第九話 ラルナの困惑
短めです……
さて、砕いた石みたいな見た目の野球ボールくらいの大きさの魔石が5つに、ツルリとした見た目のバスケットボールくらいの魔石が1つ。
前者がゴブリンから出たので、後者がゴーレムから抜き取った奴だな。結構殺ったけど、これくらいしか集まらなかった。なんでだろうな? これで足りなかったらもう諦めるしかないが……まぁ、預けたナイフの数と同じだし、行けるだろ。
と、言うわけでラルナにコールでアポ取るか。出なかったらメッセージだな。ちなみに紅い魔石は6つしか無いが、【空の魔石】ってやつはそこそこ手に入った。大きさはみんな野球ボールくらいだがな。ついでにゴーレムから取れた素材も使えるか聞いてみよう……。
さて、コールだコール。かけて10秒くらいで出たようで、ラルナの声が聞こえた。
『はいはい、ラルナだよー。どうかした?魂底属性がわからないとか?』
「いや、それっぽい魔石はもう集まったから、とりあえず持っていこうと思ってな。今は大丈夫か?」
『えぇっ、速いね!? わかった、準備しとくから来ていいよー』
「助かる。それと良さそうな素材も手に入ったから、それも持ってくわ」
『ふーん…? ま、楽しみに待ってるから!』
「あぁ」
よし、アポは取れたな。さっさと行こう。
◇◇◇◇
で、【星の鎚】に着いたわけだが。
「よっ」
と中に入ると、
「いらっしゃーい! 用意は出来たから工房に来てー!」
「お、おう?」
こんな会話になったんだが……
「いや、どこから入るんだ?」
どこも開いてないんだが。無理矢理入って運営に怒られたくないぞ、俺は。
「………? あぁ! ゴメンゴメン、招待してなかったね!」
「ん?」
招待?
《プレイヤー・ラルナからの星の鎚・工房への入店招待が届きました》
《星の鎚・工房へ入りますか? yes/no》
なるほど?yesっと。
すると、ワープして……
「今度こそ、いらっしゃい!」
「おお……」
なるほど、店主以外は呼ばれないと入れない所があるわけだ。すごいな。
「じゃあ早速魔石を見せてー!」
「あぁ、これだ」
俺は、作業台っぽい所の上に紅い魔石を全て置いた。ゴーレムのは転がって落ちそうだから、ゴブリンので囲ってだ。
「………えっ?」
「ダメだったか?もっと大きく無いと」
「……………???」
「あれ……? おーい」
なんだかフリーズしてるから、顔の前で手を振るが全く反応が無い。んー?
「はっ、何これ!!?」
「やっぱ小さいか?いかんせん見たこと無くて普通の大きさがわからn」
「逆だよ!大きすぎるし、綺麗すぎるの!」
「は?」
は?………大きいのはまぁ置いとこう。綺麗ってなんだ?
「普通は小石くらいの大きさでも普通なんだよ!? 私が想像してたのはビー玉くらい!」
「………ちっちゃいのでも野球ボールくらいあるな?」
「それに、純度もおかしいんだよ。これ、色は濃いけど、ガラスみたいでしょ?ホントはもっと透明度が低いんだ。でも、これは本当に綺麗すぎるの!」
「確かに水晶みたいだよな」
「これだけでもう最前線攻略組を名乗ってる人たちが買いたがるだろうね。ま、ホントの攻略組は君たちだけどさ」
「俺達が攻略組なのかはさておき、というかそんなつもりは無いが……バスケットボールクラスのは?」
「値を付けたら誰も買えないだろうね」
「つまり?」
「小さいの1つで今回必要な分を十分賄えちゃうね!」
「O・M・G」
なんてこったぁ……。あの苦労はなんだったんだ!ゴーレム1匹で十分過ぎたのかよ!……あそうだ。
「もうここまで来たら全部拘りたいから、これも出来れば使ってくれ」
ドン、とインベントリからゴーレム素材を取り出して作業台に置いた。ラルナは………
「…………!!?!?」
目を見開いて固まっていた。おーん?
◇◇◇◇
しばらく固まった後、ラルナは復活した瞬間に、
「何これ!?」
と叫んだ。いや、なんか東側に行ったら襲ってきたゴーレムの素材ですが。
「東側……しかもゴーレムって……イリーガルロックゴーレム!?」
「イリーガル……?」
あぁ、そういやあいつそんな名前だったな。そこそこ強かったけど名前が長くて忘れてたわ。それにフラーマのあの攻撃とその後のレッサーフェニックスへの進化がインパクト強くてな……
「何で分かったんだ?」
「いやいや、東側が不人気だった一番の理由だからね!? 物理にも魔法にも強くて、攻撃は1発受けたら死に戻りとかいうクソモンスって言われてたんだよ!? それを倒しちゃったの!?」
「あー……それは斯々然々色々あってな……」
フラーマのスキルが思ったより強かった事を伝えて、そのバスケットボールクラスの魔石はそいつの核だとも伝えといた。言いふらすなよとも。
「あそこは鉱石が掘れるから鍛冶師はみんな行きたい所だけど、絶対にアレが襲ってくるから行けなかったのに……」
「ま、まぁ、とりあえず出来ればよろしく頼むって事で……」
頭を抱えられるとは思わなかったが……ダメって言ってないし、良いよな?
「もうヤケクソだー!素材のレベルが高すぎて、多少無駄になるかもだけどそれで良い!?」
「おうっ!? まぁ、良いぞ?」
叫んだ後にいきなりずずいと詰め寄ってくるのはちょっと怖いから勘弁してほしい。しかも結構な剣幕で確認を取られるのも。
「俺が持ってても使い道無いし、良い具合にあのナイフを仕上げてくれれば構わないぞ。あ、ついでにアオイのにも使ってくれ」
「オッケー!でもアオイちゃんはまだ魔石が来てないから、作業が出来ないんだよね……」
「ま、それは素材が集まりきったらで良いさ。よろしく頼む」
そう言って、俺はラルナと別れた。しかし、確かに強かったよなあのゴーレム。硬さだけならヴォルド以上だったんじゃないか?まぁもう倒しちまったから良いか。完成したらメールで教えてくれるらしいから、ナイフの完成を楽しみにしておこう。
「そういえば、少し前にゴブリンの森で炎に関係する現象が起こったり、たくさんのゴブリンの悲鳴が聞こえてくるっていう話がいっぱいあったんだけど?」
「ほーん、そうか。じゃあな!」
「えー………?」




