていく。
金属の切りくずがでて、動かした通りに少しずつ端面がキレイになっていく。
「はい、いいですね。X軸ハンドルを逆に回して、品物から遠ざけて・・・・・・」
(つ、つ、疲れた・・・・・・)
工業技術基礎の初めての授業が終わった。
身体的なことよりも、失敗したら・・・・・・という精神的プレッシャーがすごく、とても疲れた。
(あぁ。みんなも同じなんだなぁ)
授業の終わった教室を見回すと、全員、作業着からの着替えこそ終わっているけど、動きがぎこちない。
これを見越してなのか、この授業は昼食前の3コマにぶち抜きで入っていた。
「みなさんお疲れのようですな」
5限目の保健の授業は、昼食後の眠気と疲労から、まるで頭に入ってこなかった。




