閑話 ワールド・フロンティア
~地球:某所:ワールドフロンティア本社~
「主任!大変です!!」
「なんだなんだ、どうしたんだ」
25XX年某月某日、どこかにあるワールドフロンティアの本社のオフィスの一室にて、そんな声が響き渡った。とある事情により窓が無いので、彼ら以外はここがどこかは分からない。そして、先ほど叫んだ者はこう続けた。
「特殊称号が!発見されましたぁ!!」
と。
「「「「………はっ?」」」」
その報告を聞いた者は、全員目を点にしていた。なぜか?それは………
「いやいやいやいや、おかしいだろう!?サービス開始したばっかだぞ!?何でもう見つかるんだよ!というか何の特殊称号が発見されたんだ!!」
「【畢らない忿怒、燼滅の如く】です!」
「………はっ?おまっ、それ一番見つからないカテゴリーじゃねぇかぁぁぁ!!なんでだよぉぉ!!」
そのように、ワールドフロンティア社、[Chaotic Abyss Online]開発・運営主任は叫ぶしかなかった。
◇◇◇◇
「獲得者は分かってんのか?有名な奴ならIDでわかんだろ、俺達なら」
ちなみに本来IDから個人を特定するのは普通に犯罪である。
「えぇ、少し見てみますか?」
「これくらいなら許されるだろ。別に何かしようって訳じゃないしチート調査だチート調査」
と、いう最もらしい理由を着けてIDを調査した。すると……。
「あ、あれ……?」
「どうした?まさか存在しないのか?」
「いえ、そうではなくて……またこの人ぉ…?」
「あん?………あー……燼宮 凱人、あのバケモンか」
そのホログラムディスプレイには、少し前にワールドフロンティアが開催したVRオリンピックの、剣を使ったゲーム様式の優勝者が表示されていた。
「こいつ、せっかく出してたスキルとか全部無視して、ほんとに剣の腕だけで優勝しやがったからなぁ……」
昔のオリンピックと違い、今はスキルなども使えるeスポーツのオリンピックの方が人々の人気を集めている。もちろん普通のオリンピックも人気だが。
「だが、なんであの称号を取れたんだ?あれは邪神シリーズを倒した時に完全ランダムで割り振られる、超レア称号だぞ?」
本来、もっと物語が進まないと出現するフィールドにすら行けないモンスターを倒さなくては、獲得する確率すら手に入らないのだが……。
「それが、チュートリアルってランダムでモンスターを召喚するじゃないですか」
「そうだな、クラスが上がれば上がるほど確率が下がって、倒した時に貰える経験値が増える。でも強すぎると勝てないから、リロールも出来る奴な」
「それで『邪神の残滓』を引き当てて、そのまま倒してしまったらしく……」
「はぁぁぁ??」
またもや全員目を剥いた。普通初期装備のlevel1のプレイヤーが勝てる訳無いのだ。だが……。
「………あれならおかしく無いか。ただの剣だけでシステム上最強の技を弾くバケモンだからな」
オリンピックの決勝、そこで凱人は、そのシステムで硬直や溜めが恐ろしく長いかわりに、打てれば勝ちな攻撃を平然と弾き飛ばし、そのまま相手を圧倒してしまったのだ。
「ハァァァ………。あれがいるなら、ほとんどのイベントでもうプレイヤーの負けは無いんじゃねぇか?」
頭痛を堪えるように頭を押さえながらため息を漏らす主任に、周りのエンジニアなどの職員は一様に頷いていた。彼らの苦労は始まったばかりである。
次は凱人の日常回……他の人の日常は気が向くかリクエストがあったら書きます………




