文化祭と後片付け
「それはズルいって!」
上田さんは体の線が出る、ぴっちりとしたライダースーツを身にまとっていた。
制服より露出がない、というのを守ってはいるが、流石に攻めすぎの恰好だった。
「化け物要素ないじゃん、それ!」
「肉体改造された超人なんです~」
「・・・・・・上田さん、その恰好でパンフレットに乗るんだよ?」
「マスクつけるから大丈夫で~す」
羞恥よりも勝負に勝つこと優先らしい。
接客する予定の人たちが全員着替えて、1人ずつパンフレットに乗せる用の写真を撮った。
(だいぶんアレなお店感が・・・・・・)
魔女に吸血鬼。ここまではいいとして。
本格的なゾンビと、アニメ感満載の天狗、そしてライダースーツ。
コンセプト的にはギリギリセーフだが、集合すると散らかっている感が否めなかった。
「・・・・・・まあオーケーとしましょう」
写真を委員会本部に提出しに行った。
ギリギリセーフらしい。
そして部活での出し物、というか簡単な展示物だけを作った。
私たちのロボ研はどちらかと言えば文系の部活扱いだ。
今年は活動の記録、なんてものもないので、拾ってきたフリーの動画を切り張りして、こんなことをやる予定だとアピールする場になった。
文化部展示用の教室で延々とループする動画を流しておくだけ。
「こんにちは~」
まず私たち実行委員の仕事は校門前でのパンフレット配りだった。
段ボールいっぱいに入ったパンフレットを来場者に配っていく。
防犯上の観点から、主に家族、学校見学者しか入ることができない今回の文化祭。
最大でも1000人程度だろうと予想されていた。
「どう? 問題なさそう?」
パンフレット配りを他のクラスの委員会の人に代わった。
クラスへ戻り木村さんが聞く。
「暇よ暇」
「だよなぁ」
私たちのクラスは校門からは近いところにあるので、立地は一番有利。
しかし、現在、この学校で最も勢力のあるソフトボール部の出店が屋外テントにあり、そこに人が集中している。
しかも本格的な屋台のようなもの。昼前が近い今、甘い物よりそちらが盛況なのは当然だった。
「一応ウチの妹たちは来た」
近藤さんの写真の下に3枚シールが貼られている。
来店してくれた人に"推し"を決めていってもらうのだ。
他の場所も見回りをして、色々と話を聞いていく。
主に部活紹介のブースが多く、来年の新入生への説明はみんな熱心だった。
「いやー、ウケなかったな~」
私たち実行委員は忙しく、あっという間に終わりの時間になった。
そういって着替えていたのは近藤さん。
ゾンビのメイクを落とすためにボトルを持ち、水道へと向かっていった。
近藤さんに入った票、6票。残念ながら最下位。
これは妹たちと言っていた3票を除くと3票。
最終的に全部で70票ほどが入っており、内半分ほどの30票がライダースーツだった上田さんに入っていた。次点でゆるふわ系の魔女だった村雨さん。女吸血鬼の佐藤さんに、高下駄を履いた天狗コスチュームの藤川さん。
そして18時、早めの後夜祭。
「盛り上がっていくぞー!!」
センターボーカルは村雨さんだ。
ウェーブパーマのかかった髪型は特徴的だった。
「おー!!」
体育館で軽音楽部によるミニライブが行われていた。
私たち文化祭実行委員はというと・・・・・・。
(ここでライトを・・・・・・)
ライブの裏方だ。
事前に配られた指示書通りにスイッチを押していく。歌のどこそこの部分でどうの。
40分ほどのライブが終わり、そのあと教室で解散式をして終わり。
(んんんん!?)
文化祭の後片付けをしていた昼休み。
荷物を空き教室へと置きに行く。
その空き教室で筋トレしている人が居た!
なぜか体操着だし、捻りを加えた腹筋をしていた。
(って、うちのクラスの大沼さんだ)
体育祭のリレーで1位を勝ち取った人。
よく日に焼け、引き締まった体の陸上部。
ドアの前で見ていたら、目があう。
「どうした? 何か用か?」
気が付いたら目の前に大沼さんの姿があった。
心臓が止まるかと思った。
「い、いや。なんで筋トレ?」
「食事の前にちょっとカロリー消費だ。今日は座学ばかりだからな」
「ああ、そうなんだ?」
多少疑問に思うところがあったが、そこはスルーして、
「この荷物、置かせてもらっていいかな?」
彼女は既に腹筋に戻っている。
別に許可を取る必要とかはないのだが、なんとなく彼女からは目上の人の雰囲気がする。
首を縦に振ってくれたので、荷物を運びこむことにする。
空き教室とを往復し、10分かけてポットなどを運んだ。
「これで終わりなんだけど、大沼さんは?」
「ああ、もう終わろう。着替えて教室に戻るよ」
「鍵は持ってるよね?」
「もちろん。職員室に返しておく」
着替えると言った大沼さんを空き教室に残し、私は弁当を食べるため教室へ戻った。




