第三話 フロンティア・ダイバー10とChaotic Abyss Online
「ようやく着いたな…」
ファミレスからそこまで遠くないはずの碧の家だが、今回はやけに遠く感じたな…直樹め…………
「あの、もう落ち着いたから放してくれないか?」
直樹が何か言っているようだが入るまでは聞かない。だってめんどくさいから。
「よし、着いたな。」
直樹を拘束していた手を放す。
「あぁ肩痛かった。二人とも酷いぞ、ここまで拘束しっぱなしとは」
「仕方ないだろ、人が結構いる道であんなこと叫び出すんだから。で、碧?何をくれるんだ?」
「ふっふーん。これは何でしょう?」
碧は俺たちに1枚の紙を見せつけた。えーっと何々?
「購入明細…?これがどうしたんだ?」
「よく見てみて?君たちならすぐに分かるはずだよ?」
んん?これは……
「Frontier・diver10及びchaotic Abyss Onlineの購入!?嘘だろ!?」
フロンティア・ダイバーとは、[超仮想空間生成管理システム【フロンティア】]によって作られた仮想空間フロンティア(そのままだがな)に入るための装置だ。これがなければ、俺たちはフロンティアに入れない。
そしてフロンティアダイバー10とは、その装置の最新版だ。当然高いし、それ以前に入手困難なのだ。それを…
「買えちまったのか!?しかも4人分!?」
「道理で自信満々だった訳ですか…」
「つまり流石碧さんということだな!」
いや直樹よ、そんな簡単にまとめて良い事じゃ無いぞ……?これは本気で凄い。1日に数十台ほどしか生産されず、それが店に行くのかすら分からないのだ。それを4台も購入出来るとは…。
「これは凄いな……。流石だ」
ニコニコしている幼なじみを素直に誉めておく。
「で、これを見せてどうするんだ?」
「分からない?それを皆に1台と1本ずつあげるって事だよ」
………は?
「いや駄目だろ!?カオティックアビスオンラインはまだともかく!」
カオティックアビスオンラインとは、最近βテストが終わり、限定オープンで明日発売されるはずの最新ゲームだ。ついに完成した、五感同調式仮想空間ゲームで、本当に自分が動いてRPGをプレイするゲームだ。
これも入手困難ではあるが、日本国内のみの抽選だからアオイならダイバーほど難しくはない………はず。それでも、そんなものをポンとくれるとは………
「だからさ、皆で一緒にこれやろう?」
碧はそう言った。そうだな、ここまでお膳立てされたならやらないという選択肢はない。
「分かった。皆でやろう!」
「「よしきた!」」
「じゃあ明日のー…いつが良いかな?」
「昼くらいで良いだろ」
「そうだね、そうしよう」
これは……なかなか楽しみになってきたな!!