ペットボトルソーラーカー
「明日から夏休みだ~」
「だねぇ」
空に放った言葉をとられ、後ろの席の鈴木さんに話しかけられる。
「はるるんは何か予定ある?」
「お父さんの会社の保養所っていうの? 長野に1週間くらい泊まるよ」
「里帰りとかじゃないんだねぇ」
「スーちゃんのほうは?」
「僕はねぇ、大分に帰るよ。温泉が楽しみ」
「温泉もいいよね。ね、何かご当地のお土産買ってきてよ。私も買ってくるからさ」
「いいよぉ」
夏休みの予定が一つ増えた。
夏休み中でも、どこかで2日、先生に顔を見せる登校日、というのを指定して顔を出すことが推奨されている。
ロボ研のみんなで、この日を合わせて、部活の集まりのしようということになっている。
話し合って決まったのは、8月の初週と最後の週。
私はお盆の前から長野に行くので、ちょうどよい日付だ。
夏休みの宿題をチマチマと片付けつつ、クーラーの効いた部屋でくつろぐ日々。
特段目標も持たず、ただ時間は過ぎていった。
(あっつい~)
数日ぶりに外へ出た。
今日は登校日に指定した日だ。
10時に学校へ着き、機械科の職員室へ。
「はい、柴咲ちゃんOK。どう? 体調とか平気?」
「大丈夫です」
「うん、わかった。今、他の2人は部室に集まってる。全員来たら私も行くから」
部室に行くと、既に鮎原さんと吉元さんがいた。
「おはよう」
挨拶をして、適当な椅子に座り、3人で雑談を始める。
しばらくして、森さん、柏井さん、木村さんの順に全員が揃った。
「一応部活はやるけど、内申点のため。基本バイトを優先させてもらうから」
柏井さんはチラリと鮎原さんのほうを見る。
鮎原さんはブンブンと縦に首を振っていた。
数合わせでいいか、という話でもしてあったのだろう。
そして、部室で柏井さんの姿を見るのはこれが初めてだった。
高い身長に切れ長の目。教室でもクールな感じだ。
「さあ、6人揃ったし何かやろうよ」
「っていっても作業はできないんでしょう?」
「それは、そう。まだロボットを"自作"できるところまではできない」
須藤先生は、大きなお弁当箱くらいのサイズの箱を3つ取り出す。
「ペットボトルソーラーカー。天気もいいし、よく走るよ!」
「中学の自由研究・・・・・・」
たしかに木村さんの言う通り、クオリティは自由研究レベルのものだ。
しかし、この程度をあっさり作れなければ、自分達でロボットを作り始めるなんて夢でしかない。
2人組になって作り始め、1時間後。
「できた!」
「こっちも」
猛暑の中、みんなで外に出て走らせてみる。
「ありゃ? ワタシたちの逆だわ」
1台だけ逆走していた。
おそらく配線ミスだろう。
「・・・・・・先が思いやられるなぁ」
「まだ、これからです! 2年生になったらもっとスゴイもの作りましょう」
お昼になったので、その日は解散。
家に帰ると、冷蔵庫に冷たい"ひやむぎ"が用意されていた。
水でほぐしなおして、薬味をたっぷり乗せて食べる。
1年生の夏の思い出が1つできた。




