林間学校
9月下旬。
まだまだ暑い秋の始まり。
私たちは1泊2日の合宿へと向かっていた。バスに揺られることしばらく。
何をするのかというと、昼はカレーを作ったり、夜には星を見に行ったりだそうな。
クラスの団結力を高める目的らしい。
中学生の時は、1年生の4月の終わりにオリエンテーションとして、森林へ行った記憶がある。
「はい、そっちは米の準備~! そっちは野菜切って! こっちは火を起こす!」
中学校と同様、昼は野外でカレーを作る。
2班に分かれ、10人分以上のカレーライスを作っていく。
「俺は監督しかできないから。あと食べるの」
担任の山田先生と引率の宮川先生、それに須藤先生は、私たちの作業を見守る監督。
「なに? マッチ使ったことない? しょうがないなぁ」
「すご!?」
須藤先生はジーンズの太もも部分にマッチ棒を当て、シュっと擦り、点火していた。
横のA班を眺めながら、私は米を研ぐ。
10人分ともなると、一度に水を入れたり、捨てるのも一苦労。
「ヤバイ、焦げてる焦げてる!」
「かき混ぜて、もう水入れちゃっていいよ」
ビシバシ指示を出すのは三滝さん。
どうやらサッカー部の部活の合間に飲食系のバイトをしているらしく、とても手際が良かった。
その次に上手だったのは森田さん。
大柄な見かけによらず手先が器用なようで、巧みな包丁さばきで食材を次々刻んでいた。
「ルー入れた?」
「入れた。けど薄そうかも」
「もう虫がすごくてイヤだ~! 火の近くにいる~!」
虫嫌いの人たちは、火があって虫が寄ってこないような位置にいる。
上田さん、鷺川さん、村雨さんの3人。
「暑いから水分補給しっかりね~」
私たちの服装は体育着、もしくはジャージ。
今日は曇りなので比較的涼しい。30度は超えていないはずだ。
それでも屋外で作業するのは危険が伴う。
交代で屋根のある水道付近で涼む。
「タマネギにウインナー」
カレー作りも終盤に入り、あとは少し煮込んで完成なので、空いている網の部分で焼きタマネギと焼きウインナーをつくる。
どちらも既に木串に刺さっており、宮川先生が用意してくれていた。
「よし。運ぶぞ!」
完成したカレーの入った鍋を力のある男の先生2人で屋内へと運んでいく。
暑い屋外でなく、クーラーの効いた食堂で昼食だ。
作ったビーフカレーはみんなで頑張った甲斐もあって、とても美味しくできていた。
そして部屋に戻り、相部屋の人と夕方まで親交を深める。
部屋割は5人部屋が2つと残りは2人部屋。
希望者は優先的に5人部屋へ入ることができる。
5人部屋を選んでいたのは主に運動部の人達だった。
2人部屋の私の相方は、鮎原さんだ。
夕方に大浴場に入れるらしいが、部屋のシャワーも自由に使っていいと先生に言われている。
なので、部屋に備え付きのシャワーを浴びて汗を流したあと、
「鮎原さんはどうして私をロボット研究部に誘ったの?」
ベッドに寝転がりながら聞いてみる。
「それは・・・・・・。1番簡単に入ってくれそうでしたから」
たしかに私はずいぶんと簡単に話に乗ってしまったので、鮎原さんの見立ては大正解だったというわけだ。
金色の髪をドライヤーで乾かしている鮎原さん。私は先に入ったので既に乾かし済みだ。
「他の4人はどういう理由で誘ったの? 吉元さんは仲いいからっていうのはわかるけど」
「えっと、とにかく5人以上集めないと部活として認められない、と言われてアリシアと最低1人ずつ勧誘することになったんです」
「ふうん。で、鮎原さんが私。吉元さんは誰を?」
「木村さんですね。それであと1人になったんですけど、数合わせでいいならって柏井さんが入ってくれて」
「あ、森さんが最後だったんだね」
てっきり1番やる気のあった森さんは早いうちに決めていたものだと思っていた。
「仕方ないとはいえ、あんまり部活らしいことはできてないよね」
「素人だけでは危険ですから。でも早くロボット作りたいです」
「なんでそんなにロボット?」
「わたしには夢、というか野望というか、があるんです」
とてもまじめな声色で鮎原さんはそう言った。
「ひいおじいさまの会社の復興がわたしの夢です」
「何の会社?」
「紡績場なのですが、近代化について行けず、赤字を出しながらも今でも創業から変わらない手作業で商品を作っています」
紡績というのは綿とかをつくるやつだった気がする。
「そこを、わたしがこの学校で学んだことを取り入れて、もっと現代的な大きな工場にしていきたいと思っています」
「すごいなぁ。私なんて夢、特にないよ。あんまり他人がやってなさそうだからっていう理由で機械科にしたし」
「普通はそれで充分なんじゃないでしょうか? やってみてから合う合わないを決めても遅くはありません!」
「そんなものかなぁ」
そのあとは他愛もない会話をして、夜には天文観察へ。
「全然見えないなぁ」
残念ながら曇りすぎて星を見ることはできず。1日が終わった。
少しだけ鮎原さんのことを知ることができた気がした。




